2013.08.25
社会的弱者の就労支援を目的としたフランスのソーシャル・ファーム『ジャルダン・ド・コカーニュ』に谷垣法務大臣をはじめ法務省・矯正局・更生保護局のミッションが8月24日、日本から視察に訪れた。1991年に設立されたこのNPOは、現在フランス国内に120カ所、約4000人の就労者たちが農作業によって自立を目指している。そんなジャルダンを5年前から日本に紹介している私は、今年2月に東京の「日本財団」の招聘でジャルダンの創始者であり会長のジャンギィ・ヘンケル氏と来日して講演会を行った。今回の大臣一行の視察も、その結果のひとつだと認識している。
パリからおよそ車で西に30分、サンカンタン・アン・イヴリーヌ市にあるこのジャルダンは4,5 haの広大な土地に60種類のビオ野菜が栽培されている。今年は低温・多雨で収穫が危ぶまれていたが7-8月になり高温・快晴と続き今、畑にはズッキーニ・ナス・胡瓜・バジリコ・色とりどりのトマト・・・など旬の野菜がたわわに実り豊作を迎えている。畑には18名の就労者たちの手作業による収穫が真っ最中で、真っ黒に日焼けした精悍な彼らの姿は健康的で実に生き生きとしている。こうして収穫された野菜はジャルダンに会員契約している地元の住民たちへと毎週火曜日と金曜日に配達される。中には自分たちがジャルダンに赴いて買いに来る人たちもいる。そんな住民との直接の触れ合いも社会的自立への第一歩だ。
「フランスは農業大国、でも日本でも最近は農業分野も第一次産業=作る、第二次産業=加工する、第三次産業=販売する・・・こうして第六次産業ぐらいまで広がりをみせて経済波及効果を上げている。当然、就労する人たちの数も多く、農業を核にして就労支援していくことは理にかなっている。」と谷垣大臣。対して「ジャルダンでも就労支援だけではなく研究開発部門を立ち上げて野菜作りから農業エンジニアを育てる教育部門、またジャルダンで採れた野菜を使ったレストランチェーンの設立など様々なプロジェクトが着々と進行している。」と熱い意見が交わされた。
60年代後半、日本で誕生した『提携農家』という形態がアメリカにわたり、それがヨーロッパに伝えられ、今ジャルダンもそれを母体にして展開している。そんな意味では戦後の日本の農業は画期的なものだった。” 農業国・料理文化が花咲く国 ” という共通点も多々ある日本とフランス、その両国の懸け橋になれたら・・・と常日頃願っている私である。
写真 谷垣法務大臣をはじめ日本からのミッションをお迎えしたジャルダン・ド・コカーニュの関係者と私、全員で記念撮影。