2014.07.29

ノルウェーという国のしあわせの形

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ノルウェーではフィヨルドを見ようと、オスロからベルゲンまで鉄道の旅にでた。丁度、夏休みということもあり実に子供がたくさん乗っている。結構イクメンしているパパの姿も目立つ。子供専用車両というものもあり、何と託児所まで備わっておりシッターとおぼしき女性までいる。この車両には当然子供連れ家族がたくさん乗っているわけで、そこいら中に子供が右往左往している様子は、まるで動物園さながら。しかし、みんな優しそうに子供たちを見守っている。一方トレッキングに来た中高年グループは楽しそうに笑いながらはしゃいでいる。その姿は実にパワフルそのものだ。バックパック姿の若者たちも自転車で移動するのだろう。ヘルメットを片手にサイクリングの服装をしている。列車が駅に到着するたびに駐輪場がみえる。きっとレンタル自転車のシステムもしっかりしているのだろう。

各自各様、こうしたインタージェネレーション間のつながりがごく自然な形で行われていることに、何かこの国の幸せな感じが漂ってくる。超福祉国家の成功例かもしれない。消費税24%、高いな・・・と思わずにはいられないが、でもそれでもこうしてみんながゆったりと生きられる社会を作っていく上では当然の支出ともいえる。政治家も40代を中心とするジェネレーションがしっかりと国をけん引しているし、女性の意見も十分に反映されている。そして” どんな国家を作っていったらいいのか? ” といった未来への見取り図もしっかり出来上がっている。改めて「成熟した大人の国」というイメージを抱いた。

勿論、一年のほとんどが雪と氷で覆われ極寒の冬をじっと耐えるように生きている彼らは忍耐強く、勤勉な国民性であることは想像に難くない。夏のほんのわずかなシーズンに開放的になっている彼らを見て” しあわせそう! ” なんて勝手に言う私自身も軽すぎるかもしれない。でも、明らかに外国人として傍観する私がそう思えることは、きっとほかの外国人観光客も同じ思いを抱いているに違いない。森と湖に囲まれた自然の美しい国。国土のほとんどが山林地帯だから人が住めるスペースは限られている。しかし、そんな中で人が幸せそうに生きられる余裕みたいなもの。日本もこうした北欧三国のような生き方を選択してもいいのでは・・・。そんなことを考えさせられた旅だった。

 

写真 鉄道列車の車中で見かけた子供たち。何て可愛らしいの!! 登山電車での旅は途中風光明媚なスポットは停車してくれる。雪解け水が大きな滝となってる姿は圧巻だ。

 

 

vin et culture (2014.07.29)  |  未分類  | 

2014.07.28

「フィンランド」食いしん坊の旅 3.―SPIS

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最後の晩は「SPIS」という18席あまりの小さな店に行った。これぞ、まさしく” 今のノルディック・キュイジーヌ! ” と思わせてくれる店である。正直いって何を食べているのかよく分からない! すべての食材を一度デフォルメして食物の持つ従来の姿とは似て非なるものへと変化させているのはとても興味深い。そして味も日本人好みのとてもデリケートで繊細なもの、量に関してもしかりである。以前、パリの某有名シェフが日本のやはり一流料理人とコラボした時のプレスランチに行ったときのこと、臨席していたパリの一流ジャーナリストが「何を食べているのか全く分からないので美味しいのか美味しくないのかコメントできない・・・」と言っていたのを思い出した。まさに今の私もまったく同じ境地、コメントのしようがない。しかし厨房ではシェフのジャコさんをはじめ、ふたりの若い料理人が集中して料理に取り組み、そしてメートルドテル&ソムリエを兼任するオーナーのジャニさんは心から誠意のこもったサービスをしてくれる。改めてこの国の人たちがとても勤勉であり、また努力家であることに脱帽する。そしてデザインの国フィンランドを象徴するかのような器の色・柄・形と感性が統一されていることも評価してあげたい。パンも自家製パンをひとつひとつ丁寧に頃合いをみながら真心こめてにサービスしてくれる。アペリティフにはフランス産ガイヤックの亜硫酸無添加の発泡酒を変形グラスでグイッといただく豪快さ! /フェンネルの入ったライ麦のチュイルはちょっと硬いお煎餅のよう/じゃが芋・人参・ポロねぎ・根セロリ―を木製皿に盛った前菜/ヤギのミルクとおぼしき(?)スープ、フィンランド産シリアルを混ぜ合わせた一口ポタージュ/塩バターに更に粗塩をのせて/自家製のそば粉のパン/季節野菜のクーリソースを使ったサラダ/胡瓜のピクルスと玉ねぎのピクルス、ピーナッツ、保存食を使ったベーシックスタイル/別バージョンの自家製パン/ほぼ生に近い帆立貝と甲殻類で出汁をとっエマージョンソース/口直しのインゲン豆のソルベ/一皿目のデザートはホームメイドケーキに羊のフレッシュミルクのクリーム/リュバーブのケーキにベリー系のアイスクリームを添えて/コーヒーにはミニヤルディーズが付いてくるが”レゴ”のブロックを皿に見立てて、その上に盛っているプレゼンが面白い

こうした街場の小さなレストラン、きらりと光る個性を持った料理人たちが切磋琢磨しながら、そして住人達に愛されながら存続していく町、それがヘルシンキの底力のような気がする。

 

SPIS     Kasarmikatu26    00130 HELSINKI  FINLAND / tel: +358 45 305 1211      www.spis.fi

 

vin et culture (2014.07.28)  |  未分類  | 

2014.07.28

「フィンランド」食いしん坊の旅 2.―NOKKA

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2日目の晩はヨットハーバーに面するかつての倉庫とおぼしき赤レンガ造りの建物を改造した店「NOKKA」を訪れた。店の入れ口には「ヘルシンキメニュー」と書かれたステッカーが貼ってある。これは、マリアーナ・ネリマルッカさんという食ジャーナリストの話によれば、ヘルシンキ市内で約20軒ほどセレクトされた店にだけ許された表記で、フィンランドの旬の食材を使い、フィンランド料理の伝統を尊びつつ現代風にアレンジしたお料理を提供する店という定義だそう。メニューにも「V.I.P=Very Important Producers」や「Very Confidential Producers(非常に信頼できる生産者)」といった表現を使うなど、料理人と生産者の相性というものを最大限アピールしている。特に凍てつく冬の間は燻製・塩漬けといった保存食が中心のフィンランドだが、今回は夏の真っ最中、市場には様々なベリー系フルーツや茸、フレッシュなサラダ・ハーブと想像以上の豊富な野菜にはびっくり。「旬の食材が短いフィンランドでは、メニューもシーズンごとに変化に富んでいますよ! 」とNOKKAのサービスをしてくれた女性が教えてくれる。

6皿のメニューはこんな感じ。突出しはガスパッチョ風トマトの冷製スープ/前菜は淡水魚・鯉科の魚を燻製にして作ったちょっとこってり系のムース、ライ麦をベースにした固めのチュイルとホースラディッシュのスライスと共にいただく/魚の白子の入ったサヤエンドウのグリーンポタージュ/メインは子羊、弱火で蒸し煮にしたものとサーロインの部分を低温調理でほんのりと火入れしたもの、その柔らかさには目を見張る。カリフラワーと大麦をミックスさせた付け合せに肉汁をソースに/フィンランドのヤギのチーズ/お口直しのシャーベットは洋ナシの味、真っ白く冷凍にした御影石の小皿は時間と共に色が緑色に変化していく/真っ赤な苺とヨーグルト、フィンランド産の牛乳を使ったアイスクリームとメレンゲ。

ヘルシンキの町は短時間の間に「食の街」へと進化を遂げている。首都圏という地の利を生かしてフィンランド中の良質な生産者の食物が手軽に入手できるようになったことも一因だろう。だからこそ、作り手たちの意識も変わりつつある。みんな意欲に燃えている。生産者・料理人と” みんなでレベルを高めていこう ” 、そんな意識が芽生えていることを痛感した。ちょっと、ここ当分は目が離せない!

 

NOKKA  Kanavaranta  7F  00160  HELSINKI  FINLAND / tel: +358 9 6128 5600    www.ravintolanokka.fi

 

vin et culture (2014.07.28)  |  未分類  | 

2014.07.26

「フィンランド」食いしん坊の旅 1.―OLO

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いま、北欧の料理人たちが熱い。デンマークの「NOMA」が世界のベストレストランに選ばれて以来、近隣諸国の若手シェフたちも触発されているのだろう。次から次へと自由に伸び伸びと料理にチャレンジしている。それに加えて国が国策として観光業に力を入れているから、おのずと料理にも力が入る。そんなサポートを受けているせいか、どこも活気に満ち溢れている。という訳で今回は「食いしん坊」の旅に出かけてみることにした。ところが7月中旬からサマーホリデーに入っているところがほとんど。ちょっと残念だったが、それでも今回ディナーに訪れた「OLO」はなかなか興味深い店だ。フィンランドの首都、ヘルシンキの中心、港を前にした最高の立地。ガストロノミーのほかにもビストロも隣接している。店に入るや否やオープンキッチンでは大勢の若いスタッフたちが入れ替わり立ち代わり厨房とテーブルの間を行き来している。料理的には分子化学料理を実践しているが、その様子はまるでラボにこもっているかのよう、みんな料理に集中している。出来上がった皿は料理人自らが抱えて客の前に現れ、ひとつひとつ説明しながらサービスしてくれる。自分で作ったものだから思い入れも強いのだろう。サービス人と料理人がそれぞれ役割分担・・・という形態も、この国ではなくなりつつあるのかもしれない。

料理は全部で16皿。小さな鉄鍋に発酵させたパン生地を寝かせ、焼きあがるのに15分ぐらい。出来上がった熱々のパンも料理の一皿として登場するのにはちょっと参ったが、それだけパンにもこだわりたいのだろう。トマトと苺+ヤギのチーズにサラダ菜/マッシュルーム、ライムギのオートミール/コールラビ、人参、シイタケにチーズと野菜の盛り合わせがサービスし終わった後に、かのパンが焼きあがる。塩バターと一緒に熱々を食するのだが、一度に全部食べないと下げられてしまう。(ちょっと満腹になってしまう!!) メインは柔らかい子羊、タルタル風とあるが周りはほんのわずか火であぶってある。ポロねぎ、ホースラディッシュ、魚のハラワタ、オニオン、イラクサにホームメードのヤギのチーズを添えてとあるが、なかなか力のこもった一皿だ。次に魚はヒラメのグリル、キュウリと発酵させたインゲンでコーティング。仔牛とビーフの2種類の肉はとても柔らかくスライスしたビーツがほんのり甘い。デザートはリュバーブのアイスクリームとチョコレート/ヨーグルトのムースとサワーミルクのシャーベット、ウイキョウを乾燥させて飾りに。最後のミニ菓子はリカーがほんのりと香ばしい溶けてしまいそうなマシュマロ感覚のチョコレート、クランベリーを塩キャラメルで味付けしたものはちょっと日本の梅干しを連想してしまう。これでコースメニューが終わりを迎える。我ながら胃袋に「ご苦労さん!」と言ってあげた。

OLO   Pohjoisesplanadi 5   oo170  HELSINKI  FINLAND / tel: +358 10 320 6250   www.olo-ravintola.fl

 

vin et culture (2014.07.26)  |  未分類  | 

2014.06.30

ジャージー島のセント・マシュー教会

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ロンドンから飛行機で小一時間、ジャージー島に晩年のルネ・ラリックが内装を手がけた教会があると知って、友人と訪ねてみた。ラリックといえば19~20世紀のフランスを代表するガラス工芸家で数多くの宝飾品も残している。日本では箱根にあるラリック美術館がよく知られている。この教会の正式な名称は『セント・マシュー教会』と呼ばれているが、通称” ガラスの教会 ” として島中の人たちに親しまれている。もともとミルブロックという町の住民が「手軽に誰でもが来れる教会」として1984年に建てたものだが、その当時はまだラリックのガラスの祭壇は置かれていなかったという。その後、イギリスのドラッグストアチェーンBOOTSの創始者でもあるジェス・ブーツの死後、彼の奥さんがラリックに頼んで教会の内装を修復してもらったのが1934年のことだから、アールデコ様式の影響を多分に受けている。まっすぐに直線を描いた十字架、白とブルーを基調とした透明感のある乳白色のガラスがラリックらしく、とても美しい。時折、島の人たちとおぼしき人たちがやってきては祈りをささげている。そんな風光明媚な小さなこの島に、きっと並々ならぬ愛情を抱いていたラリックの晩年の姿が重なってみえる。

 

写真 美しく修復された教会の内部、ガラスをふんだんに使った祭壇は外の光や照明をうまく取り入れて、モダンでシャープな印象を与えてくれる。

 

vin et culture (2014.06.30)  |  未分類  | 

2014.06.22

『祇園 ささ木』 & 『マンダリンオリエンタル・パリ』 日仏ふたりの料理人フェア

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京都・パリ、最も予約の難しい店といわれる『祇園 ささ木』と『ホテル・マンダリンオリエンタル・パリ・シュールムジュール』。その料理人、佐々木浩とティエリー・マルクスのふたりのシェフによる創作料理フェアが6月19日、パリのマンダリンオリエンタルで一足早くメディア関係者向けに開催された。お題は「京都の夏・パリの夏・ふたりの夏」。( 一般のお客様には今年の10月21-22日の二日間、ランチとディナーのフェアが開催される。食材も秋の旬野菜を食べてもらう「京都の秋・パリの秋・ふたりの秋」という趣向)

今回、佐々木さんが特にこだわったのは「夏の物をいれました。そして” 出汁 ” をどうしてもフランス人に味わっていただきたい。そこで普段店で使っている漆のお椀も、夏限定の” 平椀 “、色も” 銀色 ” という京都らしい風物詩を物語るものを持参しました。」先付・椀を佐々木さんが、お向こうはマルクスさん、そしてサプライズは何と言っても佐々木さんオリジナルの牛肉をたっぷり入れた” 韓国風おこげごはん “、最後はふたりの創作デザートという構成だ。同席したフランス人ジャーナリストたちも「日本料理とフランス料理がお互いに拮抗することなく、味も見た目も自然と調和がとれていることに驚きを隠すことができない!」と絶賛だ。ふたりは同じジェネレーション、料理の基本をしっかりと叩き込んできた経歴をもつ2つ星シェフ、そして親日家・親仏家という共通点が多々ある。言葉というものを超えて味のバランスがぴたりとひとつにまとまったところは、やはりふたりの料理人の水準が同じ域に達していることの表れだ。引き出しの多いシェフ同士、そのふたりがどうやって無駄なものをそぎ落とし、本質だけを残すか。そんな感性を垣間見るエキサイティングな料理フェアだった。

 

写真 佐々木浩&ティエリー・マルクスとカリスマ性たっぷりの料理人。ふたりの創作料理メニューは「ブロッコリーのムース、オマールエビを入れてトマトの酸味で/ 薄くず仕立て、ナスの揚げ煮、あわびのやわらか煮、生姜の香りで/ 薄くスライスした烏賊のポワレ、サフラン風味の米のクリーム/ お寿司三色、鱸の京都西京焼き/ 牛肉の墨仕立て、ベットラ―ヴのラビオリ、西洋わさび/京抹茶 ほのかな甘みでジャパニーズモナカ/りんごのコンフィ、バニラクリームを添えて 」

 

vin et culture (2014.06.22)  |  未分類  | 

2014.06.14

岩見沢・札幌のショートスナップ

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新得・帯広・岩見沢・札幌とマラソンのように駆け抜けてきた今回の旅。最後は岩見沢でシンポジウムを開催。武蔵野美術大学 造形学部 基礎デザイン学科主任教授の宮島慎吾先生とご一緒して岩見沢駅を見学した。構内には身障者による製品を販売するショップ、”フラット” がある。身障者のネットワーク26団体のうち17団体で運営されているこのショップ、手芸品やワイン、野菜などが並ぶ。中でも「キジカレー・キジ釜飯」のパッケージがカワイイ!! と、興奮気味に手に取られ、しかもお買い求めまでされた先生はさすがデザイン専門家!! 本当にしゃれたパッケージデザインだ。こうした一つの製品として優れたものは自然と欲しくなる。それがユニバーサルデザインの基本だ。

JR岩見沢駅も煉瓦とガラス・鉄(かつての鉄道線路を使った廃物利用) で出来た斬新な建築で、よく見ると赤レンガのひとつひとつには献金した人たちの名前がアルファベットでさりげなく彫られている。そんなところにもセンスがキラリと光る。初めて訪れる町の” 顔 ” ともなる駅、それがカッコイイとそこに住む住民たちの民度も高いのでは・・・という気持ちにさせてくれるから不思議だ。やはり人にやさしいデザイン・人に心地よいデザインというものは、人々の心をオープンにしてくれる。

 

写真 JR岩見沢駅の煉瓦とガラスと鉄の建築の前で宮島先生とヘンケルさんのツーショット、赤・透明・黒のコントラストが美しい!  札幌市内の行列ができるラーメン屋さん「けやき」で味噌ラーメンにご満悦なヘンケルさん、まるで哲学者が屋台のラーメンをすすっているそのミスマッチぶりがおかしい。サッカーワールドカップで日本チームのユニフォームをどうしても買いたいと自分のラッキーナンバー17を選ぶと店員が長谷部誠選手の番号です!! と興奮気味、「ハセベっていったい誰?」 いま東京で働く娘も通訳の助っ人として今回参加した。

 

vin et culture (2014.06.14)  |  未分類  | 

2014.06.14

『共働学舎』―北海道新得町でチーズづくり35年

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シンポジウムの翌日8日は、北海道の新得町にある『共働学舎』というチーズ工房を訪ねた。工房といっても酪農から搾乳、チーズ製造などすべての生産過程を一カ所で行っており、働いている人たちは知的障害者や引きこもり、自閉症といった何らかの問題を抱えている人たちがほとんどだ。今から35年前、一軒のプレハブ小屋からスタートした荒地も、今では96,4haの広大な土地は酪農のほかにも有機野菜栽培や手工芸なども行なう牧場に成長した。年間約2億3千万円の売り上げは生活に必要な経費はほぼ自分たちの手で賄っている。またここで生産されるチーズは” 山のチーズのオリンピック”とよばれる国際コンクール ( 急傾斜の過酷な土地など生産に不利な条件で良質のチーズをつくる生産者を対象としたコンクール ) で見事金メダルに輝いた。「生産量よりも品質を大切にしてきた生産体系を作ってきたことが良かったのかもしれない」と共働学舎の創立者でもあり経営者の宮嶋望さんは言う。

共に働き・ともに生きる「自労自活」をモットーに掲げたチーズ作り、生きづらい・行き場のない人たちが必要とするものとはいったい何なのか? そう捉えてみると、ここにいる彼らがメッセンジャーに見えてくると宮嶋さん。「いらない人間なんていない! 」そんな心の叫び。北海道の雄大な大自然のなか、厳しい環境にもめげず汗水流して働く仲間たちの姿。こうした仲間が一緒にいれば怖いことなんかない。生きること・労働することを通して彼らは人生を学び成長してゆく。そんなパイオニア精神にみちあふれた宮嶋さんの笑顔がひと際まぶしく輝いている。

 

写真 『共働学舎』35周年報告会であいさつするヘンケルさんと私。予定されていたトレッキングも悪天候で中止、急きょ、参加者全員でフリートーキング。北海道らしいゆったりした大自然の中、牧草を食む牛たちもゆったりしている感じがする。まるでスイスのシャレーのような建物で生活する彼らは共働学舎の誇り。牛が人家に逃げ込まないように綱を張り巡らしている。牛の記憶の中には” 綱に触ると感電する” とインプットされているが勿論、電流は流れていない。チーズ工房で説明してくれる宮嶋さん、ラクレットと呼ばれる溶けるチーズの熟成庫。鬱蒼とした森と整然と整えられた牧草地帯、その周りに人家が並ぶ。最後は全員で記念撮影。

 

vin et culture (2014.06.14)  |  未分類  | 

2014.06.13

『 ソーシャルファームジャパン・サミット in 新得 』 開催

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去る6月7日、北海道のサホロで “『ソーシャルファームジャパン・サミットin 新得』――仏ジャルダン・ド・コカーニュに学ぶ就労支援シンポジウム” と題されたシンポジウムが開催された。社会的弱者の就労支援を農業とデザインでおこなう仕組み作りを展開していこうと、1991年にフランスで設立され現在では130ヶ所の実績と歴史で成功を収めている仏NPO法人「ジャルダン・ド・コカーニュ」(Jardin de Cocagne) を紹介。創設者であり活動家のジャンギィ・ヘンケル氏、そしてジャルダンを2009年から日本に紹介している筆者、ソーシャルファームジャパンの理事長、炭谷茂氏、武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン科主任教授、宮島慎吾氏、社会福祉法人豊芯会理事長、上野容子氏、NPO法人共働学舎副理事長、宮嶋望氏、そして今回のシンポジウム開催に向けて尽力してくださったNPO法人コミュニティシンクタンクあうるず専務理事、菊池貞雄氏という強力なメンバーで第一回目のサミットが行われた。

当日は予想を上回る150名の就労支援事業者が日本全国から参加。NPO法人、社会福祉法人、民間企業などに加えて行政、ジャーナリストとあらゆる分野の人たちが集まる盛大な催しとなった。また” Social Firms “のロゴマークの付いた製品を全国的に展開・販売していこうと様々な商品ブースも設けられて大いにアピールした。非正規雇用・ワーキングプア・高齢者・難病患者・引きこもりの若者などなど、日本における社会的弱者の雇用はまだまだ課題が多く、ひとりでも多くの人たちを就労させるためには” 第三の職場 ” が必要であることを訴える。その一歩として社会的企業= Social Firms の日本における認知度が今後、急速に進められることを願っている。そのスタート地点として、今回第一回目のサミットが北海道で開催されたことは象徴的であると同時に、それに参加できたことを大変誇りに思う。

 

写真 「ソーシャルファームジャパン」の強力なメンバーが全員勢揃いして記念撮影。ヘンケルさんと私の基調講演、サミット開催を提案し、実現に向けて尽力してくださった菊池さん。参加者全員による懇親会には地元の食材を使った料理が並ぶ―新得漁業組合サホロサーモンのお造り、新得産山わさびを添えて。トムラウシジャージー牛のほほ肉スモークとコンビーフ、宮下農場産サヤアカネのサラダ。” Social Firms “のロゴマークの付いた社会的企業が作る製品が会場を訪れた人たちに大いにアピールした。

vin et culture (2014.06.13)  |  未分類  | 

2014.05.31

パンの修行を始めました !

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オーブンから焼きたてのパンが出来上がった瞬間、熱々のバゲットを籠に詰める作業にはコツがいる。「Keikoだったら日本人だから、そうだね、太平洋の海原で座禅を組んで集中している感じをイメージして、チャッチャッチャッと素早く手でつかむんだよ。床に落っことしちゃだめだよ!!」。パン職人歴25年のゴントランさんが丁寧に教えてくれる。それでも指先が熱い、熱くて持てない。おもむろにハンカチを取り出して、それに手をくるんで掴もうとすると転げ落ちるように笑う。元々エンジニアになりたくて勉強を始めたゴントランさんは、故郷のアフリカ、ガボンでのごたごたがあり勉学を断念せざるをえなかったという。あまり語りたがらないから、こちらも深くは突っ込まない。と、いうこともあるのだろうか、新米の私にも懇切丁寧に理路整然とパンの作り方を教えてくれる。とても陽気な人で、でもパンのこととなると一家言を持っている。そんな人を私はとても尊敬する。

我が家の近所のパン屋さん、かれこれ25年のお付き合いのあるジャンクロード・ルーロウさん。パリジャンらしく、ちょっとおしゃれな彼は、当時はほんの小さな一角でパン屋をはじめた。やがて隣の店も彼の店に。そして更にその隣りもサロン・ド・テに改装して大成功を収めた。昼・夕時ともなると外まで延々と人が列をなす。そう” 行列のできるパン屋さん” だ!  そんなルーロウさんは早朝のレジを担当し、そのあとは奥様が引き継ぐ。夜までお客相手にパンを売り続けている。「一日15時間働いてもへっちゃらよ!」という彼女の言葉通り、本当によく働く。客のひとりひとりの名前を覚え、その客がどんなパンを好むかなども全部把握している。これぞプロ中のプロ。彼女は生粋のフランス人というよりはちょっと、どこかアラブ系の雰囲気が漂っている。でも買いに来る客には、そんなことはどうでもいい。おいしい熱々のパンが食べられるならそれで満足だ。地下の工房ではフランス人の職人たちに交じってガボン人や、あらたに日本人(!?)が手となり足となり働いている。まさに今のフランスを象徴する” ミクシテ・ソシアル”。雑多な人種が協働することの素晴らしさ!。今日もまた健全な汗を流しに行ってきま~す!

写真 パン職人のゴントランさん、「”トラディッション”は生地をこねた時のつなぎ目を上に向けて焼くこと。そうすると、そのつなぎ目が開いてパンが美味しそうに膨れるんだよ。そのラインが直線に近ければ近いほど美しい!」。こんがりと焼きあがったパン、これに勝るものはない。

vin et culture (2014.05.31)  |  未分類  | 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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