2014.07.28
最後の晩は「SPIS」という18席あまりの小さな店に行った。これぞ、まさしく” 今のノルディック・キュイジーヌ! ” と思わせてくれる店である。正直いって何を食べているのかよく分からない! すべての食材を一度デフォルメして食物の持つ従来の姿とは似て非なるものへと変化させているのはとても興味深い。そして味も日本人好みのとてもデリケートで繊細なもの、量に関してもしかりである。以前、パリの某有名シェフが日本のやはり一流料理人とコラボした時のプレスランチに行ったときのこと、臨席していたパリの一流ジャーナリストが「何を食べているのか全く分からないので美味しいのか美味しくないのかコメントできない・・・」と言っていたのを思い出した。まさに今の私もまったく同じ境地、コメントのしようがない。しかし厨房ではシェフのジャコさんをはじめ、ふたりの若い料理人が集中して料理に取り組み、そしてメートルドテル&ソムリエを兼任するオーナーのジャニさんは心から誠意のこもったサービスをしてくれる。改めてこの国の人たちがとても勤勉であり、また努力家であることに脱帽する。そしてデザインの国フィンランドを象徴するかのような器の色・柄・形と感性が統一されていることも評価してあげたい。パンも自家製パンをひとつひとつ丁寧に頃合いをみながら真心こめてにサービスしてくれる。アペリティフにはフランス産ガイヤックの亜硫酸無添加の発泡酒を変形グラスでグイッといただく豪快さ! /フェンネルの入ったライ麦のチュイルはちょっと硬いお煎餅のよう/じゃが芋・人参・ポロねぎ・根セロリ―を木製皿に盛った前菜/ヤギのミルクとおぼしき(?)スープ、フィンランド産シリアルを混ぜ合わせた一口ポタージュ/塩バターに更に粗塩をのせて/自家製のそば粉のパン/季節野菜のクーリソースを使ったサラダ/胡瓜のピクルスと玉ねぎのピクルス、ピーナッツ、保存食を使ったベーシックスタイル/別バージョンの自家製パン/ほぼ生に近い帆立貝と甲殻類で出汁をとっエマージョンソース/口直しのインゲン豆のソルベ/一皿目のデザートはホームメイドケーキに羊のフレッシュミルクのクリーム/リュバーブのケーキにベリー系のアイスクリームを添えて/コーヒーにはミニヤルディーズが付いてくるが”レゴ”のブロックを皿に見立てて、その上に盛っているプレゼンが面白い
こうした街場の小さなレストラン、きらりと光る個性を持った料理人たちが切磋琢磨しながら、そして住人達に愛されながら存続していく町、それがヘルシンキの底力のような気がする。
SPIS Kasarmikatu26 00130 HELSINKI FINLAND / tel: +358 45 305 1211 www.spis.fi