2010.10.04

日本とフランス、なんとなく「骨董」

『日本文化の影響と暮らしの美学』と銘打ったイベントがパリの蚤の市、クリニャンクールで開催されている。オープニングパーティーの晩は散々な天候だったにもかかわらず、それでもアンティークファンや日本文化に興味のある人たちがたくさん訪れて、日本酒とワインで乾杯しながら大いににぎわっていた。

それにしても最近、フランスでは日本が何かとブームで「日本が大好き」「日本に行ったことがある」「日本語を勉強してもう一度行きたい」・・・といったフランス人がどんどん増えている。かつて、日本の若者が”外向き”だった時代には、なぜかフランスは日本人にとっては憧れの外国ナンバーワンだった。特に若い女性を中心とした観光客は引きも切らず、「パリ症候群」なんていう言葉も流行したほどだ。日本人でもアメリカ西海岸派とフランスパリ派とふたつのタイプに分かれるほどだった。

しかし、ではパリの何が好きなのか?と聞いてみると、「なんとなく」「あの独特な雰囲気」「セーヌ河の流れ」・・・といった何とも実態のつかめないパリ像なのである。料理とかワイン、ファッションに芸術といった確固たるモチベーションがある人は極々ひとにぎり。蚤の市に何げなく飾られている日本のアンティークが実に西洋の骨董品のなかに溶け込んで活き活きと輝いている姿を見ていると、案外と日本とフランスの文化は結構、相性がいいのかもしれない。

フランス人が日本を好きな理由も、日本人がフランスを好きな理由も、もしかしたら「なんとなく」、なのかもしれない。かつて田中康夫の『なんとなくクリスタル』という本が大ヒットしたけれど、いままた「好き」に理由なんかいらない時代に突入したのかもしれない。

 写真 クリニャンクールの蚤の市でのオープニングパーティー。日本と西洋骨董が自然と溶け合っている。

vin et culture (2010.10.04)  |  未分類  | 

2010.09.27

応援したいパリのシェフ、スヴェン!

料理との相性というのは、なかなか難しいものだ。その時のおなかの空き具合だったり、誰と食べるかによっても微妙に変わって来る。いくら自分が好きだと言っても一緒に行った人から「何、これ?!」なんて言われれば、ちょっと怯んでしまったりもする。でも、久々に「これって私の好み!」と堂々と思える料理に出会った。

彼はフランスのぺリゴールで生まれた弱冠23才のシェフ。2週間半前にお店をオープンしたばかりで、すでにオーナーシェフ。なんか北欧っぽい雰囲気を持っている人だな、といつも思っていたら両親がスウェーデン人だという。料理も純粋なフランス料理というよりもオランダ辺りで食べるフレンチという感じなのだ。(それがパリのフレンチとどう違うのか?と問われてもはっきりとは答えられないのだが・・・) バイキングのような髭をたくわえているけど目はとっても優しい。そして、よくよく見るとやっぱり若い。彼の名前はスヴェン・シャルティエという。

いまどきの若い料理人にありがちな、とてもファージーなタイプ。味もメリハリがきいていて「好きか嫌いか」がはっきりと別れるような類の料理ではない。日本人にもアメリカ人にもフランス人にも好かれるタイプ。要は国籍は問わずに野菜料理が大好きな人なら間違いなく誰もがファンになってしまう、そんな料理をつくる人だ。

アルページュやアルノー・ダギャンで修行した後、小さなワインビストロ「ラシーヌ」をオペラ界隈にオープンして、たちまちパリのグルメ批評家たちの目を引いた。客層はいたっておしゃれなインテリ層やボボ(=ブルジョア・ボエム)でいつも満席。彼が別の場所に移るのは時間の問題だと思っていたら、やっぱり今年の9月、新学期と同時に証券取引場のすぐ反対側にオープンした。その名も「サチュルヌ」、農耕の神様サトゥルヌスの意味。土星も意味する。

そうそう、3ツ星レストランのアルページュが漏電して店が火事になってしまった。丁度、モンゴルにバカンス中だったシェフのアラン・パッサールが真っ青になって飛んで帰って来てみたら、すでに従業員たちが全員慌てふためいて集結していたという。店は10月中旬まで改修工事のためにクローズされている。その間、といっちゃなんだが、スヴェンの料理を食べて、せめてもアルページュの野菜料理に考えを巡らせてほしい。決してアランには負けないだけの実力をすでに持つ若者の出現にびっくりされる筈である。

写真「グリルしたポロネギと牡蠣のソース」の一品は垂涎もの。笑顔がやさしいスヴェン。

vin et culture (2010.09.27)  |  未分類  | 

2010.09.27

ブルターニュ地方のレースの「ビグルダン」とイワシの缶詰

まわりを海に囲まれたブルターニュ地方では昔から漁業が盛んだ。なかでもイワシ漁は人々の生活をささえる大切な産業で、冷凍保存技術などなかった当時としてはイワシを油に漬けて缶詰にすることが唯一、長期保存の手段でもあった。誰でもが簡単に出来るとあって一時期は39000トンもの漁獲高を誇る重要な産業でもあった。しかし乱獲が原因で1902年から03年にかけてイワシはまったく獲れなくなってしまい人々の生活はどん底へ。そんな時に彼らの生活を救ったのがカギ針レースだった。

「ビグルダン」と呼ばれる女性の髪飾りは民族衣装としてとても美しい。もともとアイルランドから伝わったこのレースの技術は、たちまちブルターニュの女性たちをも魅了して広まっていった。たまたま週末に訪れたブルターニュ地方のポンラべという町では現在、市庁舎に併設されている美術館には1880年の最古のものから最近のものまで見事なまでの様々なビグルダンが陳列されている。また当時の生活を映像にしたドキュメンタリー映画では女性たちがビグルダンを頭にかぶって工場でイワシを剝いている姿や、どうやって頭に固定させるのかをひとつひとつ説明した映像が目を引く。まさに女たちにとってビクルダンは生活の一部なのだということが伝わって来る。

イワシの缶詰は今でもブルターニュの名産品としておみやげ屋さんの店先には背丈ほどに高く積まれた色とりどりの缶詰のパッケージが目を引く。レースとイワシの缶詰、思わぬところに人々の生活を救った歴史がいまでも誇り高く語りブルターニュ地方では語り継がれている。

 

     写真: 見事なカギ針レースの「ビグルダン」。イワシの缶詰工場で働く女たちは「ビグルダン」を被って作業している。イワシの缶詰を高く積み上げたショップで。

 

 

vin et culture (2010.09.27)  |  未分類  | 

2010.09.22

パリの大統領官邸、「エリゼ宮」の中身

10月18-19日の二日間、恒例のイベント『文化遺産公開の日』がフランス全国で一斉に行われた。普段見ることの出来ないモニュメントや公共の建物などが無料で一般公開されるとあって、今年は2日間で約1200万人の人たちが訪れて大変なにぎわいを見せていた。なかでも大統領官邸の「エリゼ宮」や「ヴェルサイユ宮殿」「上院議員会館」などは常にトップスリー、それに加えて今年は「リド」といった有名な老舗キャバレーの舞台裏も公開された。

「エリゼ宮」を是非とも一生に一度は見てみたいと、ちょっと早起きして朝、8時半に行ったところ、すでにその行列は延々とコンコルド広場からシャンゼリゼ大通りにまで伸びている。意を決して来たのだからとその列に並ぶこと延々8時間。結局、入口の門に辿り着いたのは午後4時半。「一生に一度!」を何度も自分に言い聞かせながら辛抱強く待ち続けた。持参した本も読破。それでもお天気が良かったせいか並んでいる人たちも愚痴ってる様子もない。「年金改革」の話やサルコジの批判、最近、発刊されたカーラ夫人のスキャンダル本・・・など、下世話な話題に事欠くことなく結構、盛り上がってる。こんなところにも連帯意識がはたらくフランス人というのも面白い民族だ。ただ、私のすぐ後ろにいたフランス人夫妻は「エリゼ宮」を一目見ようとわざわざ汽車に乗ってノルマンディーの地方都市からやって来た。「今晩の5時の汽車で戻る予定なんだけど!」と最初は笑顔だったのが次第に顔つきが曇っていく。結局、入口の門に辿り着いた時には時間切れ。8時間の行列は一体何のためだったのだろうか!!

  写真: 延々と長蛇の列が並ぶシャンゼリゼ大通り。エリゼ宮の食卓。サルコジ大統領の執務室。

vin et culture (2010.09.22)  |  未分類  | 

2010.09.19

冒涜か冒涜でないか、それが問題だ !ヴェルサイユ宮殿の村上隆展

フランスの絶対王政時代の象徴、ヴェルサイユ宮殿。ルーヴル美術館に並んで世界中の観光客がこぞって訪れるその宮殿で、今、村上隆の展覧会が開かれている。

『朕は国家なり』という有名な言葉を残した太陽王ルイ14世が最も自慢していた「鏡の間」の回廊には突然、マルチカラーの「フラワーボール・カイカイ・キキ」がドカンと遮り、また当代きっての庭師だったルノートルが設計した大庭園には「オヴァル・ブッダ」の金色に輝く5メートルものオブジェが太陽に反射している。きっとルイ14世が生存していたら「太陽は私か?それともお前か?」と慌てふためいたに違いない。

ところが・・・である。この村上の展覧会に今、賛否両論の嵐が吹きまくっている。”ベルサイユ・モナムール”と呼ばれる宮殿愛好家グループのひとりは「ムラカミの美意識なんかどうでもいい! ベルサイユ宮殿は神聖な場所。そこにマンガ文化を持ちこむなんて言語道断。恥を知れ! フランス文化の冒涜だ!」と鼻息荒い。一方、宮殿の館長でかつて文化大臣をしていたジャンジャック・アイヤゴン氏はそんな反対派など全く意に介さない。「国王ルイ14世は芸術・文化にとてもオープンで寛大だった。ベルサイユ宮殿が人々を幸せにしてくれる場所だと願っていた。ムラカミのオブジェもここを訪れる人たちをハッピーにさせてくれる、という意味では全く同じ意味をもっている。」

現代アートのアーチストとしては世界6番目の値が付いている村上隆の作品。ベルサイユ宮殿としてはむしろ、そんな彼の”金銭的価値感”で集客を狙っているのは誰の目にも明らかだ。一昨年はアメリカのアーチストのジェフ・クーンを、そして昨年はフランスのグザヴィエ・ヴェランと、アバンギャルド派のアーチストを招聘することでベルサイユ宮殿はイメージチェンジを図ろうとしている。

ルイ14世はバレエやスペクタクルを愛してやまなかった。フランスの王としてはかなりアバンギャルドな王様だったとも言われる。きっとムラカミがベルサイユに来てくれたことを知ったら一番歓迎しているのは、ひょっとしたらルイ14世その人本人ではないだろうか・・・・。

ベルサイユ宮殿に飾られている村上隆のオブジェ。新しいもの好きだったルイ14世が生きていたらきっと面白がったに違いない!

                                (写真 Le Parisien)

vin et culture (2010.09.19)  |  未分類  | 

2010.07.08

パリ産、ハチミツが生まれるかも!?

400年の歴史を誇るパリの老舗レストラン「ラ・トゥール・ダルジャン」。その屋上で今、ミツバチの養蜂が行なわれている!といっても自家製の自己消費程度。ことの起こりは1996年に遡る。フランスでは突然ミツバチが激減してしまった。その10年後の2007年には今度は世界中でも同時に同じ現象が起こったのだ。いったい原因はどこにあるのか?世界中の研究者が今その原因究明に乗り出している。

ミツバチはハチミツを造るばかりではない。植物の花粉を運ぶ媒体としても、とても大切な役目を担っている。もしも全滅してしまったら受粉が行なわれなくなるから農業も全滅してしまう。そうなったら風による受粉でとれる限られた果物や、或いは遺伝子組み換えによるとうもろこしや小麦ばかりが食卓に並ぶことになる。食べる楽しみ所じゃなくなる。それはもう人類にとっての最大の危機だ!

その原因はいろいろあるようだが、病害虫にやられたり、農家が殺虫剤を撒きすぎたり、遺伝子組み換え作物の増加、パソコンや携帯電話の大気中の電波とも言われている。どれをとってもミツバチの成育を妨げるものばかりだ。否、ミツバチに限らず人間にとっても体に悪いことばかりだ。農業大国フランスでは農家が養蜂家に畑の一部を提供して、そこでミツバチを飼育してもらったり、科学肥料や殺虫剤の代わりにオーガニックなものへの開発をはじめたり、はたまたミツバチにプロテインを与えるなど対策に躍起だ。

という訳で、パリの街中でも養蜂を奨励しようと国が積極的に乗り出している。オペラ座の屋上やLVMHの本社ビルの屋上など、みんなハチミツ作りに忙しい。もしかしたら「パリ産ハチミツ」のAOC(原産地呼称制度)が出来る日もそんなに遠いことではないかもしれない。南アのワールドカップで大顰蹙をかったブブゼラ。あの音をフランス人は「ミツバチの鳴いてる音」と形容していたけど、これからはパリの観光名物はブブゼラならぬ本当のミツバチの音を堪能することになるのかもしれない。

(写真  トゥール・ダルジャンのレストランから見たパリのノートルダム寺院とセーヌ河)

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2010.06.28

ヴェルサイユ宮殿の夕べ

ヨーロッパの夏は長い。今日のパリの日没は21時57分。といっても、まだうっすらと残光が夜空にはえるその光景は息を呑むほどに美しい。ユネスコの文化遺産にも登録されているヴェルサイユ宮殿では、毎年恒例の夏の野外ライトアップがはじまった。

ヴェルサイユ宮殿といえば「太陽王」のあだ名で知られるルイ14世の居城、その華麗なる宮殿の建物もさることながら、敷地内に広がる庭園の美しさは地上の楽園だ。大運河や泉水、噴水は、もうそれだけで充分に芸術作品。その間を縫うようにして散策すると、所々にはボスケと呼ばれる樹木庭園がまるで秘密の隠れ家のように散らばっている。

絶対王政時代にはすべての権力が王に集中していた。ルイ14世は自らもダンサーだったことは有名だが、何よりも祭りやスペクタクルをこよなく愛する粋な王様だった。そんなルイ14世の栄華な時代を体験してもらおうと、ヴェルサイユ宮殿では当時の姿を再現しながら噴水のライトアップや花火、ネプチューンの泉水での大スペクタクルなど、毎年夏に限定して一般公開している。家族連れやカップル、大人も子どももみんないっしょに楽しめる夏の夕べ。短いヨーロッパの夏を彩るにふさわしいイベントだ。

   (写真  ライトアップされたヴェルサイユ宮殿の庭の泉水と噴水。夏の風物詩だ。)

vin et culture (2010.06.28)  |  未分類  | 

2010.06.27

サムライブルー・バンザイ!

      (写真  FIFA   日本対デンマーク選 3:1、ゴールに沸く )

豪快なシュート、またしてもやってくれました! 我が日本代表「サムライ・ブルー」。デンマーク選の日本チームの堂々とした戦いぶりに鼻高々なのは私だけじゃないはず。まずは選手のみんな、おめでとう! 

街ですれ違う見ず知らずのフランス人からも私が日本人だと見るや否や、「ブラヴォー、やったね! 」と祝福してくれる。フランスチームが散々だったのと言語道断な非スポーツ精神に怒り心頭しているフランス国民のはけ口が、こうしてフェアに一生懸命戦っている日本チームに向けられているのはとても健全なことだと思う。

それにしても今回の日本チームといい、また韓国チームといい、こちらではとても高く評価されている。特に日本チームは監督と選手が一体になってお互いの意思疎通が行き届いていることに触れている。スター選手がいなくたって、こうしてチームが一丸になれば勝利をつかめることをわざわざ強調しているのはフランス・ブルーに対する痛烈な批判だ。当然のことだ。 また本田選手のシュートにはメディアがこぞって絶賛。彼はルックスがいいだけじゃなくて、こうした決めるときにはバシッ! と決めてくれる度胸、他の選手とのチームワークなど、プレーヤーとしてのカリスマ性を充分に備えている選手と手放しの褒めようだ。新しい時代を切り開いてくれる新しいヒーローの登場に、これからの日本のサッカーが本当に楽しみだ。

今回のワールドカップではイタリアやフランスといったサッカーの老舗大国が一次リーグで敗退という予想外の結果となった。そこには「勝者のおごり」があったのではないか? フランスのメディアが伝えるところによれば、他の国のチームでも選手同士や選手と監督がいまひとつ、うまくコミュニケーションが機能しておらず「サッカーとはチームプレーなのか、それとも個人競技なのか、はなはだ疑問を呈している」といった指摘が多いらしい。だからこそ余計に今回の日本チームの勝利は、サッカーが「チームワーク」を必要とするスポーツであるという基本に忠実に戻った事を全世界に知らしめる素晴らしい機会だったのではないかと思う。

vin et culture (2010.06.27)  |  未分類  | 

2010.06.21

仏サッカーチーム、スト突入 !

今のフランスが抱えているすべての問題―移民・教育水準の低下・国に依存する国民の体質・利己主義―それがサッカーという形で一気に噴き出した感じだ! しかもワールドカップという世界の祭典の真っ最中で。

それにしても・・・・である。

事の起こりはメキシコ選で完敗した辺りから雰囲気がにわかに悪化したことが原因だ。メデイアが一斉攻撃したのは前回も書いた通りだが、試合終了後、更衣室内で選手たちが不満をぶちまけていた時に、ひとりの選手が監督を侮辱する発言をしたことが外部にいるはずのジャーナリストの耳に入りスクープへ。それに激怒した仏サッカー協会の会長がその選手を即刻クビ。まだ、来週、南ア・チームとの試合がひとつ残っているにも拘らず、である。

監督が事態を収拾しようとするも、すでに監督と選手の信頼関係は完全に破綻している。そこへサッカー協会の制裁に不満をもらした選手側はストに突入。昨日の練習をボイコットした。これが分別ある大人の対応と言えるだろうか?

それはサッカーというものが商業化され、選手がスターシステムにのし上がり、巨大な富をもたらしてくれるスロットマシーン化している現実が浮かびあがる。スターになった選手たちは、もはやサッカーが純粋に人々に与える感動とかスポーツ精神といったものとは程遠い商品化された現実を、自らが公表してしまったようなものだ。しかも、彼らに少しでも「知的な」判断力があれば最悪な事態は避けられたはずである。これではスポイルされたバカ集団以外のなにものでもない!

それにしても子どもたちに夢を与えてくれるサッカー、人種を超えた連帯感、スポーツのもつ健全さ・・・それはいったいどこに行ってしまったのだろう。そんな夢を全て否定するような今回の成り行きには腹立たしさを超えて呆れるばかりである。1998年にフランスチームを勝利に導いた選手の一人、エマニュエル・プチがTVでこう言っていた。「サッカー精神のヘリテージュ(共有財産)はもう完全に失われてしまった! 」と。

      (写真 Le Parisien   ストに突入したフランスチーム)

                   

vin et culture (2010.06.21)  |  未分類  | 

2010.06.19

やっぱり!と言おうか、このフランスチーム

「もう話しにならない!」「ペテン師」「ぶざま」「アウト・オフ・アフリカ」・・・・。金曜日の朝刊の見出しは一斉にフランスのサカーチームのこき下ろしで埋まった! 今までのたまっていた鬱憤をこれ見よがしに晴らそうとしているのはみえみえ。もう監督やチームに対する侮辱の応酬と化している。でも、そう書かれても仕方ないのは事実だ。木曜日の夜行なわれたフランス対メキシコ選は0:2。その前に行なわれた一回選でもフランス対ウルグアイは0:0。まだ1点もゴールしていないフランスチームに業を煮やし苛立ちを隠せない。はるばるパリから大金を払って応援に駆けつけたファンのひとりは、「もう、今日の飛行機で帰国する!」と怒りをぶちまけていた。当然、監督のレイモン・ドメニックに対する非難はちょっとやそっとのことでは収まりそうにもない。今から彼がフランスに帰ってくるのをサッカー協会は勿論のこと、関係者はみんな手ぐすね引いて待っている。国民だって怒りのはけ口を彼らに向けるだろう。今からちょっと怖い。

それにしても今回のワールドカップ、すべてが異常だ。まず監督の人間性や資質に対する疑問。試合の直前ギリギリで選手を交代させてみたり、戦術をアレコレ変えたりすることに選手自身がキレテすでにチームとして監督との信頼関係が失われていた。それがメキシコ選ではみえみえ。選手自体にまったく覇気がなかった。それだけじゃない。試合前の合宿しているときにも、選手たちがとてもナーバスになっている時期に、「リベリが未成年の娼婦を買った」とゴシップ誌が取り上げると、別の週刊誌がその娼婦を表紙に載せて「暴露」する始末。それだけじゃない。青少年スポーツ省の政務次官は「フランス・チームの宿泊先ホテルが南アでは一番高級なデラックスホテル。身の丈知らず!」と一蹴。(後日談があって、この政務次官、実は当初は青年会館みたいな所に宿泊する予定だったのだが、この一件で自分も一泊、8万円ぐらいのホテルに変えたらしい!) なんとなく健全なスポーツという雰囲気よりも安っぽいソープオペラを見せられているような感じで、とても不愉快だったのは私だけじゃなかった筈。

「そんなフランスチームを応援しようという気にもならない。フランスなんか負ければいい。フランスといっても選手たちは黒人ばかり。彼らはラ・マルセイエーズ(国歌)を歌おうともしないし、フランスに対する忠誠心なんか、これっぽちもない。そんなチームに誰が期待なんかするものか!」。そんな声があちこちから聞こえてくる。なんかちょっと淋しいワールドカップである。

 

(写真 Le Parisien    メキシコに完敗した直後のフランス・レ・ブルー・チーム)

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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