2015.12.28

www.laliste.com 政治と料理の切っても切り離せない関係

パリ8

ナポレオン皇帝が料理にはまったく無関心だったことはよく知られている。食事に費やす時間は10分、15分、日本人にも負けず劣らずのせっかちと見受けられる。しかし彼はタレーランという超一流な外交官を配し、その見事なまでの美食外交でフランスの国益を守り通したといわれる。フランスでは歴代の大統領と料理は切っても切り離せない関係にある。理由は簡単。それはフランスは農業大国であり、テロワールと呼ぶ各地各様の産物を守ることは経済活動にもつながるというストレートな戦略だ。しかし、もっと本音を言えば選挙のためには農民の票が欠かせない・・・。毎年2月に行われる国家イベントの農業博覧会では大統領が先陣を切って乗り込んでいく姿が毎年TVで放映される。

では歴代の大統領の食欲がどんなものであったのだろうか?ドゴール将軍は戦時中、スープが毎回の食事には欠かせないものだったから国民食でもあるスープをこよなく愛していたという。質実剛健さで知られていた将軍、スープの大衆性をアピールしたかったのだろう。一方、同じスープでもジスカルデスタン大統領は「黒トリュフ入りVGE (ジスカルデスタンの頭文字) 風スープ」なるものをポール・ボキューズが彼のために特別に作り、今でも彼の店ではメニューに載っている。さすがに貴族出身の大統領だけあってスープも庶民とは一味違う。ミッテラン大統領は”国家秘密”として長いこと国民には知らされていなかったが、しかし公然の秘密として大統領に就任した当初から癌を患っていた。だから食べることにはあまり関心がなかったのかもしれない。その代わりに文化芸術には非常に寛大でグランルーブル計画のもとにガラスのピラミッドを作ったり新凱旋門・国立図書館など様々な建築を残していった。親日家としても知られていたシラック大統領はテット・ド・ウ゛ォーをはじめとするビストロ料理には目がなかった。歴代の大統領のなかでは最も健啖家だ。続くサルコジ大統領は料理にはあまり関心がなかったようで――何かとナポレオン皇帝と比較されていたが、公式晩餐会でもワインを省略したり食事時間を45分に短縮するなど農業大国の面目丸つぶれ。そして現在のオランド大統領。かつての”内縁の妻”がストイックなダイエットを彼に強いていただけに大好物のチーズを取り上げられていた。「チーズかデザートのいずれかにしなさい! 」という訳で、彼はしぶしぶチーズをあきらめざるを得なかったのだとか。しかし、そんな大統領のもとで現在外務大臣を務めるファビウス大臣は”ゴーシュ・キャビア” (社会主義という左翼人でありながら高級食材の代名詞”キャビア”を食らう人たちを揶揄する表現) の代表格で、フランス料理文化を世界中にアピールしようと自らが音頭をとって『LA LISTE』と名付けた次世代型グルメサイトの宣伝に余念がない。世界中の名店1,000軒を網羅したこのランキングガイド、エントリーした店数としては断トツに日本のレストランが最も多いという結果と相成ったのである。

アジア最果ての国で、これだけ世界中から注目される店が密集している国とは一体どんな国なんだろう? なんとなくミステリアスな期待感を抱かせるが、まさに観光立国として外国人を受け入れるには今が追い風なのではないだろうか!

 

写真 COP21(気候変動枠組み条約第21回締約国会議)の議長国フランスの代表を無事に終えた直後のファビウス大臣、翌日に控えているシリア問題を話し合う会議出席のためにNYKへ。当初予定していた外務省でのプレスコンフェレンスにはあいにくビデオ参加となってしまった。(写真 大澤隆)

 

 

vin et culture (2015.12.28)  |  未分類  | 

2015.12.06

フィリップ・ハルスマン『私をおどろかせて! 』展

パリ5

ディーン・マーチンとジェリー・ルイスといえばアメリカのコメディの黄金時代を代表するコンビ。そんなふたりが高らかにステップを踏んで踊っている一枚の写真。スピーディーに絡まりあう身体、その躍動感はまるでカメラのフィルターから飛び出してくるようだ。アメリカ人の写真家、フィリップ・ハルスマンの1951年の作品だ。

ラトビアのリガに生まれた彼は、15歳の時に父親のカメラに興味を持ち、以来、家族のポートレートを撮り続けているうちに人間の顔の様々な表情に魅かれていったという。この展覧会ではマリリン・モンローやサルバドール・ダリ、ジャン・コクトー、アルフレッド・ヒッチコックなどの一連の有名作品の他にも、”ジャンポロジー”と題してイギリスのウィンザー公夫妻をはじめオードリー・ヘップバーン、ジョン・スタインベック、リチャード・ニクソンなどなど、各界の錚々たる人たちにジャンプしてもらうという思いもかけない決定的瞬間をとらえた写真がなかなか面白い。そんなところにハルスマンの茶目っ気ぶりが伝わってくる。

『VOGU』や『LIFE』の表紙などアメリカを代表する写真メディアのトップを走り続けてきたハルスマン。その写真は今、21世紀を迎えた我々が見ても強烈なパワーで訴えかけてくる。そんな彼の『おどろかせて! 』と題した展覧会がパリの”ジュウ・ド・ポウム美術館”で開催されている。パリを訪れる機会があったら是非とも訪ねてほしい。

 

写真 「手のひらをラケットにみたててボールを打ち返すスポーツ」を語源に持つ”ジュウ・ド・ポウム”は、テニスがブルジョアのスポーツだとすれば庶民のスポーツとして13世紀に遡るとされている。そんな名前の付いたパリ市の美術館、チュイルリー公園の中にある。PHILIPPE HALSMAN “ETONNEZ-MOI ! ” 2016年1月24日まで www.jeudepaume.org

 

 

vin et culture (2015.12.06)  |  未分類  | 

2015.11.28

パリが一つになった日

パリ3

パリの同時多発テロから2週間がたった11月27日(金)の朝、パリ市内にある「アンバリッド廃兵院」では犠牲者を弔う哀悼式が行われた。オランド大統領をはじめとする新旧すべての閣僚がその政治の右・左に関係なく着席し、その重々しい雰囲気の中で約10分間、130名の犠牲者の名前と年齢がひとりひとり読み上げられた。その後、オランド大統領がただひとりテロリストに対する憎しみ・国家として屈しない断固たる態度を表明する内容のスピーチを行い、最後は国歌のマルセイエーズで締めくくられた。

厳戒態勢が敷かれるパリ市内、しかし犠牲になった人たちに哀悼の意を捧げようとパリ市内では至る所、各自がそれぞれの想いで自由・平等・博愛精神を意味する赤・白・青のトリコロールのフランス国旗がたなびいていた。

今年の1月、テロリストによる新聞社の襲撃後「Je suis Charlie」と書かれた紙を掲げて無言で連帯感を表明していたパリジャンたち。しかし、今回の同時多発テロでは国旗を翻し「フランス共和国」の一員としての連帯感を誰もが自然な形であらわしていた。

 

写真 ブティックの扉やレストランの入り口、マンションの窓、ユダヤ教が被るキッパと呼ばれる帽子を販売する店でさへも赤・白・青と3色重ねで連帯感を表明していたパリの一日。各自各様、それぞれの形で無言でテロに屈しない強い決心を表現していた。

vin et culture (2015.11.28)  |  未分類  | 

2015.10.26

パリ在住の食ジャーナリスト、伊藤文さんの大きなチャレンジ

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夢や冒険に向かって走り続ける人たちがよく口にする言葉に「アバンチュール・ユーメンヌ」(Aventure humaine ) という仏語がある。「人生をかけた冒険」とでも訳そうか。ここに紹介するパリ在住の食ジャーナリスト、伊藤文さんもその言葉がぴったりのひとりだ。3年前に『食会』(Shoku-è)というウェブ・マガジンを若手デザイナー、マキシム・シュニデールさんとともに立ち上げて、それ以来、数多くの取材やイベントを精力的にこなし、まさに東奔西走の毎日だ。彼女の名前は日本やフランスの料理界に少しずつ浸透し、今ではその存在を知らない者はいないといわれるほどの活躍ぶりだ。そのひたむきさと芯の強さ、フランス料理に対する情熱は同じ日本人として、とても誇りに思う。

そんな彼女が企画したイベント「LE  SALON」が、去る10 月11 & 12 日の二日間、パリで開催された。会場となったビストロには著名な日仏の料理人やジャーナリスト、スタイリスト、編集者、またバイヤーと思しき背広姿のビジネスマンなど大勢の人たちで身動きもとれないほど。日本からは5社が各ブースを設けて、訪れた人たちにひとつひとつ丁寧に商品の説明を行っている。

『青芳製作所』は新潟県燕市の定評あるステンレスメーカーで、ストーンウォッシュで生み出したテーブルウェア”ヴィンテージ” がいぶし銀の輝きを放っている。またその器を使って本格派コーヒーを煎れているのは『丸山珈琲』、長野県小諸市にオフィスを構えているが東京にも数軒コーヒー店を構える。パリのエスプレッソとはまた一味違う日本的な味わいにフランス人からもお墨付き。また『英国但馬屋』は日本四大食肉卸エスフーズ株式会社の、欧州統括の販売拠点として昨年ロンドンに誕生。神戸ビーフを中心とした和牛と日本文化の認知拡大を目指している。実際にサシの入った神戸牛は口中でとろけそうだ。パリ6 区にオープンしたばかりの『鮨 銀座おのでら』と『鉄板焼 銀座すみかわ』が協賛し3種類の調理方法による神戸牛の試食。やはりその美味しさは口にするまで絶対にわからない。まずはフランス人には味わってほしいものだ。

一方『龍泉刃物』は日本刀の技法を700 年継承する越前打刃物の老舗、美しくも斬新な波紋”龍泉輪”が浮かび上がる独特な刃物に、訪れたフランスのシェフたちはもう釘づけ。そして料理といえばまずは鍋。『及源鋳造』は創業、嘉永5 年、性能とデザイン性を追求したオリジナルの鉄器を生み出す優良メーカーとして海外からの需要も高い。3つ星シェフのオリビエ・ロランジェの下でセカンドを務めていたジュリアン・ぺロダンが実際にこの鉄鍋を使ってその場でデモンストレーション。鉄による温度の高まりからカモ肉の皮と身の部分の火入れが絶妙な肉感を生み出してくれる。その場にいた全員が新しい発見に狂喜した。まさに現場ならではの日仏コラボレーションが新たな取り組みを暗示してくれる。

そんな会場の喧騒を背に伊藤さんはこう言う。「ジャーナリストとして”伝えられること”は紙面という限られた範囲でこれまでにも十分に伝えられてきたと思う。しかし産地原産の方たちに接するうちに、彼らの言葉に耳を傾け、実際にモノづくりの現場を訪ねていくうちに、別のやり方でも伝達方法があるのではないか。それが今回のLE SALONにつながったのです。」

この展示会は年2回の開催で継続していくという。TPPが合意して今後、ますますメイド・イン・ジャパンが海外でも紹介されていく機会は増えていくだろう。しかし現地の人たちのライフスタイルやニーズ、メンタリティーといったものをとことん理解している彼女のような存在があってこそ、はじめてモノには命が通っていく。そう、モノの流通というのは究極的には人と人のふれ合い、感性の交流というとても高度なテクニックを必要とするものだ。そんな意味では伊藤さんのような存在は欠かせない。ますますのご活躍を期待しています!

 

写真 ”ヴィンテージ” のいぶし銀の大皿を手にする伊藤文さん。彼女の大きな笑顔が日本とフランスの文化の懸け橋となってゆく。

 

vin et culture (2015.10.26)  |  未分類  | 

2015.10.26

実にフランス的なるショーメの『牧歌的散策』展

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パリのヴァンドーム広場といえば世界中の高級ジュエラーの老舗が立ち並ぶ界隈として有名だが、そのなかでもひときわ目立つのがショーメのショーウィンドウ。その本店の扉を開けると現在、”ミュゼ・エフェメール”、すなわち期限限定のミニ展覧会が開催されている。テーマはナチュラリズム(自然主義)。『牧歌的散策』とまるでフランスの印象派を髣髴とさせるタイトルだが、1900年代のベルエポックから現代にいたるまでの植物や昆虫をテーマにしたハイジュエリーが並んでいる。

創立1780年、235年の歴史を誇るショーメはナポレオンがジョゼフィーヌに贈ったティアラの制作で有名なメゾンだが、それ以来2000点以上の王侯貴族を対象にした王冠やエグレット、ティアラを作り続けてきた。その膨大な資料の中から選りすぐれたショーメの代表的作品を、当時のオリジナル、白黒の写真、模型、精緻なデッサン画などハイジュエリーが誕生するまでの過程がよく分かる一級の資料が展示されている。「ひとりでも多くの人にショーメの職人芸を見てほしい」。そんなメッセージが伝わってくるこの展覧会、ジュエリー好きだけではなくフランスの歴史や文化、職人芸に興味のある方にはパリを訪れる機会があったら是非とも訪れてほしい貴重なアーカイブである。

 

写真 豊穣を意味する麦穂が風になびいているモチーフを模ったダイアモンドのティアラは1811年、ナポレオンの皇女、ジョゼフィーヌのために造られたもの。(CHAUMET:  12 Place Vendome Paris )

 

vin et culture (2015.10.26)  |  未分類  | 

2015.10.16

Enfant Terrible (恐るべき子供たち) のビッグな可能性

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日本財団と東京大学先端科学技術研究センターが共同で主催する異才発掘プロジェクト『ROCKET』の子供たち3人がパリの“Secours Populaire Français”(市民の絆フランス)を表敬訪問した。このRocketプロジェクトとは「異才を発掘し持続的なサポートを提供することで、将来の日本をリードしイノベーションをもたらす人材を養成することを目指したもの」と同パンフレットには書かれている。突出した能力を持て余していたり、ほかの子供たちとはちょっと違うことで居場所を感じられないでいる子供たち、そんな彼らの能力を引き出し成長させていくことは将来の日本にとっても大きなメリットとなってゆく。

みんなでお茶している30分間の間に、ひとり黙々とノートに向かって凱旋門やノートルダム大聖堂の精密画を描き上げてしまう濱口君、北海道のエゾシカの角を使った「鹿プロジェクト」では見事なカトラリーコレクションを制作した小林さん、歴史やモニュメント、料理から文化に至るまで幅広い知識が旺盛な野中君。三人三色、その溢れる才能には舌をまいてしまう。しかし、生き生きとした彼らの真剣な眼差しをみていると” 日本の将来は大丈夫! ” と心から安心できる。

ひとりひとりの個性を重んじるフランスの教育制度、一方、全体の輪を重んじ協調してゆくことを美徳とする日本の教育現場、しかし、そのどちらにも順応してゆけることが、これからの世界で必要とされていく人材であることは間違いない。

 

写真 2011年3月東日本大震災のときに東北の被災地にいち早く駆け付け寄付してくれたフランス最大のNPO「市民の絆フランス」の代表者たちと記念撮影におさまる濱口君・小林さん・野中君。このフランスの「市民…」も” Copins du Monde” (世界の仲間たち)という青少年向けのプロジェクトを立ち上げて世界中の貧困の子供たちへの教育や健康をサポートしている。

 

 

vin et culture (2015.10.16)  |  未分類  | 

2015.10.05

アルバー・エルバスのマニフェスト

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2001年からランヴァンのデザイナーを務めるアルバー・エルバスの舞台裏を追った『アルバー・エルバスのマニフェスト展』が”メゾン・ヨーロピエンヌ・ド・ラ・フォトグラフィ”で開催されている。今夏、ミュゼ・ガリエラ(パリのモード美術館) でランヴァン展を見に行ったとき、そのモダンさはもとよりエレガンスとは何なのかを強烈に思い知らされて興奮気味だった私。更に追い打ちをかけるように、このダブルの展覧会が開催されるというラッキーに恵まれた! さすがにパリ、その展覧会のグレードの高さには唸ってしまった。

パリ市が運営するこの写真美術館は私が大好きな場所のひとつなのだが、その2階の展示室には映像と写真、立体裁断と平面図、型紙、そして出来上がった作品と縦横無尽にエルバスの創造性を余すところなく見せているのが特徴だ。特に何気なくマヌカンたちが着ている服、でもその服の型紙の複雑さを知ったら、もうエルバスが天才であるのは一目瞭然だ。どうしてこんなシルエットが想いつくのだろうか? サンローランのコレクションを手掛けていただけあって、そのテクニック・バランス・高級感、そして何よりも趣味の良さでは彼の右に出るものはいないだろう。パリを訪れる機会があったら是非とも訪ねてほしい展覧会である。

 

写真 シフォンのようなオーガンディを使った黒のドレスやタフタのような張りのある布を体にまとわせた服、女性を美しく見せることにかけては天才的なエルバスの才能に改めてため息がでる。( Maison Europeenne de la Photographie VILLE DE PARIS : www.mep-fr.org )

 

 

 

vin et culture (2015.10.05)  |  未分類  | 

2015.09.26

「ご縁」がもたらす人生の不思議。

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人生というのは時として思いもかけない結果をもたらしてくれるものである。この写真に写っているふたりの男性、左側の男性をどこかで見覚えのあるひともいるのでは? そう、今年の7月に私のブログに登場していただいた蓜島一匡さんだ。パリ郊外のジャルダン・ド・コカーニュで農業体験を3日間行ない、その後もいろいろな「ご縁」でつながっている。それは今年の6月、琵琶湖で開催された「ソーシャルファーム・ジャパン」のシンポジウムにさかのぼる。フランスのジャルダンを主宰するジャンギィ・ヘンケルさんと来日した私は、シンポジウムが終わるや否や、蓜島さんから「今度フランスに行きます。是非ともジャルダンで農業やりたいんですが・・・」。こうして3日間、パリ郊外のリマン市にあるジャルダンでフランス人スタッフに紛れて心地よい汗を流した。

帰国後、私は茨城県の鹿嶋という場所でトマト・胡瓜・ナス・唐辛子・ゴマ、そしてお米まで作っている蓜島さんを訪ねた。というのも私の先祖がひょんなことから鹿嶋に土地を所有しており長く住んでいたのだが、戦後、他界した後は誰もそこに住む者もいない。半年ごとに雑草取りに行くのが精いっぱい。そこで、ひょっとしてご興味があるのでは? とその土地に足を運んでいただいた結果、とても気に入ってくださり、そこに住んでいただけることになったのである。何という「ご縁」!  私たち家族も先祖代々の土地に息を吹き込んで下さる蓜島さんにとても感謝している。これもまた何かの「ご縁」である。

フランスのジャルダンが繋いでくれたこの運命のめぐり合わせ。何か不思議なものを感じる。とてもありがたいことだと思っている。蓜島さんは同じ農業の仲間でこの畑の所有者であり、また『鹿嶋パラダイス』を主宰する唐澤秀さんと鹿島神宮の参道で店を営んでおられる。採れたての自然野菜を使ったお料理は絶品だ。また昨年は収穫された自分たちのお米を千葉県に酒蔵を構える寺田本家に持参して『酒宴楽園 パラダイ酒』を造ってもらった。ここの杜氏は意欲的な方で世界のベストレストラン50の一位に輝いたデンマークの名店 “NOMA”のシェフ、レネ・レゼピもいち早く感動した『醍醐のしずく』というお酒を作っている。この酒にほれ込んだレネはデンマークの同店のメニューにも載せているほど。実は私の娘が今年の初めにNOMAがマンダリンオリエンタル東京に”仮の店”をオープンしたときのスタッフの一員として働いた経緯がある。その時にレネから「凄い日本酒!デンマークに持ち帰りたい」と言っていたのを思い出す。娘もこの酒にほれ込んでNOMAのスタッフたちと寺田本家を訪ねて何本か購入・・・。これもまた何かの「ご縁」かも。

良いもの・美味しいものには国境なんかない。デンマークと千葉県が結びついているのだから、茨城県鹿嶋と千葉県香取郡神崎町が県を超えて繋がるなんてわけないことだ。おいしいものを本当に追及している人たちがこれからもどんどん県を超え国を超えて繋がっていく。食物連鎖が取り持つ「ご縁」で私の人生もこれから、とっても豊かになりそうな気配・・・。うれしい!! 蓜島さん、唐澤さん、本当にありがとう。これからも末永くよろしく。そして、いつの日かジャルダンのヘンケルさんを鹿嶋にお呼びして『パラダイ酒』で祝宴を上げましょうね!!

 

写真  自分たちが耕す畑の前でポーズをとってくれた蓜島さんと唐澤さん、なんとなく兄弟のような雰囲気が漂うこのおふたり。「自然農業」という身体や環境にやさしい取り組みに、ふたりの笑顔から未来が透けて見える。

 

 

vin et culture (2015.09.26)  |  未分類  | 

2015.08.06

70年目の” HIROSHIMA “。

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「1945年8月6日月曜日、夏特有の真っ青に晴れ渡った朝だった。8時、いつもと同じように軍需工場に働きに行く労働者や徴用工、勤労動員された中学生たちで広島の町の中心部はごった返していた。8時15分、上空を飛んでいたアメリカ空軍機B-29の一機からリトルボーイと名付けられた原子爆弾が投下された。その45秒後、人類の歴史上はじめて誰もが経験したことのない2万トンを上回る爆弾の威力とともに原子爆弾が炸裂した。核兵器が使われた最初の戦争だった。・・・しかし、太平洋戦争すでに劣勢が伝えられた日本軍、その力尽きた状況下で敗戦も時間の問題と言われていたこの時期に原爆を投下することの意味がどこにあったのか?トルーマン大統領が” マンハッタン計画 ” の名のもとに原爆投下の指令を承認したが、実際には原子爆弾の破壊力というものを試してみたいが故に決行した・・・」。そんなコメントを嬉々とし、しかも堂々と語っているアメリカ軍部の上層部のコメントを映し出したドキュメンタリーが仏独共同チャンネルのTV局「ARTE」で放送された。

「戦争」というものは理不尽なことばかりである。科学の発明・力を試してみたいが故に「戦争」という名のもとに蛮行が許される。このドキュメンタリーのなかで被爆した日本人の何人もの歴史の証言者たちは言う。「こんな地獄は決して繰り返してはならない」と。地球上、唯一この地獄を体験した日本人だからこそ「平和であることの重み」を世界中に発信し続けなければいけない。それが日本人として生まれてきた私たちの義務だと思う。

 

写真 『パリ解放から広島・長崎まで』と題された展覧会が現在パリ市庁舎で開催されている。その案内を告げるポスター、その下には” 第二次世界大戦終戦70周年記念 ” と書かれている。

 

vin et culture (2015.08.06)  |  未分類  | 

2015.08.01

デンマーク(コペンハーゲン) 食の旅 2. 『NOMA』 

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食の旅の2日目は『NOMA』、今やデンマークのガストロノミーを代表するこの店は今年の1~2月まで期間限定で東京のホテル・マンダリンオリエンタル内に『NOMA Tokyo』をオープンしたからご存知の方も多いだろう。そんなNOMAが何と来年一月から10週間、今度はオーストラリアのシドニーに店をオープンするという。

従業員全員(皿洗いからジェネラルマネージャーに至るまで!)、家族同伴で民族の大移動のように移住するのはとても素晴らしい発想だ。若いスタッフたちも家族同様に扱ってもらえればきっとやる気も出ることだろう! この辺りのレネ・ゼレピの手腕は見習わなければならない。世界中の国籍の人たちを従業員として雇い(なぜかフランス人はいない! わかる気もするが・・・)、世界中の人たちをターゲットにビジネスしている。「コペンハーゲンというところは北欧の人間にしか理解できない特殊性があり」と、前置きをしたうえで、冬は雪に覆われているから夏の間のほんのわずかな期間しか商売ができない。しかも食材が乏しいから、その分保存食を充実させないとシーズンオフには耐えられない。(今は発酵にこだわっており、今回はその発酵庫も見せてもらった) そのためには発酵文化を原点に持つ日本人料理人を雇い(ジュン君という素晴らしい料理人がいる!) 味噌・醤油だと発酵技術を学ぶ。そして定期的に海外に移住して、その地の食材をふんだんに学び・使い・料理人スタッフたちと全員で新しい料理にチャレンジしていく。そんな連帯感あるスピリッツに新しい料理人の姿が見て取れる。自分たちの置かれている逆境をすべてポジティブに変えてゆくところも理にかなっている。「レストランはエンターテイメント、常にイベントを作り出していかなければならない」とレネ。そんなところにNOMAが世界的に注目されている理由があるのだろう。

そしてもう一つ、世界中の客をターゲットにしていると述べたが、コペンハーゲンまでわざわざ来れない客には自分たちがその地域に乗り込んでゆく。これって「屋台ビジネス」ではないだろうか。今、フランスでも屋台(仏語でRestaurant ambulantと言うが「動くレストラン・移動するレストラン」という意味) がモーレツにはやっている。屋台とは言い換えれば大衆文化の発祥だ。一人でも多くの人にNOMAの料理を食べてもらうためには自分たちがその場所に乗り込んで出張し、その国の大衆にアピールすること。NOMAは決して大衆の値段じゃないけれど、でもコペンハーゲンまで飛行機に乗っていくことを考えれば安上がりだ! レネはそういった意味では、かなりしたたかなビジネスマンなのかもしれない。

 

写真  コペンハーゲンの本店でいただいた料理はデンマークの食材を100%フューチャーしたもの。まず最初に出てきたのは「蕪とグリーンストロベリー」。蕪のしっかりした味がとてもフレッシュ。緑色の苺もえぐいかと思ったら、とても優しい味。フルーツというよりも野菜感覚だ。”CHUT LIBRE”というフランス産のスパークリングワインをアペリティフに。自家製のパンはカリッとした食感が香ばしい、バージンバターと一緒に。キャベツの葉とグリーンストロベリーのジュ。帆立貝の煮汁を皿に塗り込み、それに蒸したハーブや生のハーブを並べて手で食べる。皿についた帆立の煮汁もふき取るようにして食べるのがコツ。2014年12月に植えたオニオンクロスは今が食べごろだ。グリーンピースと昆布のような海藻から作ったジュレを細かくスライスして凝乳クリームを中に封じ込めた。見た目にも鮮やかなエディブルフラワーのタルトは海藻を生地に入れてチュイルのようにさくっと軽めに焼いたタルト風。千葉県の寺田本家の清酒 “醍醐のしずく”はちょっと甘みのあるお酒、NOMAの料理にとてもよく合う。デンマーク産のジャガイモをオニオンクロスで包んで蒸し焼きにしたもの、ちょっとカイワレ大根のような辛みがある。フレッシュクリームをベースにしたテリーヌはちょっとお豆腐のような食感。最初に出された木の枝、いったい何に使うのかと思いきやフォーク代わりに刺していただく。これも新しい食べ方の提案だ。イースト菌をベースにしたブイヨンにナスタチウムという南米産の葉でくるんだ甘海老はほとんど生、酸味の効いたブイヨンと海老のオイリーなねっとり感が絶妙なバランスだ。キャベツの葉を乾燥させてキャラメリゼさせた薄いチュイル、中には”海のアスパラガス”と呼ばれるクレッソンのペースト。南仏ルシオン地方のドメーヌ・マタサの”matassa”と呼ばれる白ワイン、アレキサンドリア・マスカット種を使ってビオダイナミック製法によって作り上げた甘くてフレッシュなワイン。ノルウェー産のハマグリはクレッソンと共に生で食す。東京でも大好評だったアンキモは冷やして薄切りにしたもの。ホワイトアスパラガスを表面だけグリルして薄切りに並べ、デンマーク産キャビアとエディブルフラワーを添えて、日本人料理人のジュン君がテーブルでソースをからめてくれる。ビジュアル的に美しい一皿だ。四葉のクローバーのような形をしたエディブルフラワーは出汁と一緒にちょっと箸休め的な役割だ。フランスのジュラ地方の白ワイン”Arbois Pupillin”はサヴァニアンというブドウの品種はとてもドライな味が印象的。オマールエビとナスタチウムのロースト。レグリス(甘草)風の真っ黒いベジェタブルフラワー、ちょっと粘着性のある食感が歯にこびりつく感じ。炭火でグリルしたオーソーブッコ(骨の骨髄)。デザートはベリー系フルーツとグリーンベジェタブルを一年間マリネしたヴィネガーを使ったフレッシュクリーム。口の中に入れるとふわっと溶けてしまいそうなスフレのような不思議な食感のシェーブルミルクのヨーグルト、中にはルバーブが。”chinuri”というフィルターをかけていないデザートワインは6ヶ月間発酵させたブドウを使った甘くデリケートな味わい。ちょっと苦味の効いたヘーゼルナッツのオイルをソースにしたクリーム。森をイメージしたチョコレートとエッグリキュール。エチオピア産の豆を使った酸味の効いたコーヒーは別のサロンでサービスしてくれる。中庭やオフィス内と至る所でハーブを育てている。レストランの外に設けられたラボ、中でも発酵庫はご覧のとおり様々な食材を使って発酵を試みている。総勢70名の世界中から集まってきたスタッフたちが働く厨房は活気に満ち溢れている。みんなとても若い。これだけ手の込んだ料理を作るためには料理人だけではなく丹念に料理の説明をしてくれるサービス係の役割も重要だ。全員が東京に行った。スタッフと再会を喜ぶ娘、メートルドテルのジェームズを囲んで全員がウェルカムしてくれた!

noma
Strandgade 93   DK-1401 Copenhagen     Tel: +45 3296 3297      E-mail: noma@noma.dk

 

 

vin et culture (2015.08.01)  |  未分類  | 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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