2013.06.13
朝から夜まで厨房内は濃密なやりとりで張りつめている。でもこんなオチャメな一面も。髙木さんもフレデリックもとっても楽しそう!!
料理人にとって良い食材に出会えることは一生の友人に巡り合えたようなもの。今回もたくさんの生産者たちがふたりを応援してくれた。心からありがとう。
日本とフランス、和と洋、でも心はひとつ。おいしいものを追及する気持ちに国境はない。厨房のなかは日本の物やフランスの食材が混在している。そう何の不思議もなくごくごく自然に。
こうして一週間、いろんなことがあった。二人三脚で創作したディナーはご覧のとおり。ふたりの思いがぎっしり詰まったメニューにふたりはとても満足している。特にフレデリックが神戸の高木さんの店に行ったときに食べた「白みそ仕立てのオマールエビ」と「キャビアとかぶら」についてはフランスの高級食材が日本食材とこれほどまでにぴたりとマッチすることに驚きを隠すことができないほど狂喜していた。だから今回のコラボが決まったときにフレデリックが唯一、髙木さんにお願いしたのは白味噌とかぶらを作って欲しいということだった。それ以外はふたりはまったく自由な発想でお互いがやりたいことをやり、作りたいものを自由に作りあった。それが結果的に山下さんのカブが使えることになったのは何ともラッキーなことだった!「白味噌も神戸で食べた時にはこってりしていたのにどうして今回パリではさらっとしているの?」「神戸では3種類の味噌を混ぜ合わせたけど、パリでは一種類しか持ってこなかった。だから出汁で伸ばすと余計に薄く感じてしまったのかもしれない。」「こってり感を出すためにオリーヴオイルを垂らしていたのは新鮮だ。出汁がなければフュメ・ド・ポワッソンでも代用できるよ。」・・・こうした会話が延々と続いていく。ふたりはさらなる新しいステージに飛び出そうとしている。
振り返れば髙木さんは今まで純粋な日本料理の世界で勝負してきた。しかし普段、神戸にいる時もフレンチのシェフやパティシエとコラボしては定期的に勉強会を開いてお互いに切磋琢磨している。また料理人の社会的地位を向上させようと料理を通して社会貢献もしたいと小学校に定期的に通って「出汁の取り方」を子供たちに教えている。またフランスの一流シェフたちが来日すれば積極的に参加して親交を深めている。こうした異文化に興味を持つこと、常に好奇心旺盛にネットワークを張っているところは実は彼の師匠でもある、今年85歳になる佐名木猛氏の影響が大変大きいという。時代の寵児として常に西洋の食材を和食の世界に大胆に取り入れてきた佐名木氏は時代を先取りする目をもっていた。また独特の目利きとして器の世界でも異色を放っている。そんな師匠の影響を知らず知らずのうちに体得していった髙木さんもまた器には一家言をもっている。今回は漆のお弁当箱をパリジャンたちに披露してくれたが、来てくださったお客様の中には” 買いたい! ” といってくださった方もいたほど。古き良きものを大切に磨きながら使っている『京料理たか木』のエスプリがパリジャンからも何の違和感もなく受け入れられたことを物語っている。
一方フレデリックは過去2回の来日で大の親日家になってしまったほど日本との出会いは運命的なものだと感じている。仕事を通じて素晴らしい料理人たちに出会えたこともその理由のひとつだが、しかし日本人の持つ繊細さや異文化を積極的に吸収しようとする好奇心に刺激を受けたようだ。だから今回の料理コラボを提案したときも何の抵抗もなくすんなりと受け入れてくれた。その柔軟さは髙木さんと共通している。一見マッチョな風貌だが繊細な”かわいい”ものが大好き。ピンク色の花が美しい日本の穂紫蘇や今回の青紫色のアジサイをピンセットを使って皿に盛りつけて料理を愛でる日本人の豊かな感性に大いに刺激を受けた様子だ。では今回の料理のメニューを最後に紹介しよう。
先付 ゴマ豆腐 アスパラクリーム フランス産キャビア添え
前菜 手長海老とトマトの出汁ゼリー和え 紫陽花見立 蛙胡瓜
温前菜 山下農園のかぶらトリュフ射込み蒸し かぶとトリュフのソース 夏トリュフ添え
炊合 オマールとモリーユの白味噌仕立 ほじそ
魚 まと鯛バター焼き 四川胡椒 人参金柑風味添え
菓子 抹茶づくしと野苺
デザート 飴の中に桃アイスと柚子クリーム 梅と桃ポワレ添え
『京料理 たか木』 〒659-0092 兵庫県芦屋市大原町12−8 電話:0797-34-8128
『Restaurant Frederic SIMONIN』 25, rue Bayen 75017 Paris 電話+33-1-45-74-74-74