2012.01.18

「沈黙は金なり」―ゴールデングローブ賞に輝くジャン・ドゥジャルダン

ジャン・ドゥジャルダンと聞いても誰?という日本人は多いと思うので、ちょっと説明を加えると、フランスでは最近メキメキと頭角を現している人気の喜劇役者。といってもシリアスな役もしっかりとこなせる「大物」を予感させる俳優だ。ちょっとショーン・コネリーやジョルジュ・クルーニー、クラーク・ゲーブル似の二枚目で「un gars et une fille」というTV向けのショートスケッチで国内でブレークした。(その時に共演した女優と後に結婚)。

そんな彼がハリウッドで行われたゴールデングローブで喜劇男優最優秀賞を手に入れた。『The Artist』というタイトルのこの作品、無声映画で鳴らした人気俳優がトーキー映画の到来とともに自分の居場所がなくなり、落ちぶれていく姿をシリアスにかつコミックに演じている。

ゴールデングローブの舞台上で彼は「サンキュー、サンキュー」とフランス語訛りの英語で感謝を表しながらも咄嗟に思いついたのだろうか、スピーチは無声。パントマイムで身振り手振りで会場を沸かせた。自分・自分と我先にアピールする欧米人のショービジネス界、巧みな言葉の氾濫に時としてめまいを起こしそうな世界に於いて、そんな彼の「無声」のスピーチは一瞬、日常の喧騒から逃れた一こまを切り取ったかのように鮮やかに際立っていた。

「Le silence est OR」(沈黙は金なり)という言葉が仏語にもあるらしいけれど、ホント、こういう場所でこそ「沈黙」の重みを感じたのだった。

 

写真  ゴールデングローブのトロフィーを手にするジャン・ドゥジャルダン。 『The Artist』の映画の白黒ポスター。  (Le Figaro)

vin et culture (2012.01.18)  |  未分類  | 

2012.01.14

サーヴィスの極意とは?

リオンから20キロ南下したところにヴィエンヌという町がある。特別どうといった町ではないのだが美食家たちにとっては”わざわざ訪れる価値のある場所”として有名だ。フレンチガストロノミーの父とも呼ばれ、はじめて3つ星を獲得したフェルナン・ポワンの名店「ラ・ピラミッド」がある。現在はパトリック・アンリルーというシェフが継承している。そんな彼の店を訪れてみた。

2009年に改築したレストラン&ホテルは一歩中に足を踏み入れるとそこは別世界。黄色を所々アクセントにしたメインダイニングはゆったりと心地よい。夜が更けてくると次第にトーンを落としていくライティング、夏場は冷房が直接客の肩にあたらないようにとカーブを描く天井内にクーラーは設置されている。ポワン亡きあと、1988年に後継者としてこの店を継いだシェフのパトリックはジョルジュ・ブランの教え子としても知られ、そのすらっとした体型は料理界の貴公子といった風情だ。そんな彼が興味深い分析をしてくれた。

ミシェル・トロワグロや三國清三シェフたちと「人間の記憶」というものについて考察したことがある。例えばレストランに行った時、客はどういうことに感動するのか? 1)料理 2)その場所の居心地 3)サービスなどの雰囲気 であると我々料理人は分析した。しかし一般人からなる大勢のモニターによれば 1)雰囲気 2)場所 3)料理 という意外な結果に終わった。 「料理が最後にくることは料理人としては何とも淋しい!」と苦笑しながらも、しかし人間の感動する記憶とは時として予想外だと語ってくれた。

かつてジェエル・ロブションがジャマンを閉店し、アトリエ・ド・ロブションを作る直前にインタビューした事があるが、その時に彼はこう言った。 「”コンヴィヴィアリテ”(=共歓)こそこれからのキーワード。料理とは適度に美味しくて、サービスも押しつけがましくなく、そして何よりも仲間とワイワイガヤガヤ、カジュアルに気軽に楽しめる店こそが時代が求めているものだ。」 

3つ星を極めるために全神経を集中させていた彼の厨房内、極度の緊張と病的なまでの完璧度を競ってきた料理界の巨匠、そんなロブションがすでに悟っていたように、時代は確実に変わりつつあるのかもしれない。

  

写真  熱くレストラン理論をかたるオ―ナン―シェフのパトリック・アンリルー。黄色をアクセントにしたテーブルセッティング、パトリックの創作料理。

vin et culture (2012.01.14)  |  未分類  | 

2012.01.01

サルコジ大統領の年末挨拶

恒例の仏大統領の年末挨拶が今年も12月31日の大晦日の20時に行われた。今年は大統領の任期最後の年にあたるサルコジ氏のメッセージ、最初から最後まで不況にどう打ち勝っていくかというトーン一色だ。 「来年からも失業者は増えていく。しかし彼らに失業手当を支払うのではなく、社会復帰のための職業訓練を行っていけるような仕組みづくりが必要である。」 「社会保障を支えていくためにはその財源である経済活動の活性化が不可欠である。景気回復が最大の焦点である。」

ここ数年前から生活保護(RMI)を廃止して、その代わりに連帯活動手当(RSA)という自立のための支援に移行しているフランス。また失業者をひとりでも減らすために企業研修制度を積極的に進めてもいる。しかし、こういった制度を作ることよりも失業者を生み出さないことが何よりも優先されなければならない。それには景気回復しかない。サルコジ大統領のメッセージにもうなずける。

かつてドゴール時代、64年の彼の演説がTVのVTRに映し出されたが”栄光の30年”と呼ばれた戦後復興期の最盛期。「世の中は建設ラッシュ。この好景気に沸くフランスの明日に向かって国民よ、もっと働こうじゃないか!」 そんなメッセージが今となってはなんだか遠い遥かなものに感じる。

とにかく来年が良い年でありますように!そして一刻も早く、被災地の復興を願うばかりである。

          写真   エリゼ宮からTVを通じて国民に向かって挨拶するサルコジ大統領の恒例の年末行事

vin et culture (2012.01.01)  |  未分類  | 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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