2014.04.01

日本酒とセヴィッシュ (フランス版”たたき”) の相性

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「精米歩合が60%以下の白米を使用した清酒を”吟醸酒”といって、とてもフルーティーな香りの清酒です。一方、精米歩合が70%以下の白米と米麹・水だけをを原料とした清酒は”純米酒”と呼ばれ醸造用アルコールや糖類が一切使用されていません。また精米歩合が70%以下の白米・米麹に醸造用アルコール・水を原料とした清酒は”本醸造酒”と呼びます・・・。」日本人を前に日本酒の説明をするソムリエのジェラール・マルジョンさんはちょっと照れくさそう。でも定期的に日本を訪れて日本酒を試飲しているうちに、すっかり虜になってしまった。

フランスのことわざに「味覚と色彩は議論できない」( Le gout et la couleur ne se discutent pas ) という表現があるが、果たして日本酒がフランス料理にマッチするのか? 「好き・嫌い」を通り越して大衆的な日本の割烹料理” たたき ” のフランス版ともいえる” セヴィッシュ ” に合わせてみたらどうか? 今後、フレンチレストランで日本酒をサービスする可能性は? 相性は?  そういったことを探ってみようというのが今回の試飲会の趣旨だ。

目の前に登場したのは、①帆立貝とキャビア・リンゴ ②ラングスティーヌエビとマンゴ ③ボラと生ガキ・アサツキ ④鱸とシトロンキャビア(柑橘類) ⑤鯛と人参・生姜、以上の5種類の魚がそれぞれ生魚で小鉢に用意された。一方、日本酒は①純米吟醸酒の”出雲富士”  ②オーガニックの純米酒”AKIRA”  ③純米酒の”日榮アラン・デュカス・セレクション”  ④特別純米酒の”IZUMOFUJI”  ⑤純米・大吟醸酒の”蒼天伝” の5本。真剣な眼差しで試飲するマルジョンさん。日本人ジャーナリストのひとりひとりのコメントにじっくりと耳を傾けてその相性を探る。「SAKEがもっと一般のフランス人にも定着するように、あえて”日本のワイン”という呼び方でサービスしています。日本では熱燗・ぬる燗など温度による微妙な違いを味わう”文化”が存在しますが、フランスではまだまだその域にまで達していません。でも日本酒は日本料理で・・・そんなタブーを拭い捨てたいです。そう、ワインと和食の相性がぴったりなように!! 」まるで学生同士が意見交換するような教育現場の雰囲気のもと、ほろ酔い加減のいい気分と重なりあって、いつもとはちょっと違う試飲会に酔いしれたのである。

 

写真 アラン・デュカスの右腕的存在のソムリエ、ジェラール・マルジョンさん。アラン・デュカスがセレクトした日本酒はコクのある複雑な味がする。日本版 “たたき” の5品に5種類の日本酒を飲み比べて、その相性を探る。

 

vin et culture (2014.04.01)  |  未分類  | 

2014.03.17

ミラノのドゥオモ

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何年ぶりだろうか? ミラノのドゥオモを訪れた。修復を終えた後の「白亜の殿堂」は、まるで白いレースのように複雑で繊細なゴチック様式のモチーフが辺りを圧倒する。その日はミラノにしては珍しく雲一つない快晴に恵まれて、刻一刻と変化してゆく夕陽に染まるその姿はまるでモネが描いた「ルアンのカテドラル」のように神秘的で美しい。ローマのサンピエトロ大聖堂・セビリアのカテドラルに続く世界三大大聖堂のひとつで、その優雅な堂々とした姿にしばし時を忘れて釘付けになってしまった!! 丁度、目の前の広場ピアッツァ・ディ・ドゥオモには謝肉祭のカーニバルとおぼしき仮装した人たちが紙のコンフェッティを振りまきながらお祭り騒ぎに興じている。” 静と動 “。その対照的なコントラストに、まるでイタリア映画のワンシーンを見ているかのような” 人生の悲喜劇 ” を感じた。これもイタリアマジックなのだろうか?!

 

写真  印象派の絵のように夕陽に輝くミラノの大聖堂は圧倒的な美しさでアピールする。

 

vin et culture (2014.03.17)  |  未分類  | 

2014.03.16

突然、自家用車規制に・・・

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季節外れの初夏のような陽気が続くここフランスでは一年前のちょうど今頃、大雪でパリの街が完全に交通マヒしていたなんて信じられない感じだ。しかし、そのおかげで、先週いよいよ大気汚染注意警報が発せられた。パリ・リオン・ボルトー・ストラスブルグ・・・フランスの大都市の映像がTVに映し出されると、どこも霞みががって何も見えない。さすがにこれはヤバイ! と感じたのは私だけではないはず。金曜日から週末明けまでメトロやバスなどの公共乗り物をすべてタダにして出来る限り自家用車による外出を控えさせようと政府はすぐに行動を起こした。パリジャンたちはパリ市が運営するシェア自転車の”ヴェリーヴ”や電気自動車によるカーシェアの”オートリーヴ”で通勤をはじめた。しかし、多少の改善はみられたものの、相変わらず渋滞に見舞われるパリでは、いよいよ明日の月曜日の朝5:30から車のナンバーを偶数・奇数に分けて制限することが急遽決まった。「政府が決めたことだから仕方ない。でも明日は17日だから奇数日。私の自家用車は偶数だから使えない。まぁ、たまにはこんな制限がなければ車を当たり前のように使うからいいかも・・・」と年配の男性。「困ったわ! パリの郊外に住んでいるんだけど公共の乗り物なんかで通勤したら一時間半もかかってしまう。カーシェアなら3人以上はOKということらしいから近所の人たちと相談してカーシェアするしきゃないわ。」と若い女性。「冗談じゃない。車を使っての外回りの仕事だからこんな制度を一方的に行使しようとする政府は何を考えているのか! 仕事を取り上げるつもりなのか!!」と怒り狂うセールスマン風の男性。そんな国民の声などどこ吹く風。「大気汚染をこのまま放っておいたら健康に被害を及ぼすだけ。国民の健康維持のためには、これしか解決方法はありません!」。社会党のオランド政権、来週末に地方議員選挙が迫っている。そんな選挙戦が繰り広げられている真っ最中に下された判断だった。

 

写真 大気汚染による公害がピークに達した金曜日の午後、パリの街中は普段、自転車通勤などしたことないようなおじさんまでもが慣れない姿でペダルを漕いでいる。勿論、ヘルメット着用も忘れない・・・!!

 

vin et culture (2014.03.16)  |  未分類  | 

2014.02.15

京都の料理人、パリの外務省晩餐会に集結

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これだけの錚々たる日本料理人が集結するイベントというのも海外広しといえどもそう滅多にはないだろう。去る2月6日、パリの仏外務省公館において、ローラン・ファビウス外務大臣が主催する日仏財界関係者60名を招待した大晩餐会が開かれた。その料理を託されたのは京都の老舗名店の名だたる料理人18名。昨年の秋、日本料理がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを祝いファビウス大臣自らが音頭を取って今回のディナーは実現した。団長を務めたのは村田吉弘氏、大正元年に京都に創業して現在は3代目の『菊乃井』のご主人だ。氏は日本の食文化を世界中の人たちに幅広く知ってもらおうと積極的な活動を通じて、今回の世界文化遺産登録にも尽力された。晩餐会で披露された懐石料理の最後を締めくくる「豆腐ケーキ」は、村田さんがパリの有名パティシエと3ヶ月近くも試作に試作を重ねて出来上がった珠玉のようなデザート。それは日本料理とフランス菓子のコラボレーションの可能性を探る試みとしても大変興味深い。古くからの歴史や暖簾にあぐらをかくことなく、常に新しい可能性に向かってどんどんチャレンジしているその姿こそ老舗だからできるもの。まさに歴史に支えられてきた人たちは、モダンさと改革に挑んで常に進化していくことを追求してきたのだろう。そういった意味では京都人とパリ人とでは共通点も多々あるのかもしれない。これからも日仏の料理人が交わい両国の料理がどんどん進化していくことを切に願っている。

 

写真 仏外務省のサロンで全員で記念撮影(前列中央が村田吉弘氏) / 今回サービスされた懐石料理は18名の料理人さんが一団となって作り上げたもの / 地下の外務省の厨房内ではフランス人の料理人と京都の料理人が和気あいあいと和やかなムードで言葉を交わすシーンも/ フランスでは” 成功”の証しと言われる赤い銅鍋が並ぶ厨房で「重くて重くて、とても一人では持ち上げられない!」と悲鳴を上げる京都の料理人さん/ 「トリュフの好い香り! さすがにフランス産は違う」と村田さんは絶賛/ 一方、テーブルセッティングも着々と進む。ミリメートル単位でランチョンを並べる外務省のメートルドテル/ 出来上がりをチェックする京都の料理人さん…….それぞれがそれぞれの様々な思いを胸に、またさらなる新しい料理に向かって進化していってほしい

 

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vin et culture (2014.02.15)  |  未分類  | 

2014.02.14

15歳のオリンピック最年少メダリスト !

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まだあどけなさの残る15歳の平尾歩夢選手が銀メダルを獲得した。待ちに待った日本のメダル第一号である。きっとそのメダルはズシリと重かっただろう。しかも冬季オリンピックで「最年少のメダリスト」という名誉まで手に入れたのだから、これはもう心から拍手を贈りたい。ブラボー・ブラボー!!   スノーボードというスポーツを私はそれまであまり知らなかった。( ごめんなさい!  ) 当然、平尾選手の名前も聞いたこともなければ見たこともなかった。きっとその世界では彼はヒーローなのかもしれないけど、でも日本中の大方の人たちは多分、私と同じように彼の存在などまったく知らなかったのではないだろうか。でもこのすがすがしい笑顔の平尾選手のおかげでスノボも一躍ブレークしそうだ。空高く舞う彼の姿、素人の私が見ていても他の欧米の強豪選手と比べても格段にずば抜けて美しかった。軽やかに、でもしっかりと着地する安定感、それは彼が抜群の運動神経の持ち主であることは容易に分かる。しかし聞くところによれば彼は練習の虫、練習に練習を重ねてその身体能力を体に覚えさせていったという。報道記事によれば平尾選手は4歳の時から父親と二人三脚でスノボに取り組んでいた。そしてお父さんが教えてくれるのが嬉しくて技術をどんどん吸収していったのだとか。「スノーボード歴は10年くらいだけど、20年くらいの練習量をこなした」というお父さんの言葉もすごい。さぞかし教えがいのある息子だったのだろう。その結果として今回のオリンピックに臨んで見事にメダルを勝ち取った。「自分の力を試すために」「良い成績を残して一躍有名人になろう」・・・みたいなノリだったに違いない。結局はスポーツというのは「自分のため」にやるものであり「国を背負って」やらなければならない選手は本当に気の毒だと思う。それがオリンピックという大舞台でのメダルの明暗を分けるという結果に終わったのも本当に皮肉な話である。

平尾歩夢選手のさわやかな笑顔。おめでとう!!   ( 写真 産経ニュース)

vin et culture (2014.02.14)  |  未分類  | 

2014.02.08

東京に雪が・・・

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東京に雪が降った・・・と娘が写真を送ってくれた。節分を迎えて立春が過ぎたというのに春の訪れはいつになるのだろう。今年の冬は日本は例年になく寒い日々が続いているな! と思っていたが2月は「一年でもっとも寒い月」。だから、これからもっともっと冷え込むのだろう。一方フランスでは年が明けてからずっと悪天候続きで、しかも暖冬。中でもフランス西部のブルターニュ地方では先週からゲリラ降雨が止まず、どこも床上浸水が続出している。何とも地球がおかしい今日この頃だ。

写真  娘が住む神楽坂のアパートの中庭に積もった雪景色

 

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2014.01.26

青野川のほとりで

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写真 下賀茂温泉を流れる青野川のほとりで。丁度、沈みかけた夕陽が目にまぶしい

 

南伊豆の下賀茂温泉を訪ねた。東京から「伊豆踊り子号」に乗って約2時間、下田から更にバスで20分ほど揺れながら山間地帯に向かって走っていくと、あちこちに出湯の湯けむりが噴き出している。そのひとつ青野川のほとりには丁度、水仙の可憐な花が咲き乱れていた。この辺りは一年中温暖な気候で2~3月ごろには 「 河津桜 」 と呼ばれる早咲きの桜や菜の花で辺り一面ピンクと黄色に染まるのだという。その頃にまた是非とも訪れてみたいものである。

” 太平洋に面した伊豆半島最南端のこの町は昔から海上交通の要所として、また山を瀬に入り組んだ自然の良港という地形を生かし漁業や農業の盛んなところ。特に海岸線はジオパークエリアの海岸が約57kmありイセエビや貝類が豊富 ” だとパンフレットには書かれている。その謳い文句のとおりこの辺りは複雑な入り江や沖に浮かぶ大小さまざまな島々が日本古来の風光明媚な景色を楽しませてくれる。特に今がシーズンだという「金目鯛のしゃぶしゃぶ」をいただいたが、その脂ののったコリコリとした新鮮な食感は筆舌に尽くしがたいほど美味しかった。そしてもうひとつ私にとって新鮮だったのは青野川のほとりを散策する人たちがすれ違い際にかならず「こんにちは」とあいさつしていくことだ。失われつつある日本の原風景・そして日本人としてのたしなみ。そんなものを取戻させてくれた旅に大いに癒されたのだった。

vin et culture (2014.01.26)  |  未分類  | 

2014.01.01

2014年、フランス共和国大統領の祈願

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大晦日の20時、大統領の恒例の「年末の祈願」がTVで全国的に生中継された。今年は失業者数を年末までに減らすことを公約に掲げていたから国民はかたずをのんでオランド大統領の演説を一語一句耳を澄ませて聞いていた。しかしその公約は守られなかった。むしろ増加の一途を辿っているのが現状だ。「雇用創出のために企業税や社会保障費を軽減する代わりに企業も積極的に雇用を増やしてほしい」「2013年は想像以上に不況が深刻で重税に重税を重ねて国民には負担を強いた。そのことは大統領としても認識している。しかし今こそ国民が一致団結して行動を起こさない限り不況は乗り越えられない」「人種差別に対しては徹底的に妥協しない共和国としての姿勢・価値観を貫いていく」「EUの一員としての誇りを持ち続けてほしい」といったところがスピーチの内容だ。これをもって納得する国民がはたしてどれだけいるだろうか・・・・。

写真  大統領官邸、エリゼ宮から生中継で演説するオランド大統領。相変わらず彼のスピーチは心に響いてこない。そう思うのは私だけだろうか?

 

vin et culture (2014.01.01)  |  未分類  | 

2013.12.30

『 リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル 』で誕生日を祝う !

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師走が誕生日の私はつくづく ” しあわせ者 “だと感じている。というのもフランスではクリスマスや大晦日のサンシルヴェストルと呼ばれる日は一年で一番の大ご馳走を食べる日。それに誕生日が加わるとなれば、もう12月だけでも3日間はスペシャルディナーにありつけるという訳だ。フランス料理が大好きな私としては、まさにそれは最高のプレゼント。ではそんな貴重な日には一体何を食べようか? いろいろと試案した末、親友の料理人フレデリック・シモナンに「リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル」を作ってもらうことにした。

リエーヴル(野兎) はジビエ料理のひとつだが下処理や準備に手間がかかるという理由で最近の料理人たちからは敬遠されていた。しかし、ここ数年前からシェフ仲間の間ではこの古典料理をどう解釈するか、現代風にアレンジするにはどうしたらよいか? などと見直され再びブームが到来している。レシピは大きく分けてふたつ。” ペリゴール風 “と呼ばれるものはフォアグラを詰め物にしたもので、もうひとつは”ポワトウ風”といって肉がドロドロになるまで煮込んだものだ。肉を柔らかくするためにリエーヴルの頭を銃で撃ち抜いたあと体内に血をキープしておく。それを赤ワインや赤ワインヴィネガーでマリネしたあと血を使ったソースで調理する。ではフレデリックのリエーヴルとは? 丁度そのふたつをミックスさせたものだから”シモナン風” とでも呼ぼうか。頭の先から尻尾まで骨抜きにしたあとフォアグラを詰め込みハーブやポルト酒、オリーヴオイルでマリネにする。もう一匹のリエーヴルの内臓を取り出して、それを更に詰める。こうして準備ができたリエーヴルを紐でしばり、88℃で約12時間火を通す。ソースもジビエのフォンと血を煮込んだものに最後一滴シャルトルーズ酒を隠し味に加える・・・。何とも手のかかった一皿だ。しかし彼はいとも簡単に「美味しいものを食べてもらうには、そんなことはへっちゃら」と軽く受け流す。

” ア・ラ・ロワイヤル “、すなわち” 王様風 “と名付けられているからには、やはりノーブルな一皿には違いない。ヴェルサイユ宮殿の主でもあった太陽王ことルイ14世 は大のリエーヴル好きで知られていた。ただ当時は歯ブラシというものが存在していなかったから、この王の歯は虫歯と歯槽膿漏でほとんど歯の機能をしていなかったといわれる。そんなことから王のために何時間も煮込んでドロドロに溶けるほど柔らかくしたリエーヴルを作ることは王の名にかけてもお抱え料理人にとっては至上命令だったのだろう。それがこの皿が誕生したいわれだ。

そんな古典料理を今こうしてニュージェネレーションシェフによって受け継がれ、新しい解釈で現代風によみがえらせる。フランス料理の底力というものを見せつけられた最高の誕生日を祝うことができたのだった。

 

写真 たった一本のろうそくがバースデーケーキを照らしてくれる。こってりしたリエーヴルのソースには柑橘系タルトの酸味がぴったり。フレデリックの皿には余分なものが一切ない。マカロニとトリュフ、このふたつがリエーヴルをより引き立たせてくれる。ミルフィーユ仕立てのチーズは雌羊のトム、パンデビスと抜群の相性だ。フレデリック、ご馳走さまでした!!

 

 

 

vin et culture (2013.12.30)  |  未分類  | 

2013.12.09

『CARTIER』展―その様式と歴史

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世界に名だるフランスの宝石商「カルティエ」。1847年の創立から1970年代までの約600点のジュエリーを時代順・様式別に展示した展覧会がパリのグランパレで開催されているので観に行った。インドのマハラジャが注文したダイアモンドの首飾りやイギリス王室の27個のティアラ、中でもエリザベス女王の戴冠式のためのティアラや今回の展覧会のために女王自らがプライベートコレクションを数多く貸し出してくれたというエピソード まで、世界中のコレクションが宝石を通して社会ムーブメント・時代感・躍動の歴史といったものを感じさせてくれるとても貴重な展覧会だ。

なかでも特に目を引くのは「職人の手仕事」の精巧さだ。フランスという国がいかに職人の国であり、彼らの質の高い仕事を守り続けていくためには世界中の王室や金持ちとの交流・外交といったものを下支えに、いかにしたたかに生き伸びていくことを余儀なくされてきたか。そんなフランスの” 国策” といったものも垣間見れて興味深い。

カルチエはルイ・カルチエの時代から今日に至るまでファミリーカンパニー色が色濃く残っており、 途中” 豹 ” コレクションをデザインしたジャンヌ・トゥーサンというデザイナーはいたものの、そのデザインソースはあくまでもカルチエ一族による「カルチエ・スタイル」が底辺にあることが窺い知れる。そんな良き時代――19世紀は富みが労働者を守り続けていた時代だったからこそ、こうして後世に伝えられる芸術作品が今でも残っているのだろう。

そんな余韻を残しながら豊かな気分でグランパレを後にした。すると表通りではアフリカ人の集団が「アササン・アササン!」(人殺し) と気勢を上げているではないか。丁度アフリカ首脳会談がパリで開催されている最中だったが、コンゴ共和国の大統領が黒塗りの公用車で通過するや否やその集団は執拗に追っかけていく。本国では民族同士の殺戮が繰り返されている。540万人とも言われる民族の虐殺。19世紀のかつての繁栄の象徴もこうした植民地がもたらす富が下支えになっていた。しかし、そんな時代がもう今となってはずっと遠い昔のものであることを痛感した出来事だった。ネルソン・マンデラ元大統領死去の丁度、前日のことだった。

 

写真 「カルチエ」展の会場内。ダイアモンドをちりばめたティアラ、マハラジャが注文した大粒のイエロウダイアのネックレス、宝石以外にも時計や装飾品など常に時代の先端を行くファッションが人気を呼んでいる。

 

 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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