2010.06.11

「日本に不安」が95%

6月11日付け「朝日新聞」の一面に世論調査の結果と題して「日本に不安」95%という文字が大きく書かれていた。内容をつぶさにみると、小泉政権下の『自己責任・小さな政府』が指示されなくなって、『大国化必要なし・大きな政府を望む』という傾向がはっきり表れていることを示している。言いかえれば”国に依存しようという人たちが世代を超えて多いこと”を示しているのだろう。特に『経済的には豊かだが格差が大きい国』よりも『豊かさはさほどでもないが格差の小さい国』を目指している人が73%と前者の17%を圧倒的な勢いで追い抜いている。なるほど! 先日、菅さんが「最少不幸社会」を目指すと言っていたこととなんかリンクする。

それにしても何と日本は小粒な国になってしまったんだろう。かつては経済大国1位を目指してみんなが頑張っていたのに。たとえ一位にはなれなくても目標を高く持つことがモチベーションを上げてくれるきっかけにもなる。それがせめてもの人間としてのプライドじゃないだろうか。昨年の事業仕分け人の蓮舫が、”世界一になる理由は? 2位じゃだめなんですか”という言葉にのけぞってしまった。政府の中にこういうことを堂々と言う人がいるのはやっぱりヤバイ。それが正直な気持ちだ。しかも、その本人が大臣になってしまったから、これからホント、日本はどんな国になっていくんだろう?! 自民党の「いちばん」といって人差し指を立てている谷垣さんのポスターもなんか違和感感じるけど、でもやっぱり気持ちの上では一番を目指すパワーは持っていたいと思う。

でも、それよりももっと気になるのは今の日本の少子高齢化で若者がすっかり老人パワーにおされぎみで元気を失っていることだ。国が年老いていくというのは考え方もパワーも老人化していくことなんだとつくずく感じさせられる。折角、若者がパワー全開して何かを発信しようとしているのに「いまどきの若者は・・・」などと言って、いちいち文句つけたり、老婆心であれこれと注文付ければ、やっぱりやる気を失ってしまうのは当たり前だ。もっと若い人たちにチャンスを与えて冒険させてくれる社会のゆとりが必要だと思うのだが・・・。

フランスでは丁度、今週からバカロレアが一斉にスタートした。これは大学入試のためのセンター試験。日本と違って当地では全国一律で同じ試験が同時にスタートする。初日は恒例の「哲学」で始まる。まさに社会人へのパスポート。先週の金曜日はそんな高校生の最後の授業の日とあって、ご覧の通り、こんなハチャメチャなバカ騒ぎをして学校に行く。でも、そんな彼らも社会人への一歩を進めば、もう後戻りはできない。こんな日が懐かしく思える日がくるんだろう。そして青春の一ページはほんの駆け足で過ぎ去ってしまう。

(写真  リセ・カルノの高校生たち。高校生活に別れを告げる恒例のバカ騒ぎ。今年はポリスが学校のまわりに張り付いていた!)

vin et culture (2010.06.11)  |  未分類  | 

2010.06.07

ジャンポール・ベルモンド似の日本の新首相!

フランスの大衆紙「フィガロ」の土曜版に『東京の男』と題して菅直人、新首相の顔写真がカラーで載った。つい、先週、沖縄の普天間の米軍基地移転先が振り出しに戻ったことを一面記事に報道したばかり。保守系の新聞だから日本に関心をもつのも分かるが、それにしても、こう首相がころころ変わる日本の政治に対する不信感はもう沸騰点に達している。

「福田・安倍・麻生・鳩山」と4人続いた首相は、いずれも筋金入りの政治家を家系にもつサラブレッドファミリー。でも全員が途中で投げ出した!そこに現われたのが菅さん。普通のサラリーマン家庭に育ち、60年代の西洋政治理論をベースにした社会主義思想に傾倒し、この30年間、草の根市民政治を展開しようとしたが失敗を3度も繰り返した。「イラ菅」とあだ名されるほど、すぐキレル。経済音痴ではあるが、でも彼はすぐに学ぶ能力を持っている。今年の1月に財務大臣に任命されて以来、どのスペシャリストに聞いても彼は経済通になったと米国系大手銀行のロビイストは証言している・・・・と、まあこんな感じで紹介されている。

でも親の七光りのお坊ちゃま政治家よりも、国民の痛みを少しは分かってるリーダーが”本気で日本を変えていこうよ!”と立ち上がってくれたことに、ちょっとは期待したいと私は本気で思う。フィガロ紙は「顔の見えない日本の政治家」を揶揄してるのだろうか、「ジャンポール・ベルモンドに似てるって言われてるんですよ!」ってフランスのジャーナリストに愛想を振りまいている菅さんの姿、そんな彼の本音も決して紹介することを忘れないでいた。

     (写真  5月5-6日のウィークエンド版のフィガロ紙に紹介された記事)

vin et culture (2010.06.07)  |  未分類  | 

2010.06.05

1945年もの、ロワールの白ワインに酔う

1945年といえば第二次世界大戦が終焉した年。こんな年にもワインを作っていた人がいただけでも驚くべきことだが、そんなヴィンテージワインを飲む機会に恵まれた私も一生に一度の驚くべき出来事だった!しかも、この年はブドウの出来も最高だったという。まさに夢のような試飲会に酔いしれたひと時だった。

フランスのロワール地方は「ロワールの城巡り」でも有名な観光名所だが、その一角にソムュール・シャンピニーという赤ワインで有名な産地がある。”シャトー・ド・ヴィルヌーヴ”の現在のオーナー、シュヴァリエさんのお父様が当時、ナチのSSには絶対に飲ませたくないと自宅のセラーの壁を土と黴で覆って守ったと言う、まさに命がけのワインだ。そのおかげで残り少ない貴重なボトルを一本開けてくださった。勿論、赤ワインは文字通り素晴らしいモノだったが、「とっておきの一本」と前置きして飲ませてくださったのはなんと白ワインだった。

その透き通った輝きは琥珀色に変わっている、グラスに鼻を近ずけるとほんのりと果実の香りがする。口に含むと適度な糖分とロワール独特の酸味がほどよく溶け合ったそれは、まさに「神の雫」。ワインというよりもネクターといったほうがいい。白ワインといえば若いうちに飲むもの、そんな「常識」がまかり通っているが、それはとんでもない間違いだ。「この場所でとれたブドウをここで発酵させて醸造させ一度も動かさなかったことがこれだけのワインに成長できた理由かも知れません。」 そうシュバリエさんは言う。 

”可愛い子には旅させよ”なんて言うけれど、イヤイヤ、旅なんかさせなくても、ひたすら地元で頑張って世界にたった一つしかない自分だけのものを作ってみる。それが案外、世界に通用するものだということを、このシュバリエさんの一本は証明して見せてくれたような気がする。

(写真  現オーナーのシュバリエさん。1945年のボトルには黴が、琥珀色のワイン)

vin et culture (2010.06.05)  |  未分類  | 

2010.05.30

散々だった映画「隣人祭り」

「初日は観客の入りはたったの2500人。クリティックも最悪。完全に負けです!」。意気消沈した声は電話の向こうのダヴィッド・ハダッドさん。監督・兼・シナリオライター・兼・俳優さんだ。ロードショウ公開の前日はあんなに元気だったのに。よっぽどこたえたのだろう。いつもの持ち前の明るさはどこかに行ってしまった。

フィガロもル・モンドもプルミエール誌も、よくぞここまで書くか!というほど容赦なかったのは私も知っていた。「でも、私が見に行った日は10人ぐらいはお客さんが入っていたし、後ろの席に坐ってた男性なんかは声を出して笑っていたわよ!」。そう励ましてあげると「メルシー」とひとこと。たまりかねた私は、「でも、最初は誰だって苦い経験はするものよ。それよりもこんな一流の新聞やシネマ専門誌に書いてもらえるだけでもすごいじゃん。しかも全国のコンシエルジュたちは全員間違いなくあなたの味方よ!」 ちょっとほっとしたようなため息が電話の向こうから聞こえてきた。

今年から5月の最終金曜日に変わった隣人祭り。翌日がオフとあってか、みんな夜遅くまでだべってリラックスしていた。我が家の隣人祭りでも話の話題はもっぱらこの映画のことばかり。初対面同士でも「あれ観た?」というのが合言葉。そんな意味では格好な話題を提供してくれていたし、そんな意味では「隣人祭り」の映画はきちんとその役をこなしていたように思うのだが・・・

(写真  パリの街中いたる所に張り出されている「隣人祭り」のポスター。ロードショウ前日のプレス・コンフェレンスで住宅大臣と環境大臣の前でスピーチするダヴィドさん)

 

vin et culture (2010.05.30)  |  未分類  | 

2010.05.25

一夜のうちに、シャンゼリゼがお花畑に!

パリのシャンゼリゼが一夜のうちにお花畑に変身してしまった!「オー、シャンゼリゼ、オー、シャンゼリゼ・・・」、あの有名なシャンソンでもお馴染みの花のシャンゼリゼ大通りが文字通り、本当にお花畑になってしまった!22日の夜から23日の明方にかけて2000人の若い農家のボランティアやフランス・ボア・フォレ(フランス森林協会)の人たちがトラクターで野菜や果物、オリーヴやブドウの木などを植えた。勿論、牛や山羊・羊なんかも忘れない。

24日は精霊降臨祭、休日とあって凄い人の数。若い人から結構シニアまで、みんなとても楽しそうだ。サルコジ大統領もカーラ夫人を伴って飛び入り参加。来ている人たちを驚かせた。「ナチュール・キャピタル」、自然環境都市パリを目指して、もう一度、農業を見直そう!そんなイベントだ。「若い農民」協会代表のウイリアム・ヴィルヌーヴさんも「農民というと、いつもアグレッシブなストばかりやってるイメージですが、でも本当はそうじゃない。自然は人を和ませてくれるもの。もっと農業を身近に感じて欲しい」。

1990年に”グランド・モアッソン”という大稲刈りをしてから早20年。今年はキャピタルをカンパーニュ(田舎)に変えてしまった。果たして次回はどんなサプライズをしてくれるのか?中途半端じゃない、このスケールのでっかさ。まさにフランスの農業大国たる所以だ。今からなんだか、もうワクワク。待ち遠しい。

、一夜のうちに

vin et culture (2010.05.25)  |  未分類  | 

2010.05.16

アラン・ドロン、されどアラン・ドロン!

カンヌ映画祭もたけなわの今日この頃。先日、久々にアラン・ドロンがレッドカーペットを駆け上がっているのをTVで見た。アラン・ドロンといっても、「それ誰?」って言うジェネレーションがほとんどだと思うのであえて説明を加えるならば、あの「太陽がいっぱい」という映画で冷徹で野心家の屈折した青年を見事に演じて一躍世界の大スターになったフランスの二枚目俳優だ。あのガラスのような透明なブルーの瞳に恋焦がれたのは私だけじゃなかったはず!フランスのシネマ黄金時代をジャンポール・ベルモンドと二分した俳優だ。

今回はイタリアの巨匠ルキノ・ビスコンティ監督のオマージュもあって「山猫」という映画を引っさげてやって来た。共演した女優のクローディア・カルディナーレも一緒。あの頃と比べれば当然、それなりの貫禄はついているものの、やっぱりスターはスター。カッコイイ!髪は真っ白だし皺はあるけど、でも雰囲気といいそのクラスといい世界のドロンは永遠だ。

しかし彼はインタビューでこんな事を言ってた。「もう山猫は観たくない。ビスコンティもバート・ランカスターもセルジュ・リジャーニもあの映画で共演した人たちはみんな他界した。そんな映画をいま自分ひとりだけ観るのは忍びない。もう私にとって映画は過去のものだ!」 なんという潔さ!以前、何かのインタビューでも彼は「自分はいつでもあの世に行ける準備が出来てる・・・」 なんてことを言っていた。現役の俳優でドロンに匹敵する大物なんかいない。でもそんな偉大なスターの最後にしては、なんだかちょっと淋しすぎないだろうか?

(写真 Le Figaro ヴィスコンチの「山猫」のときのアラン・ドロンとクローディア・カルディナーレ)

vin et culture (2010.05.16)  |  未分類  | 

2010.05.16

ロダン美術館の夕べ

ヨーロッパ中の美術館がタダで散策できるなんて!そんな夢のような「ラ・ニュイ・ヨーロぺアン・デ・ミューゼ」という催しが15日の夜から16日にかけていっせいに行なわれた。今年で6回目。フランス全国1300ヶ所の美術館――ルーヴルからオルセー、グランパレ、名もない小さな村の”オラが美術館”まで、とにかくすべての美術館という美術館が無料で一般公開されるからアートマニアだけじゃなくて普段、美術館なんて・・・という人たちにも大人気だ。昨年は何と180万人の人たちが足を運んだというから凄い!たった一晩のためだけに派手なライティングしたり巨大スクリーンに映像を写しだしたりと、みんな自分たちの美術館をアピールできる最大のチャンスだと考えているのだろう。

美術館といえば、そうそう、今週オープンしたばかりのメッツ市の”ポンピドー分館”も勿論、今晩はタダで見学できる。こちらはフランス東部、ロレーヌ地方というかつて炭鉱で栄えた街がいまでは貧困の象徴となったメッツ市を経済活性化させようと、当時の文化大臣(現在のヴェルサイユ宮殿館長)とメッツ市長が手を組んでできた大変’政治性’の強い美術館だ。建築には日本の坂茂氏が起用され、そのユニークなデザインも話題になったことはすでに我々日本人も承知のとうりだ。

オープニング時にはサルコジ大統領はじめ、ミッテラン時代の文化大臣ジャック・ラングなど錚々たる政治家のオンパレード。そのあたりにフランスの文化がどれだけ政治と絡んでいるか、文化はイコール経済活性化の起爆剤にすぎないと考えているフランス人の割り切りが見てとれて興味ぶかい。歴代の大統領たちが自分色を出すために様々な美術館を建ててきたが、サルコジ大統領はグランパレを自分のものにしたいらしい。

それにしても先日訪れた世界文化遺産モンサンミシェルに日本人観光客が大勢来ていたことは前にもお伝えしたとおりだが、我々日本人というのは本当に文化・芸術が好きな国民性だとつくずく感じる。世界中のモニュメントに寄与しているんじゃないか!今度のポンピドー分館にも日本人建築家を起用したのも、ひょっとしたら日本人にお願いすれば日本人観光客がたくさん来てくれるのでは・・・というフランス人の皮算用がコンペの時になかったとは否定できないように思うのは私の考えすぎだろうか?

         (写真  ロダン美術館で  ラ・ニュイ・デ・ミューゼのポスター)

vin et culture (2010.05.16)  |  未分類  | 

2010.05.14

Facebook パーティー

ここ1年ぐらい前から「アペリ・ジェアン」と呼ばれる集会がフランスのあちこちの都市で開催されている。アペリ・ジェアンとは厳密に言うと「アペリティフ+ジャイアンツ=巨大なアペリティフ(食前酒)」の略で、アルコールを持参してもいいパーティーのこと。Facebookで集まった何千・何万人の人たちが街の公園や広場に自発的に集まり、知らない者同士が知り合いになっておしゃべりする、たったそれだけのことだ。いま流行の”つながり”を求める若者たちの輪だ。しかし、すでに自治体や警察などは「危険」を察知していたが、まずはトラブルがない限りは禁止することも出来ずに許可していた。

ところが昨夜、ナントという地方都市に集まった9000人もの人たちのうち21歳になるひとりの若者が帰り際に橋から落ちて死亡した。死者をだしたということになれば事態は変わってくる。早速、警察が介入して誰がオーガナイズしているのか、ネットワークがどこにあるのかなど事実を追求しようもののFacebookという匿名性から全く足がつかめない。すでに、この集会に参加している人たちの中にはドラッグを持参している者も少なくないという。こうした集会を今後も野放しにしておけば犯罪の巣窟になるのは時間の問題だ。

いまパリやリオン・マルセイユなど大都市の郊外、俗に言う”バンリュウ”といわれている所では移民問題から端を発して麻薬密売の組織がアンダーグラウンドに結成されている。特に仕事にあり就けない移民の若者たちをディーラーに仕立て上げて組織的に縄張りを拡張している。かつて移民の子どもといえば貧困に喘いでいたが、今では大金を持っているから余計に危険だ。彼らの行動に歯止めが利かなくなるのも目に見えている。そんな組織がこのアペリ・ジェアンを利用するとなれば・・・・ああ恐ろしい!

参加者のほとんどは健全な市民であるのは間違いない。彼らは友人を誘ったり兄弟・親子で楽しんでいる人たちがほとんど。情報を交換し合いながら笑って楽しくひと時を過ごす。でも、そんなごく身近な平和が希少価値に変わってしまう時代が来るのだろうか?

  (写真 Le FIGARO   9000人の人たちで埋め尽くされたナント市の広場)

vin et culture (2010.05.14)  |  未分類  | 

2010.05.11

ユネスコの世界文化遺産 「モンサンミシェル」を救え!

あるアンケートによれば日本人に最も人気がある世界文化遺産といえばフランス西海岸のモンサンミシェルなのだそうだ。そんな予想通り先日取材で訪れた時も、まるで江ノ島にいるかと錯覚するぐらい日本人観光客ばかりだった。ここは潮の干満の差が15メートルもあり、満ち潮の時には修道院がある島がすっぽりと、まるで海の中に浮かんでいるように見える。これがまた我々日本人には神秘的でたまらないのだろう。とくに満月と新月の時には大潮になリ、その速度が尋常じゃないぐらいに早い。干潮のときには海が18kmぐらい引くから、むき出しになった砂浜でゆったりと散歩なんかしようものなら突然、猛烈な勢いで波が押し寄せてくる。そんな様を想像してほしい。いくら走たって逃げようがない。かつて巡礼で訪れていた人たちが何人も潮に呑まれて命を失ったという。そんなストーリーも日本人の想像力をかき立ててくれるには充分なのだろう。人気スポットなのがよく分かる。今でも島の入り口には干満時刻が表示されて観光客に注意を促している。

しかし、そんなモンサンミシェルにいま危機が訪れている。

まだ環境保全などと騒がれていなかった時代に、ひとりでも多くの観光客を誘致しようと島と対岸の陸地との間に自動車道路を作ってしまったのだ。それによって潮の流れが完全に遮られて堆積物がどんどんたまってしまった。その結果、大潮の時も海が流れ込まなくなってしまったのだ。もう海に浮かぶモンサンミシェルも見れなくなってしまうのだろうか?! そんなことが起これば観光収入も減ってしまうと、国と自治体は有識者を交えてかつてのような海洋環境を再現しようと工事を計画した。工事は2005年からスタートして2015年に完了する予定だ。しかし、たまった堆積物を取り除くにはかなり大掛かりな仕掛けが必要だ。ここを流れるクエノン川という川にダムを作り、その水流の勢いで堆積物を押し流すのだそうだ。そんな工事の模様が逐一とサイトで見られるから興味のある方はどうぞ、ここをクリックして下さい。www.projetmontsaintmichel.fr

歴史的モニュメントと最新テクノロジーの融合。世界中の人たちに環境の大切さを知ってもらう、またとないチャンスだ。それはまたユネスコの世界文化遺産に登録されるということの最大のメリットなのかもしれない。それを十二分意識したモンサンミシェルの取り組みは、まさにフランス人らしいプラグマティズムで自国をアピールするのに多いに役立っているようだ。

    (写真 クエノン川から見た夜景  モンサンミシェルの全景 ) 

vin et culture (2010.05.11)  |  未分類  | 

2010.04.25

頭の痛いスカーフ問題

イスラム教徒の女性が被る「ニカブ」と呼ばれる目だけを出した黒いベールで車を運転していた若い女性がフランスの警察につかまり22ユーロの罰金を課せられた。理由は体中を覆う衣服が視界を遮り危険だというもの。しかし、その後、ただちに内務大臣が自らの音頭で彼女の夫の身元を調べたところ、イスラム法に従って4人の奥さんを連れて入国。(かの地では一夫多妻制は認められている) そのうちのひとりの妻とは何と12人の子どもをもうけ、フランスの家族手当まで国から支給されていたというからちょっと驚きだ。しかも、それに気がつかずに支給し続けていた役所も縦割り?!かなりいい加減だと思うのだが!フランスの法律では一夫多妻制は認められていない。従って彼はフランスでは法律違反を犯していることになる。しかも12人分の家族手当を申請していたことも刑の対象になる・・・。そんな「事件」が今、フランスのメディアを騒がせている。(内務大臣はスカーフの本質的な問題を一夫多妻という刑法にすりかえようとしている魂胆もプンプン感じるが。)まさに欧州が置かれている複雑な問題を象徴する事件である。

このスカーフ着用については学校や病院などのパブリックスペースでは禁止すべきだが宗教の集会などは認めるべきだとか、一律に禁止すべきだとか意見は分かれる。すでにベルギーでは数日前に一律で禁止する法律が可決されたばかり。フランスでもサルコジ大統領はこの路線に前向きだ。来月5月21日にはこの法案を閣議にかけることがフランスでも決まっている。個人の自由・人権尊重と声高く叫ばれている国だけに、その答えを出すのは容易ではない。しかし、イスラム教徒の移民が日増しに増えている中、過激派である原理主義者がスカーフを装って流入することを欧州ではもっとも恐れている。04~05年にかけてテロが多発した時にもスカーフで身元確認がなかなかとれないといった事態も起きていた。宗教の自由は守られなければならない。しかも各自の言い分だってあるだろう。こういうアイデンティティーの問題はことがことだけにデリケートな問題だ。でも日本も”対岸の火事”なんて悠長なことを言ってられない日がもうじき来ることだけは肝に銘じておいたほうがいいと思う。

        (写真 赤・白・花柄とカラフルなチャドルというスカーフの女性たち)

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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