2010.04.25

頭の痛いスカーフ問題

イスラム教徒の女性が被る「ニカブ」と呼ばれる目だけを出した黒いベールで車を運転していた若い女性がフランスの警察につかまり22ユーロの罰金を課せられた。理由は体中を覆う衣服が視界を遮り危険だというもの。しかし、その後、ただちに内務大臣が自らの音頭で彼女の夫の身元を調べたところ、イスラム法に従って4人の奥さんを連れて入国。(かの地では一夫多妻制は認められている) そのうちのひとりの妻とは何と12人の子どもをもうけ、フランスの家族手当まで国から支給されていたというからちょっと驚きだ。しかも、それに気がつかずに支給し続けていた役所も縦割り?!かなりいい加減だと思うのだが!フランスの法律では一夫多妻制は認められていない。従って彼はフランスでは法律違反を犯していることになる。しかも12人分の家族手当を申請していたことも刑の対象になる・・・。そんな「事件」が今、フランスのメディアを騒がせている。(内務大臣はスカーフの本質的な問題を一夫多妻という刑法にすりかえようとしている魂胆もプンプン感じるが。)まさに欧州が置かれている複雑な問題を象徴する事件である。

このスカーフ着用については学校や病院などのパブリックスペースでは禁止すべきだが宗教の集会などは認めるべきだとか、一律に禁止すべきだとか意見は分かれる。すでにベルギーでは数日前に一律で禁止する法律が可決されたばかり。フランスでもサルコジ大統領はこの路線に前向きだ。来月5月21日にはこの法案を閣議にかけることがフランスでも決まっている。個人の自由・人権尊重と声高く叫ばれている国だけに、その答えを出すのは容易ではない。しかし、イスラム教徒の移民が日増しに増えている中、過激派である原理主義者がスカーフを装って流入することを欧州ではもっとも恐れている。04~05年にかけてテロが多発した時にもスカーフで身元確認がなかなかとれないといった事態も起きていた。宗教の自由は守られなければならない。しかも各自の言い分だってあるだろう。こういうアイデンティティーの問題はことがことだけにデリケートな問題だ。でも日本も”対岸の火事”なんて悠長なことを言ってられない日がもうじき来ることだけは肝に銘じておいたほうがいいと思う。

        (写真 赤・白・花柄とカラフルなチャドルというスカーフの女性たち)

vin et culture (2010.04.25)  |  未分類  | 

2010.04.21

思いがけないアイスランドの火山噴火

 

「禍福は糾える縄の如し」とは言うけれど、アイスランドの火山が噴火して今日で6日目を迎える。まだ85、000人余りのフランス人が世界中で足止めを食らっているらしい。天罰(天災!)だから仕方ないけど、航空業界の損失は一日約230億円に上るというからただでなくてさえ不況なのに、また更に不況が上乗せされることになるんだろう。

毎日、イライラしてる客の様子や疲れきって飛行場のベンチでバクスイしてる人の姿がTVで映し出されている。その一方で、AFやKLM,BA,Lefthansa など大手の航空会社ではFacebookを一日何度も更新して情報提供に必死だ。中でも、もっとも素早く大活躍してるのはツイッター。「いま火山灰の位置はどこ?」「どこの飛行場が再開されるの?」「パリにいるんだけどマルセイユまで誰かカーシェアしない?」「東京で足止めされてるんだけど、どっか安く泊まれるところを教えて!」・・・そんなやりとりがいま世界中、いや地球の上空でビューンビューン飛び交ってる。空港関係者の話によれば、当初ツイッターは航空機関連の情報交換手段には数えられていなかったという。でも今回の一件で一番役に立っているのがこれ。完全に市民権を得たようだ。

それにしても、この火山灰騒ぎで大変な目には合わされているけれど、思わぬところで人と人は結びつき連帯感をもって行動することに気ずかされた。どんな逆境下でもブツブツ文句ばかり言って何の問題も解決しようとしない人がいるかと思えば、文明の利器をかしこく使って発想を180度転換してどんなに不安定な外的条件でも前向きにポジテイブに前進しようとする人がいる。まさに人間は考える葦である。いろんな人たちがいてバランスが取れてる社会。でもどっちがハッピーかはいわずもがなである。でもこんな緊急事に悠長にこんなことを考えている自分も随分とノー天気だなと思うのである!

                          (写真  飛行機がまったく消えたパリの空)

vin et culture (2010.04.21)  |  未分類  | 

2010.04.09

パリの3ツ星シェフの厨房を訪ねて

取材でお邪魔したエリック・フレションはパリでも屈指のパラスホテル「ル・ブリストル」の料理長だ。通称”サルコジ大統領のカンティーヌ”(社食)とも言われている。(注 エリゼ宮が目の前にあるから!)昨年のギッドルージュ(ミシュランガイド)で3ツ星を射止めた、まさに名実共にナンバーワンのシェフである。

まるで巨大な工場にいるかのような厨房のど真ん中には水族館のようなガラス張りの”箱”がある。ここがエリックの事務所だ。ガラス張りになっているのはいつでもシェフが全体を見渡せるように考慮してのこと。その中に”ターブル・ド・シェフ”と呼ばれる空間がある。シェフが親しい友人や超VIPを特別に招き入れて新しいレシピを披露したり、悩みなんかを打ち明けてくれる超コンフィデンシャルな場所だ。今回の取材はたまたまサーヴィス風景を写真におさめたかったこともあり丁度、本番真っ最中のライブ取材!ちょっとVIP気分。サンドイッチを頬張ってまずは腹ごしらえするシェフ、そしていざ出陣!次から次へと入ってくる注文を読み上げ、それが客へと運び出されるところまでをきちっとチェック。その度に20人近いスタッフたちは「ウイ、シェフ」と気合を入れる。その様はまるで戦場そのもの。最後の客のサーヴィスが終わるとホッとした表情で戻ってきた彼、普段はあまり怒鳴ったり怒ったりしない。しかし、本当に頭にきたときはスタッフ全員が凍りつくように爆発するのだとニコニコしながら私に教えてくれた!!

彼を取り囲むように右腕のふたりを紹介しよう。メガネをかけているのがローラン、彼はシェフパテイシエ(デザートを創る人)、そしてセカンドのフランクは自分の奥さんと一緒にいるよりエリックといる時間の方が長いと言ってたからまさに女房役。この三人がパリの”3ツ星”を創り出す頭脳集団だ。ただ、ここまでたどり着ける料理人がパリは広しといえども果たして何人いるのだろうか?「料理人は素晴らしい職業です。まさに、ひとりひとりの役割があって、それがつながりあってチーム一丸となって前進していく。」 15歳で料理人になろうと決心した人の何と重みのある言葉だろうか。

vin et culture (2010.04.09)  |  未分類  | 

2010.04.05

ああ日本人よ、もっと自信をもって!

フィギュアスケート世界選手権がイタリアのトリノで行なわれた。高橋大輔選手と浅田真央選手がダブル優勝したニュースは、きっと日本全国を稲妻のごとく駆け巡ったに違いない。なかでも高橋選手は257,70点と今季世界最高点を記録したから文句なしの金メダルだ。

それにしても日本の選手たちは、こちらイタリアやフランスではとても評判がいい。キビキビした動作や礼儀の正しさ、そしてなんと言っても基本技術をしっかりと身につけた練熟した演技はもう圧巻だ。長野オリンピックでブレークした仏のフィリップ・カンデローロは現在はスポーツキャスターとして活躍しているが、浅田選手とキム・ヨナ選手が対決する時には「僕はMAOがまだ15歳の頃から知っている。彼女の才能・努力にはほんとうに脱帽。だからMAOを絶対に応援したい!」と、あたりはばからずに公言していた。一方、別の仏の女性キャスターは高橋選手の大のお気に入り。金メダルを取ったときの彼女の興奮ぶりといったら、それはもう赤面してしまいそう。彼女は高橋選手がどんなに転んでもミスをおかしても絶対に批評などしない。だから他のキャスターたちも彼女の前では高橋選手の批判など絶対にできない雰囲気なのだ。

公平性を求められるスポーツの世界においてキャスターたちがこれほどまでに個人の好みを電波という公共性あるメディアで発言してもいいもんだろうか?ちょっと首をかしげてしまう。しかしスケーターとしての最高の演技で華麗に演じる日本人選手たちの姿は例えファンでなくとも一度、間近に見れば、すっかり虜になってしまう。これぞフィギュアスケートのマジック、いや日本人特有のしなやかさと柔軟さのパフォーマンス、フィギュアというスポーツの醍醐味だ。そんな日本人選手たちの堂々とした姿を目のあたりにして、ああ日本人よ、もっと胸を張って世界に誇ろうじゃないか!もっと自信をもっていいんじゃないか!と、思わず叫んでしまったトリノでの出来事だった。

vin et culture (2010.04.05)  |  未分類  | 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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