2010.06.28

ヴェルサイユ宮殿の夕べ

ヨーロッパの夏は長い。今日のパリの日没は21時57分。といっても、まだうっすらと残光が夜空にはえるその光景は息を呑むほどに美しい。ユネスコの文化遺産にも登録されているヴェルサイユ宮殿では、毎年恒例の夏の野外ライトアップがはじまった。

ヴェルサイユ宮殿といえば「太陽王」のあだ名で知られるルイ14世の居城、その華麗なる宮殿の建物もさることながら、敷地内に広がる庭園の美しさは地上の楽園だ。大運河や泉水、噴水は、もうそれだけで充分に芸術作品。その間を縫うようにして散策すると、所々にはボスケと呼ばれる樹木庭園がまるで秘密の隠れ家のように散らばっている。

絶対王政時代にはすべての権力が王に集中していた。ルイ14世は自らもダンサーだったことは有名だが、何よりも祭りやスペクタクルをこよなく愛する粋な王様だった。そんなルイ14世の栄華な時代を体験してもらおうと、ヴェルサイユ宮殿では当時の姿を再現しながら噴水のライトアップや花火、ネプチューンの泉水での大スペクタクルなど、毎年夏に限定して一般公開している。家族連れやカップル、大人も子どももみんないっしょに楽しめる夏の夕べ。短いヨーロッパの夏を彩るにふさわしいイベントだ。

   (写真  ライトアップされたヴェルサイユ宮殿の庭の泉水と噴水。夏の風物詩だ。)

vin et culture (2010.06.28)  |  未分類  | 

2010.06.27

サムライブルー・バンザイ!

      (写真  FIFA   日本対デンマーク選 3:1、ゴールに沸く )

豪快なシュート、またしてもやってくれました! 我が日本代表「サムライ・ブルー」。デンマーク選の日本チームの堂々とした戦いぶりに鼻高々なのは私だけじゃないはず。まずは選手のみんな、おめでとう! 

街ですれ違う見ず知らずのフランス人からも私が日本人だと見るや否や、「ブラヴォー、やったね! 」と祝福してくれる。フランスチームが散々だったのと言語道断な非スポーツ精神に怒り心頭しているフランス国民のはけ口が、こうしてフェアに一生懸命戦っている日本チームに向けられているのはとても健全なことだと思う。

それにしても今回の日本チームといい、また韓国チームといい、こちらではとても高く評価されている。特に日本チームは監督と選手が一体になってお互いの意思疎通が行き届いていることに触れている。スター選手がいなくたって、こうしてチームが一丸になれば勝利をつかめることをわざわざ強調しているのはフランス・ブルーに対する痛烈な批判だ。当然のことだ。 また本田選手のシュートにはメディアがこぞって絶賛。彼はルックスがいいだけじゃなくて、こうした決めるときにはバシッ! と決めてくれる度胸、他の選手とのチームワークなど、プレーヤーとしてのカリスマ性を充分に備えている選手と手放しの褒めようだ。新しい時代を切り開いてくれる新しいヒーローの登場に、これからの日本のサッカーが本当に楽しみだ。

今回のワールドカップではイタリアやフランスといったサッカーの老舗大国が一次リーグで敗退という予想外の結果となった。そこには「勝者のおごり」があったのではないか? フランスのメディアが伝えるところによれば、他の国のチームでも選手同士や選手と監督がいまひとつ、うまくコミュニケーションが機能しておらず「サッカーとはチームプレーなのか、それとも個人競技なのか、はなはだ疑問を呈している」といった指摘が多いらしい。だからこそ余計に今回の日本チームの勝利は、サッカーが「チームワーク」を必要とするスポーツであるという基本に忠実に戻った事を全世界に知らしめる素晴らしい機会だったのではないかと思う。

vin et culture (2010.06.27)  |  未分類  | 

2010.06.21

仏サッカーチーム、スト突入 !

今のフランスが抱えているすべての問題―移民・教育水準の低下・国に依存する国民の体質・利己主義―それがサッカーという形で一気に噴き出した感じだ! しかもワールドカップという世界の祭典の真っ最中で。

それにしても・・・・である。

事の起こりはメキシコ選で完敗した辺りから雰囲気がにわかに悪化したことが原因だ。メデイアが一斉攻撃したのは前回も書いた通りだが、試合終了後、更衣室内で選手たちが不満をぶちまけていた時に、ひとりの選手が監督を侮辱する発言をしたことが外部にいるはずのジャーナリストの耳に入りスクープへ。それに激怒した仏サッカー協会の会長がその選手を即刻クビ。まだ、来週、南ア・チームとの試合がひとつ残っているにも拘らず、である。

監督が事態を収拾しようとするも、すでに監督と選手の信頼関係は完全に破綻している。そこへサッカー協会の制裁に不満をもらした選手側はストに突入。昨日の練習をボイコットした。これが分別ある大人の対応と言えるだろうか?

それはサッカーというものが商業化され、選手がスターシステムにのし上がり、巨大な富をもたらしてくれるスロットマシーン化している現実が浮かびあがる。スターになった選手たちは、もはやサッカーが純粋に人々に与える感動とかスポーツ精神といったものとは程遠い商品化された現実を、自らが公表してしまったようなものだ。しかも、彼らに少しでも「知的な」判断力があれば最悪な事態は避けられたはずである。これではスポイルされたバカ集団以外のなにものでもない!

それにしても子どもたちに夢を与えてくれるサッカー、人種を超えた連帯感、スポーツのもつ健全さ・・・それはいったいどこに行ってしまったのだろう。そんな夢を全て否定するような今回の成り行きには腹立たしさを超えて呆れるばかりである。1998年にフランスチームを勝利に導いた選手の一人、エマニュエル・プチがTVでこう言っていた。「サッカー精神のヘリテージュ(共有財産)はもう完全に失われてしまった! 」と。

      (写真 Le Parisien   ストに突入したフランスチーム)

                   

vin et culture (2010.06.21)  |  未分類  | 

2010.06.19

やっぱり!と言おうか、このフランスチーム

「もう話しにならない!」「ペテン師」「ぶざま」「アウト・オフ・アフリカ」・・・・。金曜日の朝刊の見出しは一斉にフランスのサカーチームのこき下ろしで埋まった! 今までのたまっていた鬱憤をこれ見よがしに晴らそうとしているのはみえみえ。もう監督やチームに対する侮辱の応酬と化している。でも、そう書かれても仕方ないのは事実だ。木曜日の夜行なわれたフランス対メキシコ選は0:2。その前に行なわれた一回選でもフランス対ウルグアイは0:0。まだ1点もゴールしていないフランスチームに業を煮やし苛立ちを隠せない。はるばるパリから大金を払って応援に駆けつけたファンのひとりは、「もう、今日の飛行機で帰国する!」と怒りをぶちまけていた。当然、監督のレイモン・ドメニックに対する非難はちょっとやそっとのことでは収まりそうにもない。今から彼がフランスに帰ってくるのをサッカー協会は勿論のこと、関係者はみんな手ぐすね引いて待っている。国民だって怒りのはけ口を彼らに向けるだろう。今からちょっと怖い。

それにしても今回のワールドカップ、すべてが異常だ。まず監督の人間性や資質に対する疑問。試合の直前ギリギリで選手を交代させてみたり、戦術をアレコレ変えたりすることに選手自身がキレテすでにチームとして監督との信頼関係が失われていた。それがメキシコ選ではみえみえ。選手自体にまったく覇気がなかった。それだけじゃない。試合前の合宿しているときにも、選手たちがとてもナーバスになっている時期に、「リベリが未成年の娼婦を買った」とゴシップ誌が取り上げると、別の週刊誌がその娼婦を表紙に載せて「暴露」する始末。それだけじゃない。青少年スポーツ省の政務次官は「フランス・チームの宿泊先ホテルが南アでは一番高級なデラックスホテル。身の丈知らず!」と一蹴。(後日談があって、この政務次官、実は当初は青年会館みたいな所に宿泊する予定だったのだが、この一件で自分も一泊、8万円ぐらいのホテルに変えたらしい!) なんとなく健全なスポーツという雰囲気よりも安っぽいソープオペラを見せられているような感じで、とても不愉快だったのは私だけじゃなかった筈。

「そんなフランスチームを応援しようという気にもならない。フランスなんか負ければいい。フランスといっても選手たちは黒人ばかり。彼らはラ・マルセイエーズ(国歌)を歌おうともしないし、フランスに対する忠誠心なんか、これっぽちもない。そんなチームに誰が期待なんかするものか!」。そんな声があちこちから聞こえてくる。なんかちょっと淋しいワールドカップである。

 

(写真 Le Parisien    メキシコに完敗した直後のフランス・レ・ブルー・チーム)

vin et culture (2010.06.19)  |  未分類  | 

2010.06.11

「日本に不安」が95%

6月11日付け「朝日新聞」の一面に世論調査の結果と題して「日本に不安」95%という文字が大きく書かれていた。内容をつぶさにみると、小泉政権下の『自己責任・小さな政府』が指示されなくなって、『大国化必要なし・大きな政府を望む』という傾向がはっきり表れていることを示している。言いかえれば”国に依存しようという人たちが世代を超えて多いこと”を示しているのだろう。特に『経済的には豊かだが格差が大きい国』よりも『豊かさはさほどでもないが格差の小さい国』を目指している人が73%と前者の17%を圧倒的な勢いで追い抜いている。なるほど! 先日、菅さんが「最少不幸社会」を目指すと言っていたこととなんかリンクする。

それにしても何と日本は小粒な国になってしまったんだろう。かつては経済大国1位を目指してみんなが頑張っていたのに。たとえ一位にはなれなくても目標を高く持つことがモチベーションを上げてくれるきっかけにもなる。それがせめてもの人間としてのプライドじゃないだろうか。昨年の事業仕分け人の蓮舫が、”世界一になる理由は? 2位じゃだめなんですか”という言葉にのけぞってしまった。政府の中にこういうことを堂々と言う人がいるのはやっぱりヤバイ。それが正直な気持ちだ。しかも、その本人が大臣になってしまったから、これからホント、日本はどんな国になっていくんだろう?! 自民党の「いちばん」といって人差し指を立てている谷垣さんのポスターもなんか違和感感じるけど、でもやっぱり気持ちの上では一番を目指すパワーは持っていたいと思う。

でも、それよりももっと気になるのは今の日本の少子高齢化で若者がすっかり老人パワーにおされぎみで元気を失っていることだ。国が年老いていくというのは考え方もパワーも老人化していくことなんだとつくずく感じさせられる。折角、若者がパワー全開して何かを発信しようとしているのに「いまどきの若者は・・・」などと言って、いちいち文句つけたり、老婆心であれこれと注文付ければ、やっぱりやる気を失ってしまうのは当たり前だ。もっと若い人たちにチャンスを与えて冒険させてくれる社会のゆとりが必要だと思うのだが・・・。

フランスでは丁度、今週からバカロレアが一斉にスタートした。これは大学入試のためのセンター試験。日本と違って当地では全国一律で同じ試験が同時にスタートする。初日は恒例の「哲学」で始まる。まさに社会人へのパスポート。先週の金曜日はそんな高校生の最後の授業の日とあって、ご覧の通り、こんなハチャメチャなバカ騒ぎをして学校に行く。でも、そんな彼らも社会人への一歩を進めば、もう後戻りはできない。こんな日が懐かしく思える日がくるんだろう。そして青春の一ページはほんの駆け足で過ぎ去ってしまう。

(写真  リセ・カルノの高校生たち。高校生活に別れを告げる恒例のバカ騒ぎ。今年はポリスが学校のまわりに張り付いていた!)

vin et culture (2010.06.11)  |  未分類  | 

2010.06.07

ジャンポール・ベルモンド似の日本の新首相!

フランスの大衆紙「フィガロ」の土曜版に『東京の男』と題して菅直人、新首相の顔写真がカラーで載った。つい、先週、沖縄の普天間の米軍基地移転先が振り出しに戻ったことを一面記事に報道したばかり。保守系の新聞だから日本に関心をもつのも分かるが、それにしても、こう首相がころころ変わる日本の政治に対する不信感はもう沸騰点に達している。

「福田・安倍・麻生・鳩山」と4人続いた首相は、いずれも筋金入りの政治家を家系にもつサラブレッドファミリー。でも全員が途中で投げ出した!そこに現われたのが菅さん。普通のサラリーマン家庭に育ち、60年代の西洋政治理論をベースにした社会主義思想に傾倒し、この30年間、草の根市民政治を展開しようとしたが失敗を3度も繰り返した。「イラ菅」とあだ名されるほど、すぐキレル。経済音痴ではあるが、でも彼はすぐに学ぶ能力を持っている。今年の1月に財務大臣に任命されて以来、どのスペシャリストに聞いても彼は経済通になったと米国系大手銀行のロビイストは証言している・・・・と、まあこんな感じで紹介されている。

でも親の七光りのお坊ちゃま政治家よりも、国民の痛みを少しは分かってるリーダーが”本気で日本を変えていこうよ!”と立ち上がってくれたことに、ちょっとは期待したいと私は本気で思う。フィガロ紙は「顔の見えない日本の政治家」を揶揄してるのだろうか、「ジャンポール・ベルモンドに似てるって言われてるんですよ!」ってフランスのジャーナリストに愛想を振りまいている菅さんの姿、そんな彼の本音も決して紹介することを忘れないでいた。

     (写真  5月5-6日のウィークエンド版のフィガロ紙に紹介された記事)

vin et culture (2010.06.07)  |  未分類  | 

2010.06.05

1945年もの、ロワールの白ワインに酔う

1945年といえば第二次世界大戦が終焉した年。こんな年にもワインを作っていた人がいただけでも驚くべきことだが、そんなヴィンテージワインを飲む機会に恵まれた私も一生に一度の驚くべき出来事だった!しかも、この年はブドウの出来も最高だったという。まさに夢のような試飲会に酔いしれたひと時だった。

フランスのロワール地方は「ロワールの城巡り」でも有名な観光名所だが、その一角にソムュール・シャンピニーという赤ワインで有名な産地がある。”シャトー・ド・ヴィルヌーヴ”の現在のオーナー、シュヴァリエさんのお父様が当時、ナチのSSには絶対に飲ませたくないと自宅のセラーの壁を土と黴で覆って守ったと言う、まさに命がけのワインだ。そのおかげで残り少ない貴重なボトルを一本開けてくださった。勿論、赤ワインは文字通り素晴らしいモノだったが、「とっておきの一本」と前置きして飲ませてくださったのはなんと白ワインだった。

その透き通った輝きは琥珀色に変わっている、グラスに鼻を近ずけるとほんのりと果実の香りがする。口に含むと適度な糖分とロワール独特の酸味がほどよく溶け合ったそれは、まさに「神の雫」。ワインというよりもネクターといったほうがいい。白ワインといえば若いうちに飲むもの、そんな「常識」がまかり通っているが、それはとんでもない間違いだ。「この場所でとれたブドウをここで発酵させて醸造させ一度も動かさなかったことがこれだけのワインに成長できた理由かも知れません。」 そうシュバリエさんは言う。 

”可愛い子には旅させよ”なんて言うけれど、イヤイヤ、旅なんかさせなくても、ひたすら地元で頑張って世界にたった一つしかない自分だけのものを作ってみる。それが案外、世界に通用するものだということを、このシュバリエさんの一本は証明して見せてくれたような気がする。

(写真  現オーナーのシュバリエさん。1945年のボトルには黴が、琥珀色のワイン)

vin et culture (2010.06.05)  |  未分類  | 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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