2011.01.25

プッサン・ファミリーの日本横断記 その1.

世界には実にいろんな人がいる。私の友人のプッサン・ファミリーも間違いなく「そんな人」のひとりである。1994年、若きアレキサンドル・プッサンは友人とふたりで自転車に乗って25000km、33ヶ国を一年かけて走破した。1997年には今度はヒマラヤ山脈に挑戦。帰国後、1999年にはソニアと結婚。そして2001年1月1日、夫婦はいよいよアフリカ大陸へと出発した。人類が初めて誕生したとされるアフリカ大陸東部、南北を走るグレート・リフト・ヴァレーに沿って14000km、3年間、それは徒歩での旅だった。そして、今秋、7歳と4歳のふたりの子供を連れて一家4人は日本へと出発しようとしている。

「日本語は実に面白い。日常の所作・希望・感動といったものを図式化して言葉にする。まさにクリエーティブな国民性だということがそこからも伺える。」 毎月、日本語の先生について、いま日本語を特訓している。しかし、ふたりはまったく意に介する様子もない。アフリカに行った当初、片言もしゃべれなかったふたりだったが、それでも毎日、現地の人たちと触れ合うことによって充分に意志の疎通ができたからだ。それもまた旅の目的なのかもしれない。そんなアレキサンドルとソニアが今回、日本の旅で一番関心を持っているのは「人間国宝」と呼ばれるひとたちに出会うことだ。書道家・陶芸家・彫刻家・・・・と、その夢は尽きることがない。

南北3000km、子供たちが歩き疲れた時のことを想定して人力車を伴った旅にしたいと言う。果たしてプッサン・ファミリーの冒険、どんな旅が待っているのだろうか?

            写真   パリ郊外にあるプッサン・ファミリーの自宅で

vin et culture (2011.01.25)  |  未分類  | 

2011.01.21

国家建造物を維持していくことの大変さ

国じゅうが美術館のようなフランスでは、いわゆる国家遺産的建造物を維持していくことは並大抵のことではない。地震大国の名のもとに古い建造物をどんどん破壊して近代的なビルに建て替える我が国ニッポン、結局はそのほうが安上がりだし景気刺激策にもなるのかもしれない。でも、だからと言って歌舞伎座を壊したり、築地を移転させたり、国会の真後ろに高層ビルを建てたり・・・と、文化も歴史もなんのその。効率化のためなら右も左もおかまいなしにブルドーザーがガンガン音を立てて破壊していく風潮に私はだまっていられない。

しかし、このところフランスでも財政難を理由に国家建造物を「売り」に出している。フランス革命(1789年!) で国王や貴族階級が手放した多くのシャト―や土地・家財道具といったものはいわゆる文化財として今でも国が管理しているという背景がある。それに加えて1905年以降、数多ある教会までもが国の管理下に入った。こうした国家的建造物の経済的価値は金額にして12兆ユーロ、国民一人当たりの国内総生産の7,4年分に相当するという。しかし08年よりその価値は減少気味。しかも建物は維持していくにはお金がかかる。その費用はいったいだれが負担するのか? 当然 国であり、我々国民の税金である。モンサンミッシェルやルーヴル美術館・ヴェルサイユ宮殿など観光客が途切れることなく訪れる採算のとれたモニュメントは全国でも6ヶ所しかないというから、やはり懐事情はどこもお寒いのだろう。

という訳でその負担を少しでも軽減する為に、とりあえず文化省が管轄する建物を売りにだそうと国も躍起になっている。ただ「売る」と言ってもフランスでは土地は国の所有物だから、その上に建っている建造物の権利を30年とか99年といった単位で買うことにしかすぎない。さすがにフランスの法律はがっちりと国民のために守られている。国家モニュメントを一部「賃貸」して民間に管理してもらおう、というのが本当のところだ。 やっと菅政権でも外国人の土地取得規制が検討されはじめたというから、日本人も自国の資産価値の大切さに気づき始めたのだろう。

それにしても田中角栄時代に「日本列島改造論」と称して国民に土地を持つことの大切さ・価値観を教えてくれたのに、どうして、こうも外国人には日本の大切な国土を切り売りしちゃうのだろうか?  フランス人と話していると「これは先祖から貰った箪笥」とか言っても、すぐに18世紀~19世紀のものだったりするは当たり前のこと!! そのあたりの時間軸の長さにはホントびっくりさせられるが 、日本でももう少し先祖代々の土地とか歴史観のあるモノを文化的価値のあるものとして大切にする心をはぐくんで欲しいと思う。心の整理とかいって捨てることだけが尊い文化だと私はぜったいに思わない・・・・

         写真  毎年800万人の人が訪れるヴェルサイユ宮殿、夕陽に反射して絢爛豪華に輝く「鏡の間」。

vin et culture (2011.01.21)  |  未分類  | 

2011.01.18

チュニジア崩壊

「1月14日は勝利の日だ!」「我々はアラブ諸国で民主主義を勝ち取った最初の国だ」。ラジオから流れてくるチュニジア市民たちの肉声、喜びと喧騒が入り混じったその声には自分たちの国を命がけで守ろうとする熱気が伝わって来る。昨年の12月より国内の混乱はすでにはじまっていた。そのきっかけとなったのは、町中で野菜を売ろうとしたひとりの若者が警察に阻止されたことに抗議して焼身自殺を図った。それが引き金となって全国規模で暴動が広まっていった。

学校を卒業しても就職できない若者たち。そんな失業者たちの行き場のない怒りが沸騰点に達した。そんな混乱を先導し、報道しつづけたのは彼ら自身だった。ツイッターやフェースブックで次々に流される映像やライブ情報。そんなひとりひとりの若者たちのパワーが、強権的政権を崩壊させるだけのパワーに増殖され、24年間続いたベンアリ大統領を追放にまでおいやった。こんなにまでも政権崩壊・革命というものが、あっという間に行われてしまったことに驚きを隠せない。それはまぎれもなく新しいネット時代の到来ともいえる。

モロッコ・アルジェリア・チュニジア、北アフリカのマグレブ諸国の中ではもっともヨーロピアンナイズされた観光国というイメージのチュニジア。もうかれこれ20年ぐらい前に訪れたカルタゴの遺跡やジェルバ島のリゾート地にはたくさんのヨーロッパ人がバカンスに訪れていたのを思い出す。真っ青な地中海を見下ろしながら白亜のしゃれた建物が夏の太陽にキラキラと輝いている。フレンドリーなチュニジアの人たち。そんなイメージを持っていただけにショックを隠すことはできない。しかし、そんな笑顔の下に隠されていた彼らの苦悩、政府に対する不満といったものが爆発して次々と事実が明らかにされていく。このチュニジア革命が中東諸国のこれからを左右していくのは、もう時間の問題だ。まさに歴史の1ページが今また塗り替えられようとしている。

       写真    身内優遇政策だったかつてのベンアリ大統領一家の姿   Le Parisien

vin et culture (2011.01.18)  |  未分類  | 

2011.01.13

ケルト文化が色濃く残るブルターニュ

何とも形容しがたいケルト文化の根源ともいえる教会に出会った!!  その異様なまでの美しさには、まさにこの地方が辿ってきた民族の闘いの歴史が伝わってくる。フランスの北西部、ブルターニュ地方はその三方を大西洋に囲まれた風光明媚な海岸線で知られている。「最果ての地」を意味するフィニステール県は、半島の西側の突端に位置する荒涼とした辺境の地で、そこにはケルト文化が今でも色濃く残っている。

ケルト文化とは紀元前6世紀にブルターニュ半島にケルト人が定住したのがはじまりで、その後、ローマ人の支配でガロ・ローマと呼ばれる期間が500年あまり続いた。フランスというよりも、むしろアイルランドやウェ―ルズ・スコットランドの影響を受けた独特の文化圏で、今でも町の至る所にはブルトン語で書かれた標識が目を引く。

中でもサンテゴネック・ギミリオ・ランポールギミリオという内陸の3つの隣り合わせの町には16-17世紀に建てられた教会が、その複雑怪奇な石の彫刻で圧倒する。『聖堂囲い地』と呼ばれるように教会や納骨堂・チャペルのまわりにはグレーの花崗岩に彫刻されたキリスト受難の群像やキリスト磔刑像が空に向かって高々と聳えている。それを取り囲むようにしてア―チ型の塀が残っているのが特徴だ。

フィニステール県といえばもうひとつ、ケルト民族古来のポップ・フォークアーチストのセシル・コルベルの故郷としても知られている。彼女はスタジオ・ジブリが制作した最新作、『仮暮らしのアリエッティ』の主題歌をハープの音色とともに歌っている。そんな彼女の透き通った歌声を聴きながらケルト文化に浸ってみる。何とも言えない贅沢である。

    

            写真  ギミリオの教会とサンテゴネックの十字架に張りつけられたキリストの受難群像

vin et culture (2011.01.13)  |  未分類  | 

2011.01.02

サルコジ大統領、恒例の年末のあいさつ

 

日本では天皇陛下が新年の挨拶や天皇誕生日など国民に向かって直接メッセージを伝えることはあっても、首相みずからは所信表明など国会で演説する以外は我々国民には直接話しかけたりしない。だから天皇陛下のほうが首相より身近でフレンドリーな好印象を持つのは当然かもしれない。一方フランスでは毎年、大晦日の晩には大統領みずからがTVを通じて約10分間、エリゼ宮から直接、国民に語りかける。支持率26%と、この3年間で最悪のスコアにゆれるサルコジ大統領、それでも強気の姿勢を見せなければならないのはリーダーとしての使命だろう。

今年は何と言っても景気の悪化からくる失業者数の増加。つづいてユーロの混乱、ギリシアやアイスランドの経済破綻による混乱はEUの結束なくして強いユーロは維持できないとフランスのリーダー的立場を強調してみせる。また年金改革も国民のほとんどがゼネストするなかで、その支給年齢を遅らせるなど結局は強行突破した。また2014年の大統領選を意識してか、この3年間大胆に行った様々な改革も結果が見えはじめている。だから、この路線を2014年以降も続けさせて欲しい・・・そんな暗黙のメッセージが伝わって来る。

それにしても世界中が不況の嵐にみまわれている今日、日本だけが元気ないとか欧米だけが遅れをとっているとか中国だけが断トツに景気がいい、などとひと括りではいかなくなっているのが今の状況だ。だから、という訳でもないが「気持ちの持ち方次第で気分は変われること」を私は強調したい。リレー式に流れる世界各国からのカウントダウンの映像、インドでは雪が積もったらしい、オランダでは氷点下の中、水温4℃の恒例の北海の初泳ぎ、ロンドンではビックベンを背景に盛大な花火を打ちあげて次期オリンピックを開催する強いイギリスをアピールする。そして最後には中国の荘厳な除夜の鐘の音で神聖な気分に浸る。人間、どんな逆境に陥っても、そんなほんのちょっとした話題やユーモア・笑いで救われる。その一瞬の「あれっ、という感覚」こそが人間に与えられた最強の武器ではないだろうか。2011年、果たして今年はどんな年になるのだろうか?

         写真   エリゼ宮から中継されたサルコジ大統領のメッセージを伝える我が家のTV映像

vin et culture (2011.01.02)  |  未分類  | 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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