2015.03.30

春を告げる「靖国神社」の桜

sakura3sakura6   sakura1

桜前線真っ只中の日本列島、こんなにも美しい光景は世界広しといえども、ここ日本だけのものではないだろうか。大勢の外国人観光客もこの時ぞとばかりに大挙して押し寄せてくる。観光立国としての地位を不動のものにしている今日の日本だが、こうした自然の美しさは他の何物にも代えがたい日本が世界に誇れるもの。ひと際輝いている。

今年は終戦70年ということもあり、靖国神社にお花見に行った。境内には薄いピンク色の染井吉野をはじめ、山桜・寒桜・富士桜・緋寒桜・枝垂桜・ウコン桜など600本の桜が植えられている。これは明治3年、木戸孝允公がここに初めて染井吉野を植えたのが始まりだと説明書きにある。その中には東京の桜の開花を観測する標本木もあり、それが5~6輪咲くと気象台から東京の桜の開花が発表されるのだという。すでに標本木も満開を迎えて準備万端整ったような感じだ。

それにしても、こんな儚い可憐なピンク色の花に一喜一憂する日本人の心。老若男女、この日ばかりは誰もがそんな桜の花を前にうっとりとしている。そんな繊細な気持ちをいつまでも絶対に絶対に失わないでいてほしいと切に願った今年のお花見である。

 

写真  東京「北の丸公園」のお堀に見事に咲き乱れる桜の花。靖国神社の境内には染井吉野が誰もが手の届くところに咲いている。日本人に混じって外国人観光客が大勢訪れている。

 

vin et culture (2015.03.30)  |  未分類  | 

2015.02.02

フランス版『ミシュラン2015』が今日、発表

Nouveaux étoilés 2015 (2) (533x800)

例年よりも一ヶ月前倒しで、今日フランス版『ミシュラン2015』が発表された。4337軒の店を網羅、そのうちの609軒が星付きだ。(1つ星503軒、2つ星80軒、3つ星26軒) 今年の3つ星に輝いたのは、パリの「ルドワイヤ」とサヴォア地方の「ラ・ブイット」の2軒、前者は、昨年7月1日に新しくオーナーになったシェフのヤニック・アレノ、後者は1976年にルネ&マリールイズ・メイユール夫妻がサヴォア地方にオープンしたホテルレストランで1990年より彼らの息子のマキシムが加わり、現在は父親とふたり二人三脚で厨房に立つ。店名はサヴォア方言で「小さな家」という意味らしいが、その名の通り家族経営の温かいおもてなしで、すでに世界中のジェットセット族を魅了している。

ヤニック・アレノは昨年の「ゴー・ミヨー」で”その年のベストシェフ”に選ばれたばかりで、まさに今回の3つ星獲得とダブルの勝利だ。古典フランス料理をベースにしている料理人で、ここ数年前からテロワール・パリジャンをコンセプトに、パリ近郊の生産者から食材を仕入れて地産地消に努めている。またフランス料理の神髄でもあるソースをもう一度見直そうと、ビーツやセロリー、古代野菜のパネ、あるいはイベリコハムといった食材を70℃で48時間、真空調理。そこから抽出された液体をブイヨンに見立て「味覚のテキスチャー 」と呼びながら塩分濃度・鉱化・発酵など様々な角度から挑戦を試み、新しい味わいのソースに次々と挑戦。彼の厨房はちょっとした科学実験のラボ(?) 化している。「まるで醸造家が自分好みのワインを創るように自分なりの味わい深いソースに挑戦したい」とヤニックは言う。

ミシュランといえば料理人のバイブルとまで言われている。一時はレストラン覆面審査員によるミシュランの内実を暴露して「ミシュラン離れ」という現象が起こったが、しかし昨年はフランス版だけでも15万部を売り上げた。世界中のグルメがフランスに来るときには必ず携えて旅行するといわれるミシュラン。腐っても鯛、いや腐ってもミシュラン、まだまだその影響力は計り知れないようだ。

 

写真 今日、パリの外務省ではローラン・ファビウス外務大臣自らの音頭でミシュランフランス版の発表が行われた。左から「ラ・ブイット」のオーナーシェフ、マキシム&ルネ・メイユール親子、ミシュランのマネージャー、「ルドワイャン」のオーナーシェフ、ヤニック・アレノ

 

 

vin et culture (2015.02.02)  |  未分類  | 

2015.01.08

『Je suis CHARLIE』―パリで起こったテロリストによる襲撃事件

705536-000_par8067626

「Je suis CHARLIE」(シャーリーを支持する)―そんな文字が書かれたプラカードを高々に掲げている人たちの姿がソーシャルメディアを通して全世界中を駆け巡った。今朝、パリのど真ん中で起きた左翼系週刊新聞「シャーリー・エブド」本社ビルがテロリストによって襲撃され少なくとも12人が犠牲となった。なかでも新聞のブレインとして活躍していたイラストレーター4人が全員射殺され、そのニュースを知った一般市民たちのショックは頂点に達した。この左翼系新聞は痛烈な風刺画による社会批判が有名で、特にイスラム教徒モハメッドをユーモアを交えながら批判する記事を何度か掲載したことでテロリストの標的になっていた。犠牲者を哀悼するために、どこからともなく自然発生的に集まった民衆たちの輪はパリ・リオン・マルセイユ・トゥールーズ・ボルドー・・・フランス全国の都市を埋め尽くし、その数は35,000人余りにも達した。オバマ大統領をはじめ英国のカメロン首相・ドイツのメルケル首相・イタリアのメンツィ首相などからも哀悼の意が寄せられ、その連帯感はどんどん広がっていった。アメリカのケリー官房長官はその流ちょうなフランス語によるメッセージが好感度をアピールしていた。言論の自由を求め「Je suis CHARLIE」の輪はこれからどんどん世界中を覆い尽くすことだろう。

写真  パリのレパブリック広場で寡黙にプラカードを掲げる女性。   ( La LIBERATION )

 

vin et culture (2015.01.08)  |  未分類  | 

2014.12.07

筏場のわさび田

momiji2

かつてフランスで大ヒットしたジャン・レノと広末涼子が共演した異色サスペンスコメディー、そのタイトルが「WASABI」といった。そう、すでに国際化されているこの言葉、パリでもロンドンでもNYでも「SUSHI」とセットになっているといってもいいだろう。人々の口を楽しませ食卓に花を添えてくれるものにこそ真の食文化交流の価値がある。こうしてひとり歩きしながらも、ここまで日本の食文化が世界中に根付く例も少ない。外国人シェフたちが一番欲しい食材でもある。

紅葉真っ只中の静岡県中伊豆、筏場のわさびの郷を訪れた。見渡す限り棚田風のわさび田が延々と続いているその光景は日本の原風景そのもの。周りは鬱蒼とした森に囲まれており生物多様性をリスペクトした静かな光景はまるで別世界にいるようだ。筏場のHPの言葉を借りるならば「この地でわさびが栽培されたのは延享2年、1745年頃、上狩野村(現在伊豆市湯ヶ島)の農家に生まれた板垣勘四郎が静岡の安部郡有東木村から苗を譲受け、天城山岩尾のガラン地に植えたのが始まり」と伝えられている。その土地・土地には風土や気候に適した農作物が収穫されるが、この辺りも筏場川からの湧水を利用してわさび田が作られた。小川のせせらぎのようにその水が階段から流れ落ちる様は、まさに人間の労働力の賜物だ。現在では中伊豆地区は栽培面積、生産量とも日本全国一を誇っている。

フランス人の食卓には、いわゆる「辛い」ものと「熱い」ものはあまり並ばない。だから激辛で汗を流しながらフーフーいう光景は見かけない。辛いといえば唐辛子のように口中を刺激するタイプやカレー・マスタード(西洋わさび)のように味付けの基本となるものがほとんどだ。だからわさびのように最初口に入れた時にはそれほどでもないけれど、次の瞬間に鼻孔から頭にかけて激震が走るという辛さに彼らは驚き、新しいサンサション! (刺激) を見出したのだろう。今、フランス人シェフたちの間では、その「鼻に抜ける辛さ」がブームのようだ。しかし、残念なことに市販されているものの多くはチューブに入った超辛、それはすでに辛さの次元をとっくに超えた宇宙的未知の辛さだ!

冒頭の「WASABI」という映画に話を戻せば、広末涼子演じる初々しい一見か弱い日本人女性、しかしイヤイヤ、そのマンガチックなオチャメぶりはさすがのジャン・レノも舌を巻く・・・。実はこの映画の仏語のサブタイトルは” La petite moutarde qui monte au nez “ という 。訳すと「ツ~ンと鼻にくる可愛い激辛なマスタード」―――まさにWASABIとはピリっと利いたエッセンスの代名詞。そんな的を得たタイトルに、思わずフランス人のエスプリを感じるのである。

 

写真  紅葉が美しい「筏場のわさび田」は実に平和的な静謐な時間が流れていた!

 

vin et culture (2014.12.07)  |  未分類  | 

2014.11.20

冬の風物詩、「シュ~クルット」

HD-17825 R1HD17822FB-L'Alsace-2-10-14

パリも冬のシーズン到来、パリジャンが好む冬の風物詩といえばレモンをキュッと絞った生ガキにシャブリのような冷えた白ワインをグイッと飲み干すのもおつなものだが、イヤイヤそれに負けないぐらいの人気者と言えば「シュークルット」だ。フランス東部のアルザス地方に古くから伝わる名物料理だが、お隣のドイツでも「ザワークラフト」と名前を変えて食されている。白キャベツを千切りにして樽の中に寝かせ、そこに粗塩をまぶしながらジュニエーヴルと呼ばれるねずの実を入れる。蓋をしたら重石をのせて約3週間から一ヶ月間、そのまま発酵させる。ドイツでは塩の代わりにライン川沿いで採れた白ワインで発酵させるためかアルザス産のものより、やや甘味がかっている。しかし中国でもシュークルットが作られていた・・・という話がある。それは紀元前3世紀にさかのぼる。万里の長城がはじめて建設されたときに、そこで働いていた労働者たちが持ち寄ったキャベツが冬の間中、雪の中で凍り、それが春になり少しずつ雪解けと共に自然に発酵していったものを美味だと感じた人がたくさんいたという。それ以来キャベツの発酵は中国でも食されるようになったと言われる。

そんなシュークルットをパリでも美味しく食べさせてくれる名店がある。その名も「アルザス」。シャンゼリゼ大通りの老舗だが2年半もの工事が終わり、このほど大々的にリニューアルオープンした。そんな新生アルザスでは従来のシャキュトリー(豚肉加工品)のシュークルットに加えて魚類のシュークルットも揃えている。手長海老が鎮座している姿はちょっとひょうきんで愛らしい。パリのシャンゼリゼに来る機会があれば、是非とも立ち寄ってほしい店である。

写真 従来のクラシックな「シュークルット・ロワイヤル・オ・クレマンダルザス」29,10€ と「シュークルット・ドュ・ポワソン」28,90€ どちらもボリューム満点だ。

『L’ALSACE  CHAMPS ELYSEES』 年中無休24時間営業

39, Avenue des CHAMPS ELYSEES  75008 Paris  tel: +33 1 53 93 97 00  www.restaurantalsace.com

 

vin et culture (2014.11.20)  |  未分類  | 

2014.11.10

「画狂老人卍―HOKUSAI」展、パリで大ブレーク

北斎1北斎4北斎5北斎2北斎3

今、パリの国立美術館グランパレで『HOKUSAI』展が開催されている。入場券をネット予約できる今日の美術館事情ではあるが、たまたま時間が空いたので急に思い立って行ってみることにした。すると何と延々長蛇の列。一時間ほど並んでやっと中に入れたものの人・人・人。凄い! 浮世絵という性格上、会場内を暗くしているせいもあってか人と人がぶつかりあう。それでも小さな手帳に北斎の人物画を一生懸命に模写する画学生とおぼしき女性や、食い入るようにその細密画を見つめる老紳士、今風のファッションに身を包んだ若い子たち・・・、こんなにもHOKUSAIが” スーパースター ” だったなんて驚きだ!! しかし、その人気ぶりには納得。浮世絵師としてマンガ家として、そして最後には絵筆を握り肉筆画帖も含めて生涯3万点にも及ぶ作品を残したといわれる北斎は、まさに「画狂人」という言葉がぴったり、フランス語でいうところの” fou de peiture ” (絵の気狂い!) だった。その巧みな画法・緻密なテクニックは3世紀を経た今でも実に生き生きとしている。

生涯において30回も改号した彼は、それぞれの時代・時代に新たな境地に辿りついている。そして最後には北斎はこんなことを語っている。「70歳までに描いたものは本当に取るに足らぬものばかりである。73歳になってさまざまな生き物や草木の生まれと造りをいくらかは知ることができた。ゆえに、86歳になればますます腕は上達し、90歳ともなると奥義を極め、100歳に至っては正に神妙の域に達するであろうか。100歳を超えて描く一点は一つの命を得たかのように生きたものとなろう。」――80歳以降の北斎は長い人生を一歩ずつふみしめるかのように、制作したほとんどの絵一図一図に日付を記したとある。そしてこんな言葉を書き残した。「天我をして五年の命を保たしめば 真正の画工となるを得(う)べし 」。――もうあと5年間長生きできたら、本当の画工になることができたものを。謙虚な画人だった。

 

写真  グランパレの入口に張られた『冨嶽三十六景』より” 神奈川沖浪裏 “のポスター、富士山を背景にブルーと白の砕け散る波頭を描いた浮世絵は北斎の代表作。また” 赤富士 “で知られる『凱風快晴 』も人気が高い。1817年、56歳の時に描いた『大達磨揮亳の予告黒摺引き札』が階段の踊り場に。人々の生活感を『北斎漫画』として描いた彼は、その日常のひとコマひとコマシーンをスクリーンに見立てた壁に投影する、という斬新な見せ方も今回の展覧会の目玉だ。

 

vin et culture (2014.11.10)  |  未分類  | 

2014.10.28

パリと京都がひとつになった日・・・・

 ささき270ささき266ささき268

ささき269ささき271ささき292

本番間際、厨房内のふたりのコラボレーションは否が応にもテンションが高まっていく。そんな二人の周りを取り囲むようにして日本人・フランス人の料理人たちが入り交じり、それぞれがそれぞれの役割を分担して粛々と料理をこなしてゆく。その阿吽の呼吸はみごと。

ささき256ささき259ささき290ささき291ささき257ささき258ささき255

「クレマンティーヌ(みかん)の細胞壁の中に形成されるペクチンは酸味をちょっと加えて掻き回しながら空気を入れてあげるとゼリー状に固まるんだ。こうして出来上がったジュレはすごくさっぱりしていてる。帆立貝の中に含まれるミネラルとすごく合う。隠し味にちょっと醤油をたらしてみた。」茶筅を器用に操るマルクスさん、ご満悦の様子。

 

ささき247ささき253ささき249ささき267ささき248

「滅茶苦茶シャイなマルクスさん。僕とは絶対に目を合わせないように静かにお話になられる。でも京都で僕の料理を召し上がっていただいたとき、食べるのがすごく早くてエネルギッシュ。食べることに貪欲なところが何かとてもうれしかったですね。」佐々木さんの一挙手一投足、すべてが絵になる。今回、器もすべてパリの物を使った。

ささき274ささき221ささき252ささき276ささき254ささき250ささき241ささき251ささき245

女将さんもお嬢さんも、この日のために京都から駆け付けてきた。「子供のころから中央市場には大将に連れてってもらいました。父親であると同時に、ひとりの職人としてとても尊敬しています。」「市場に行くとみんなから可愛がられてね、小遣いもらえるんや。だから、すごくうれしそうにしていてね・・・・。」親ばかはいつになっても変わらない。

 

ささき244ささき235ささき236ささき260ささき264ささき275ささき278ささき277

フランス人のサービススタッフたちの真剣な眼差し。大将の一語一語をノートにびっしりと書き込む女性、メートルドテルが盛り付けの特徴や酒との相性を丹念にチェックし質問している。厨房のデシャップの左右には料理班、サービス班・報道陣と、それぞれが真剣な眼差しで皿の盛り付けに集中している。厨房がひとつになった瞬間だ。

ささき1ささき111ささき115ささき114ささき11ささき9ささき116ささき113ささき112

「フランスの食材は日本のそれと比べると味も食感も力強いですね。でもフランス料理にはそれが適しているのかもしれない。日本料理にはしなやかさとか繊細さが欠かせません。それは、もしかしたら食材からくるものなのかもしれないですね。」「ウナギは日本の物より大きくて身がしっかりしていますね。大の男が3人で格闘しなければさばけない。これをどうやって調理したらいいのか? 最後の最後まで悩み考えあぐねた末、素晴らしい結果をもたらした。それは、厨房にガスコンロを持ち込み、炭に火をつけ串刺しにして炭火焼にすることだった。」

ささき246ささき282

「ウチで働いてくれはる若い子たちはみんな可愛いですわ。まるで自分たちの子供のよう。」目を細める女将さん。こんな優しさこそが京都の店が繁盛している理由だ。そんな優しさをパリでも発揮してくれた今回のフェア、和装姿でお客様をひとりひとりおもてなししてくれたその姿は普段の京都の店とおなじ空気がながれる。

ささき223ささき285ささき225ささき286ささき227ささき228ささき230ささき229ささき279ささき231ささき281ささき233

―――『パリの秋 京都の秋 ふたりの秋』をテーマにした献立―――

澪に合わせて Amuse-bouche

吹き寄せ      FUKIYOSE  l’air d’automne

帆立貝 みかん、ジュレ・ア・ラ・ミニュット St Jacques,clementine, gelee instantanee

ふたりの秋     L’automne a quatre mains

白味噌仕立て オマール海老、リュタバガの含め煮 Soupe MISO blanc,Homard breton, rutabaga

天然鰻 炭火焼 カラメルソース、黒ゴマソース  Anguille sauvage charbon, sauce caramel,sauce sesame noir

パリのすき焼き  SUKIYAKI de Paris

ちらし寿司      CHIRASI SUSHI

甘い宝石         Pele-Mele de douceurs

マロングラッセ  Marron glace, cassis

秋のささやき  Mignardises

 

『祇園ささ木』〒605-0811 京都府京都市東山区八坂通大和大路東入小松町566-27 tel: 075-551-5000

『MANDARIN ORIENTAL PARIS  “SUR MESURE Thierry MARX “』251 Rue Saint Honoré, 75001 Paris   tel:01 70 98 78 88

 

 

『祇園ささ木』の大将、佐々木浩さんには壮大な夢があった。世界中のグルメが集まるパリという大きな食の舞台で包丁を握りたい。一方『ホテル・マンダリンオリエンタル・パリ』の総料理長、ティエリー・マルクスさんは大の親日家。道場に通いながら日本の屋台をはしごするのがたまらなく好き。そんなふたりの料理人を引き合わせてみたらどうなるだろうか・・・。今から一年ほど前、佐々木さんから突然、そんな相談を持ちかけられた。「どうしてもパリでやってみたい!」と。いったい、どうしたらいいのだろう? フランス人シェフとコラボレーションしたらどうだろうか? それだったら誰と組ませたらいいだろうか?

こうして、ふたりのコラボレーションが実現した。去る10月21・22日のこと。パリのマンダリンオリエンタル・ホテルのメインダイニング『シュール・ムジュール』でランチ・ディナーが開催された。3人の若手二番手を引き連れて京都からのはじめての遠征。佐々木さんがいかにこのコラボに対して熱い思い入れがあるかがこれでも伝わってくる。到着した日の翌朝、開口一番に「食材が見たい」と厨房へ。集められた食材を口にしながら段々と顔色が曇ってくる。「力強いな。弾力がある。味も濃い。手ごわいな。」と顔に書いてある。でも料理と食材は切っても切り離せないもの。その土地で採れたものから料理は生まれてくる。だからこそ私は常々フランス産の物、特にお客様がフランス人の場合「いったい皿の上に何が乗っているのか? 日本から特殊な食材を持ち込み奇をてらった料理を作っても何も感動しない。それなら誰もが毎日口にする食材を佐々木さんがどんなふうに調理するのか? 佐々木さんが作るとこんなに変わるんだ! という驚きと感動を与えて欲しい。」とお願いした。引き出しのたくさんある佐々木さんにとっては面白いチャレンジになった。メニューもぎりぎり最後に決まったものがいくつかあった。

マルクスさんは上野の道場の帰り道、屋台のラーメンやたこ焼きをつまむのが大好きだ。パリにいると”吉野家の牛丼” が時々無性に食べたくなる時がある、とまるで子供のように目を輝かせる。毎年一ヶ月間は夏休みを過ごしに日本にやってくる。伊根を訪れた時、漁師が船で直接家に辿り着けるようなこんな家が欲しいと現在物色中だとか。彼の日本歴は長い。料理人たちとの交流も深い。「トマトはトマトとしての可能性をとことん引き出すために、まずはトマトに向き合うこと。トマトにキャビアをのせて付加価値をつけてサービスすることではない。そんなことを日本の料理人から学びました。」

そのふたりが今回テーマにしたのが『パリの秋 京都の秋 ふたりの秋』だった。「京都の秋は”赤”をイメージしています。逆にパリの秋は”黄”。緑から黄色に変わるグラデーションをイメージしました。」色から入っていった今回の料理フェア。普段、お客様の前でデモンストレーションしながらのカウンターサービス形式の「祇園ささ木」スタイル。それにこだわった佐々木さんのために、今回は特別にホールにデモンストレーションスペースを設け、すき焼きや手巻き寿司を披露した。そんな佐々木さんの周りにお客さんが自分たちのテーブルから次々に立ちあがり、そして群がってきたのは想像に難くない。佐々木さんもそんなお客さんにこたえるかのように、いつものように実に生き生きと楽しそうに料理をしていたのだった。

 

 

vin et culture (2014.10.28)  |  未分類  | 

2014.09.30

阿寒湖のマリモ

まりも1

世の中には不思議なものが存在することにびっくりさせられる。北海道の阿寒湖に生息する「マリモ」もそのひとつだ。先日、北海道を訪れる機会があり阿寒湖まで足を延ばしてみた。阿寒湖と言えばマリモと学校では教わった。しかし、実際にマリモとは動物なのか、それとも植物なのか? テニスボールのように真ん丸でクルクル回るからひょっとしたら動物なのでは・・・?と思ってしまう。その可愛らしさもまた格別だ。大きいもので直径30cmにまで達したものもある。しかし実際に近くで見ると表面は細かい糸のようなで藻で覆われており泡状の細かい粒が密集している。太陽の光を取り込んで栄養素を蓄え成長するかられっきとした植物だ。毬のように丸い球状の藻だから「マリモ」と名がついたのだろうか。世界中で生息するらしいが、こうしたきれいな球状をしているのは阿寒湖とアイスランドのミーヴァトン湖だけだという。しかし、かつては阿寒湖では4ヶ所の生息地が観察されたが現在では2ヶ所のみだという。絶滅品種として国の天然記念物として保護しようという活動が進められている。また世界遺産としての申請もしているという。こんなに可愛らしい「マリモ」を一日も早く全世界中の人たちに知ってもらうためにも、早く世界遺産に登録されることを願う。

写真 チュウルイ島にあるマリモ展示センターの水槽に密集する可愛らしいマリモたち。

vin et culture (2014.09.30)  |  未分類  | 

2014.08.31

日本のフィヨルド?

野尻湖17

朝6時半、野尻湖の湖畔から眺めた景色。まるで真空状態の中に置かれた宇宙飛行士のように無重力な感覚。孤高の画家といわれたスイスのフェルディナント・ホドラー――19世紀後半、フランスのナビ派の影響を多分に受けた彼が描いていたような風景画を連想させてくれる光景に目を奪われる。目の前には、ただただ氷のように静まり返った湖面が、後ろに連なる山々の稜線だけを鏡のように映しだしている。時折、鳥の声だけが耳に聞こえてくる。こんな早起きな鳥とはいったい何鳥なのだろうか?日本にもこんな大自然が残っていたなんて! ふと安堵する。この辺りは早朝と昼間の温暖の差が激しいのだろうか。こうして時間が刻々と経つにつれて目の前の湖面には霧のように靄が立ち込めていく。幻想的な光景に、ついこの間、訪れたノルウェーのフィヨルドを思い出す。あのときも夏、ほんのわずかな夏の大切な太陽を人々は愛でていた。しかし、この日本では暑い日中とは打って変わって、ひやりとした冷気が辺り一面をグレートーンに包んでくれる。昨夜から降り続いた雨が早朝には止み、ほんの一瞬だけこんな幻想的な世界を創り出してくれた。何というしあわせだろう!

 

写真 野尻湖のガラスのような湖水に写る幻想的な風景。

 

vin et culture (2014.08.31)  |  未分類  | 

2014.08.31

わっこ揚げ

野尻湖11 images

夏の最後の日、長野県にある野尻湖を訪ねた。妙高山と黒姫山を背景にして、まるで蝶々がひらひらと舞っているかのような優雅な姿をしたその湖は、日本の原風景をそのまま額縁に切り取った大自然がとても美しい。「信州しなの」のそばの産地としても知られており、丁度、辺り一面には白・ピンクとそばの花がシーズンを迎え、今か今かと収穫を待ちわびている。地元の農家の人の話では、ここ数年前から減反政策でお米からそばへと転換を余儀なくされている農家が多く、そばの生産量も劇的に増えている。真っ青な田圃の隣には真っ白なそばの花が風に揺れている光景は息をのむほどに美しい。信濃町では「わっこ揚げ」というちょっと変わった揚げそばが有名だ。ゆでる前のパスタのようなユニークな形をしているが、これはそばをクルクルと丸めて輪状にしてから凍らせたもので” 凍り蕎麦 ” とも呼ばれる。それを乾燥させてから油で揚げて熱々をそのままいただく。酒のつまみとしても美味しい! 旅はその地方の特産品を食すのが一番だが、大好物の蕎麦をいただく楽しみのほかに、こんなユニークな食べ方に舌鼓を打ったのであった。

 

写真 「わっこ揚げ」の一皿、そばの花が丁度見ごろの信濃町の畑の風景。

 

vin et culture (2014.08.31)  |  未分類  | 

< Previous | HOME | Next >

    • Les Amis de l’ Esprit Ali mentaire
    • 隣人祭り

    • あぁ、8月のパリ!
    • 「貴女は勇気ある人です。フランスは勇気が好きです。」--シモーヌ・ヴェイルの死
    • あぁ~~~ファルニエンテ ! 南仏プロバンス流ライフスタイル
    • 見よ! “BUFFALO BIKERS” たちの熱い視線を・・・・・
    • アーチストがパティシエとコラボしたら?

    • 2017年8月
    • 2017年7月
    • 2017年6月
    • 2017年5月
    • 2017年4月
    • 2017年2月
    • 2016年12月
    • 2016年11月
    • 2016年10月
    • 2016年9月
    • 2016年8月
    • 2016年7月
    • 2016年6月
    • 2016年3月
    • 2016年1月
    • 2015年12月
    • 2015年11月
    • 2015年10月
    • 2015年9月
    • 2015年8月
    • 2015年7月
    • 2015年6月
    • 2015年4月
    • 2015年3月
    • 2015年2月
    • 2015年1月
    • 2014年12月
    • 2014年11月
    • 2014年10月
    • 2014年9月
    • 2014年8月
    • 2014年7月
    • 2014年6月
    • 2014年5月
    • 2014年4月
    • 2014年3月
    • 2014年2月
    • 2014年1月
    • 2013年12月
    • 2013年11月
    • 2013年10月
    • 2013年9月
    • 2013年8月
    • 2013年7月
    • 2013年6月
    • 2013年5月
    • 2013年4月
    • 2013年3月
    • 2013年2月
    • 2013年1月
    • 2012年12月
    • 2012年11月
    • 2012年10月
    • 2012年9月
    • 2012年8月
    • 2012年7月
    • 2012年6月
    • 2012年5月
    • 2012年4月
    • 2012年3月
    • 2012年1月
    • 2011年12月
    • 2011年11月
    • 2011年10月
    • 2011年9月
    • 2011年8月
    • 2011年7月
    • 2011年6月
    • 2011年5月
    • 2011年4月
    • 2011年3月
    • 2011年1月
    • 2010年12月
    • 2010年11月
    • 2010年10月
    • 2010年9月
    • 2010年7月
    • 2010年6月
    • 2010年5月
    • 2010年4月
    • 2010年3月

    • 未分類 (206)
  •  
  • 2025年6月
    月 火 水 木 金 土 日
    « 8月    
     1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    30  

  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

Copyright © 2010 vin et culture, Inc. All Rights Reserved.