2011.09.23

9月23日は、『フェット・ド・ラ・ガストロノミー』の日。

9月23日は『フェット・ド・ラ・ガストロノミー』の日。フェットとはフランス語で「祭り」、ガストロノミーは「美食」を意味するから、『美食祭り』とでもいおうか。何ともフランス的な匂いがする。かつてミッテラン時代に文化大臣であり国民的人気を博したジャック・ラングが提唱した「フェット・ド・ラ・ミュージック」(ミュージック・フェスティヴァル)にあやかり、その後もフランスではフェットという名のイベントが多流行り。(私が日本で広めようとしている「隣人祭り」もフランス語では「フェット・デ・ヴォアザン」という) 

その背景にあるのは、ひとりでも多くの人を町なかに繰り出させて孤独やひきこもりをなくし、また経済も活性化させようという、まさに一石二鳥のイベントだ。バックには農業省や経産省・文科省・社会連帯省など5つの省庁がついている。今年が第一回目、普段だったらレストランは高根の花というひとたち向けに特別メニューが安く食べられたり、パン屋さんやお菓子屋さんも、この日限定といううれしいパンや菓子も販売する。こんなお祭りだったら世界中で流行って欲しいと思う。

前夜祭にはパリのパラスホテル「プラザ・アテネ」でガストロノミーになくてはならない職人芸のいくつかを披露。ショコラチエ(チョコレートの職人)やパティシエ(菓子職人)が作りだす様々なスィーツ、高さ2メートルぐらいに積み上げられた金や銀色のマカロン。ため息が出そうなテーブルセッティングなど、フランスのお家芸でもある”職人の技”に訪れた人たちはしばし足を止めて堪能していた。

      

    写真   ゴージャスなテーブルセッティング、1968年より続く老舗ショコラ、プラザアテネのシェフパティシエのオリジナル”プラランのエクレア”。  

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2011.09.20

DSKがTVに出演!

DSKことドミニク・ストロース・カーンが9月18日、20時のTF1のTVニュースで「真相」を語った。”元国際通貨基金(IMF)総裁がNYのホテルでメードにセクハラで逮捕!”という信じがたいニュースが世界中を震撼とさせたのは今年の5月。次期大統領候補ともいわれた彼のスキャンダルは辛辣なメディアのかっこうの餌食になった。はめられたのか?それとも無防備すぎたのか?それともアメリカという国を「なめていた」のか?

TF1のTVニュース始まって以来の高視聴率だったその晩、パリっとしたダークスーツにボトックスで顔を整えたのか(?)、あのいつもの左目がちょっとつぶれたような形相とは打って変わってフレッシュな印象だ。画面に登場するや否や「まずは家内や家族に多大な心配をかけた。そしてフランス国民にも。」―――日本人の感覚としては「まずは国民のみなさんに多大な迷惑をかけた。深く謝罪する。」からはじまってもいいだろう!と、スタート時点から違和感を覚える。「自分はモラルを誤った」「起きたことに対して深く反省する」といった言葉を口にしながらも、何度もヴァンスジュニア米国検事の報告書を右手で振りかざしながら饒舌にまくしたてる。「あってはならない関係を結んだ・・・しかしレープした訳でもなく暴行した訳でもなく犯罪には至らない」と結論付けたその報告書をもとに、自分は無実だと言わんばかりの勢いに元弁護士だけあって、その語り口は理論的であり、時々裁判用語を駆使するあたりはさすがと言わざるを得ない。なんか国民は置いてきぼりを食ったような感じ。”やっぱり自分たちとは違う所で事が処理されているんだ!” という感覚を抱いたのは私だけではなかっただろう。

しかし大統領としての政治生命を棒に振ってまで”ホテルのメードに手を出す人間”にフランスの将来を託そうとした仏国民は難を逃れたと言ってもいいだろう。「大統領選に出馬することはもはや考えられない。・・・しかし、今まで自分の人生はすべて国家のために奉仕してきた。政治家として復活するかどうか・・・それは未来が決めてくれるだろう。」と締めくくった。果たして日本だったら、こんな会見に国民はどう思うだろうか?

                写真 TF1のTVニュースに生出演したDSK (Le Figaro)

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2011.09.08

シルクロードで出会ったもの

シルクロードを旅した。中国という国は、とにかく”でっかい”。どこまでもどこまでも果てしなく続く荒涼とした大地、バスで何時間も走り続けても”同じ景色が続いている”。そんな体験は日本では到底あり得ない。大自然のなかで生きる少数民族の生命力に、あらためて人間の力・知恵・バイタリティーに感動した。

敦煌から安西、そして酒泉にいく道中は風の通り道で風力発電が無数に回っている。今回、ご一緒したツアーを率いる団長さんで元NHKのシルクロード取材班団長を務められた先生は、『敦煌』の作者でおなじみの井上靖氏と旅を共にした際に氏がふと漏らした言葉をこんな風に語って下さった。「敦煌という小説を書いていた時代はまだ一般人が中国を旅することは禁止されていた。イマジネーションで書き上げた作品だ。しかし、安西に向かって吹きおろすこの風を知っていたら、多分、戦闘シーンも違ったものになっていただろう!」

あぁ、なんてエキサイティングな言葉なんだろう!今回、参加したツアーでは「シルクロード」をこよなく愛し、もう何度も訪れている方たちもたくさんおられた。私のような初心者でちょっとお気楽に旅しているのがちょっと気恥ずかしいような雰囲気もあったが、しかし私にとって印象的だったのは中国という国が抱えている民族の集合体というということの意味だ。漢民族とそれ以外の55もの少数民族が同居する中国という、あまりにも巨大すぎる国の運命。過酷な大自然のもとで民族の闘いを通して生き抜いてきた歴史を背景にして、彼らにしてみれば日常の些細なことにいちいち一喜一憂していてもはじまらないのだろう。そんなデ―ンと構えたある種の大雑把さに私はなぜか中国人の本質を見たような気がした。箱庭的でチマチマした日本人とはまったく逆なもの。中国の人たちにしてみれば、そんな日本人なんか所詮はお釈迦様(中国)の手のひらで遊んでいる少数民族のひとりぐらいにしか考えていないんじゃないだろうか? そんなことを思ったシルクロードの旅だった。

写真  砂漠のオアシス「鳴沙山」、晴れた日に風が吹くと砂が流れ、その音が管弦や兵馬が打ち鳴らす太鼓やドラの音のように聞こえるともいわれることから、この名前が付けられたという。

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2011.08.25

南禅寺の「大寧軒」

まるでハロウィーンのカボチャの妖怪のようなひょうきんで可愛らしい石灯篭。よく見ると笑顔でほほえんでいる風情がこれまたカワイイ。ここは京都南禅寺にある「大寧軒」と呼ばれる池泉回遊式庭園で、明治時代の茶人、藪内紹智によって造られたものだ。470坪の庭内には優雅な曲線を描く池や茶室も建てられ、飛び石の打ち方や苑路などに趣向を凝らした露地風の庭園だ。なかでも春日型・雪見型・織部型と呼ばれる様々な形の灯篭が目を引く。このほほ笑む灯篭もそのひとつだ。

臨済宗南禅寺派大本山、南禅寺の塔頭寺院であった「大寧軒」は東山三十六峰のひとつ、大日山を借景にした実に美しい庭園で、琵琶湖疎水の取水口から引いてきた水はその落差を利用して3メートルもの滝が勢いよく流れている。夏の京都も、また風情があっていい。特に南禅寺界隈は閑静なたたずまいで知られている。観光的にはシーズンオフということもあり、人はまばら。しかし神社・仏閣では文化財特別公開をしているところが多い。ここも、そのひとつで、ボランティアと思われる定年退職した市役所の元職員(?)が丁寧にガイドしてくれる。

束の間の夏のバカンス。温度計は33℃を越している。でも熱々の湯豆腐でいっぱいというのも、またおつなものである。

         写真    南禅寺「大寧軒」の庭園でみつけたひょうきんな石灯篭。 

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2011.07.25

日本映画の変遷

夏になるとパリでは至る所で映画祭が開催される。ひとりの監督作品だけを追いかけたり、ジャンル別或いは俳優別に特集したりとその形態は様々だが、シネマテークのようなシネフィルのための映画館だけでなく一般の普段はメジャーな商業的な作品ばかりを上映してる映画館でも、ちょっと味のある、なかなか見られない名作が放映される。改めてフランスには映画を愛する人たちがたくさんいることを実感させられる。そんな中、「日本文化会館」でも日本映画が2ヵ月間に渡り上映された。題して『日本アートシアター特集――インディペンデントという実験』。

”日本アート・シアター・ギルド”( ATG) と呼ばれる映画会社は他の映画会社とは一線を画し非商業的な芸術的・実験的な作品を制作して日本の映画史にも多大な影響を与えたとウィキペディアには書かれている。そのATGが1962~1992年に発表した作品が監督・ジャンルにこだわらずランダムに網羅されている。日本映画を発見、または再発見するにはまたとないチャンスだ。なかでも新藤兼人や羽仁進・大島渚・黒木和雄などこのATGで育った監督たちの初期の実験的な作品などは興味深い。また”時代感”も、とても重要なファクターだ。60年代には仏のヌーヴェルヴァーグや伊のネオリアリズムなどの影響をはっきりと受けている作品や、70年代の安保闘争による過激思想的作品、80年代はバブル経済のあおりでTVが普及し、その結果、映画産業が斜陽化してより大衆路線を狙った作品など。また90年代になるとATG自体が徐々に弱体化し、92年の新藤監督の『濹東綺譚』を最後に解体していく。その時代の変遷を観ていくのもまた楽しさのひとつだ。

なかでも印象的だったのは『人魚伝説』(池田敏春)は原発誘致にからむ殺人事件を目撃した漁師が殺害され、その復讐にいどむ妻の執拗な姿、あまりにもタイムリーな内容で会場からは満場の拍手が上がるほど。また個人的には『竜馬暗殺』(黒木和雄)の原田芳雄さんの自然体な演技、それは『祭りの準備』(黒木)にも継承されている。アウトローなその姿には現在にも相通ずるカッコよさがある。奇しくも、その映画が放映された当日に原田さんが逝去された!合掌。

”映画は我が青春”を体現してきたジェネレーションのひとりとして、異国の地で味わう日本映画はまた格別な味わいがある。まだ高校生だった頃、フランス映画に並々ならぬ好奇心を抱いていた私は当時、300円をポケットに忍ばせて新宿や渋谷にふらふらとひとりで出かけては「フランス映画特集」を3本くらいまとめて見まくったものだ。あの頃は異常にフランスに興味をもっていた!そして四半世紀以上をフランスで暮らす今、今度は新たに日本という国を再発見する喜びに浸っている。

      写真  パリ日本文化会館で2ヵ月間催された日本映画特集のぼろぼろになったプログラム

vin et culture (2011.07.25)  |  未分類  | 

2011.07.23

「ドレープ」をアートに変えたマダム・グレ

「マダム・グレ」の名前を知ってる人はそう多くはいないかもしれない。しかしオーククチュールの世界ではバレンシアガやサンローラン、ジヴァンシーと並ぶ偉大なるクチュリエールだ。トレードマークの頭に巻いたターバン、きりっとした眼差し、”エレガンス”という言葉がこれほどまでに似合う女性を私は他には知らない。

78年頃、私はサンディカと呼ばれるパリのオーククチュール学校で学んでいた時期がある。マダム・グレは当時まだ健在で、時々学校にやって来ては私たちのような学生にも惜しまずにデモンストレーションをしてくれる。トワルと呼ばれる薄い布をジョリジョリと大きなハサミで切り落とし、その布をマヌカン(ボディーのこと)にどんどん巻きつけて美しく斜めにカーブさせたり無数にドレープさせたりと、その見事な手さばきはもう神業としかいいようのないものであった。オートクチュールというものがまだ世界的に絶賛されていた時代だった。

マリアノ・フォルチュニーやマドレーヌ・ヴィオネといった20世紀を代表するファッションデザイナーたちもプリーツやドレープをテーマにして服を創ってきた。その流れを受け継いでいるのがマダム・グレといってもいい。「私は彫刻家になりたかった。しかし布であろうと石であろうと、それは私にとっては同じもの。」 そんな彼女の言葉にならってか、パリのブールデル美術館では現在『マダム・グレ クチュールの作品』展が開催されている。会場内にはブールデルの力強い彫刻の脇に、ふわりとしたシックでデリケートなドレープのドレスが色とりどりに飾られている。彫刻家とファッションデザイナー、ふたりの偉大なる才能がぶつかり合いながら、その対比は見事だ。素晴らしい展覧会である。

   写真  パリのブールデル美術館を舞台に、マダム・グレのオートクチュールの世界が広がる

  

vin et culture (2011.07.23)  |  未分類  | 

2011.07.14

パリ祭の軍事パレード

恒例の”キャトルズ・ジュイエ”の軍隊パレードがシャンゼリゼ大通りで行われた。「7月14日」を意味するこの日は通称”パリ祭”の名でも知られているが、1789年に革命派がバスチーユ広場を陥落して「フランス革命」が行われた日だ。それまでの絶対王政を倒して民衆の時代に変わった記念すべき日である。

この軍隊行進、全長1910メートルもの道のりをフランスの国威を全世界にアピールするチャンスとばかりに歴代の大統領は得意満面にオープンカーでゆっくりとコンコルド広場に向けて降りてくる。しかし、今年はサルコジ大統領は神妙な顔つき。というのも昨日、アフガニスタンに駐屯中の仏軍兵士が5名、タリバンのゲリラに”カミカゼ”攻撃を受けて殉職したからだ。「軍人という職業は他のどんな職業ともちがう意味を持っている。負傷して運ばれて帰国した兵士たちを今朝、病院に見舞ったが、皆とても若く、フランスに忠誠心を誓い、これからもまた仏軍人として国に仕えたいと言っていた。」と動揺を隠せない様子。

フランスでもかつては兵役は義務付けられていたが、今ではすべて職業軍人だ。シャンゼリゼの軍隊パレードを見ていると外国人部隊や仏海外県の肌の褐色な兵士たちの堂々とした姿に改めてこの国が軍事大国であり、また軍事産業が重要かを知らされる。それは言い変えれば軍事産業を成り立たせるために軍事大国を選んだのか、それとも軍事大国だから、それに付随する産業を発展させたのか?ちょっと今、日本でかまびすしい原発の話に思いを馳せてしまう。

まぁ、いずれにしても今日はパリ祭。恒例の花火大会が今晩は全国各地で開かれる。そして明日からはバカンスに出発という人たちも大勢いるだろう。うるさいことは別にして、もっと楽しく景気よくパーっといきたいものだ。

  写真  パリ祭の軍隊パレードの予行演習をする仏海外県の兵士たち。「HAKA」と呼ばれる、ひょうきんな振り付けは、この日のために考えだされたもの。今年のオープニングを飾る。 (写真 AFP通信)

vin et culture (2011.07.14)  |  未分類  | 

2011.07.03

ヴェルサイユ市で盆踊り

ルイ14世のお膝元、ヴェルサイユ宮殿からほど近い市営の体育館で「盆踊り」が開催された。この日のために日本全国から”盆踊りガールズ”が集められ、総勢20名ぐらいがその見事な踊りっぷりを披露。粋に着流した浴衣も颯爽と、”ハァー”ではじまるおなじみの曲「東京音頭」でまずはパァッと景気づけ。一曲が終わるたびにお師匠さんが壇上に上がり踊り方を指南。すると、それまで指をくわえて興味津々に見とれていたフランス人や地元日本人もその輪に加わり、盆踊りは否応もなく盛り上がっていく。”月が出た出た月が出た~あ、ヨイヨイ”で有名な炭鉱節では女性の和太鼓奏者の威勢のいい姿も披露されて、もう踊りはピークに。会場にはこの日のためにと浴衣姿のフランス人や日仏家庭の子供たちも大勢参加した。

フランスではすでに学校の夏休みもスタートして、丁度昨日はバカンスの第一陣が出発したところ。日本よりも一足早い「お盆」に会場を訪れていた人たちは日本独特の夏の風物詩を楽しんでいた。今年は東日本大震災という悲しい出来事が起こり、亡くなられた方たちへの弔いとして例年以上に故郷のお盆の意味は深い。会場には被災された方たちへのチャリティーのための募金箱も設置され、集められた義捐金は日本赤十字経由で被災地に送られることになっている。

       写真   ヴェルサイユ市営の体育館で行われた盆踊りのシーン

vin et culture (2011.07.03)  |  未分類  | 

2011.07.01

人質のフランス人ジャーナリスト、解放

アフガニスタンのタリバンに人質にとられていた仏国営TV局「FRANCE3」のジャーナリストふたりが29日、無事に解放された。18ヵ月、547日間。その間、昼夜をとわず毎日TVのニュースで”私たちはあなたたちのことは忘れない”とメッセージを送り続けてきたから一般人にもふたりの存在はかなり知られていた。そんなニュースが全国に流れるや否やフランスがひとつになった。国会では左・右と関係なくスタンディングオーペーション、「FRANCE3」の会長は水面下で尽力してくれた関係者全員に深謝、そして何より彼らの家族は喜びの涙に肩を抱き合いながら「絶対に戻ってくると信じていた」と語った。そんな光景を見ていたフランス国民は次々にツイッターやSMSなどで感動を伝へ、ソーシャルネットワークの輪はどんどん広がり、それはひとつのムーブメントにまで発展した。昨年のあのチュニジア革命を思い出す。

フランス時間の30日、AM8時50分、ヴィラクープレーにある軍用基地に降りたふたりは家族や大統領夫妻に迎えられた後、メディアの前に現れた。かなり痩せてしまったものの547日間抑留されていたとは思えないほどのタフな姿。まるで立て板に水のごとく言葉が流れ落ちる様子をみていると、18ヵ月間拘禁されていた反動やジャーナリストとして「報告する」使命感にあふれた現代の若者そのものだった。

「拷問や殺されるといった危機感は一度も無かったが、朝から晩まで何もすることのない毎日、8ヵ月間ふたりとも別々に隔離されていたことは辛かった。・・・そして何よりもガイドとして同行してくれたアフガニスタン人の友人には、今夏フランスで是非ともバカンスを過ごしてもらいたいと心から願っている・・・・」。バカンスをご褒美に、と考えるこのふたりに「日本の記者会見では絶対にあり得ない発言。あァ、やっぱり頭の先から爪の先までフランス人なんだな!」と日本人の私は思った次第だった。

         写真      記者会見に臨む元人質のふたりの仏人ジャーナリスト

vin et culture (2011.07.01)  |  未分類  | 

2011.06.29

「新しい公共」

社会貢献がこれほどまでに私たちの意識を変えてくれる世の中になったことが果たして歓迎されるべきことなのか、それとも政府がやるべきことをやらないで手をこまぬいているから、逆に私たちが強くたくましく社会のために何か役立たねばという気持ちにならざるを得なかったのか? いずれにせよ、もう政府にはよりかからず自分たちが新しい社会システムを創りだしていこうという空気は日本だけじゃなくて今、世界中に広がっている。

『社会連帯経済の現状』(Les Etats Gnereaux de l’Economie Sociale et Solidaire )という、ちょっといかめしい名の集会が先日3日間、パリの証券取引所の建物内で行われた。マイクロクレジットや発展途上国の救済のためのフェアトレード、商品の購入金額の一部がNPOの活動に寄付される”コーズ・マーケッティング”の商品を買うことなど、私たちのまわりには様々な形で社会貢献できるシステムがそろっている。”ジャルダン・ド・コカーニュ”という名前のNPOもそんな社会貢献のひとつだが、何度か私も日本のメディアでも紹介しているのでご存知の方もおられるだろう、社会的弱者を野菜や花づくりで社会復帰させようという取り組みを行っている。

DVの被害者やアルコール依存症、元受刑者など社会復帰が困難な人たちを自立させるには生活保護を支払うことよりも働くことの意義・責任感を取り戻させることからまず始めていかなければならないと思う。このジャルダンでは社会的弱者をカテゴリー別に分けるのではなく、全員がいっしょに同じ条件下で働くことを義務付けている。勿論、労働に対する対価は国が定める最低賃金を毎月支払い正規の労働者と同じ条件で彼らを働かせている。そして自分たちで住居を探し、社会保障も支払っている。それが自立を促す最大の手段だ。

農業という厳しく規則正しい生活と労働で、出来上がったた野菜や花は年間契約している地元住民のところに毎週一回、デリバリーされる。彼らも対価をきちんと支払って商品をうけとり、それを消費することによって社会的弱者の社会復帰の手助けになり、しかも地域経済を支えているという健全な連鎖反応、それがジャルダンが大成功している理由だ。フランス全国105ヶ所、約3000人近い人たちの雇用へと結びついている。

南仏プロバンスのアヴィニョンにあるジャルダンの所長、ジャック・プーリーさんはすらっとしたナイスガイ。トレードマークのハンチングを目深にかぶって精力的に活動を行っている。会場内の至る所に飾られている目にも鮮やかなブーケはすべてジャルダンが制作したものだ。「来年5月のカンヌ映画祭には是非とも会場を飾るブーケはジャルダンに任せてくれたら嬉しいですね!」 ハリウッドの映画スターたちの腕にジャルダンのブーケが飾られる日もそう遠くはなさそうだ。

写真 パリの証券取引所の会場には「人が人を支えている写真」がポスターになっている。所長のプーリーさんとジャルダンのブーケが会場内をかざる。

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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