2016.08.11

「ウシムラ、エキストラ・テレストル ! 」(内村選手は宇宙人! )

 

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「ウシムラ、エキストラ・テレストル!」(内村選手は宇宙人!)

フランスのTVの女性キャスターはそう叫んでちょっと興奮気味。リオデジャネイロ・オリンピックの日本男子個人総合で優勝を果たしたその瞬間、内村航平選手に惜しみない歓声と賛辞を贈った。最後の最後までトップを走っていたウクライナのオレグ・ベルニャエフ選手に対し、最終競技の鉄棒で完璧なる演技をもって逆転優勝を果たした。その差は何と0.099、この種目の2連覇は44年ぶり、史上4人目の快挙だという。

”  起きているときも寝ているときも、いつもいつも腰痛がつきまとう。足首のねん挫で、もう足は常にブラブラ状態 ” だという内村選手。練習の鬼で最低限必要な休息以外は常に練習をしていると読んだ。そんな内村選手が目標にしていたのが団体総合でも優勝することであった。そして今回の五輪ではその念願の夢もついに果たした。

海外に住んでいるとパトリオティズム(祖国愛)がますます年齢と共に強くなってくるが、内村選手の快挙で今、日本人に生まれてきた自分がとても誇らしく思う。きっと、それは私だけではないだろう。『内村パワーのおすそ分け』、そう日本中、否、世界中の日本人が今元気をもらえたことに感謝したい。内村選手、ありがとう。

 

写真  世界王者のこの鍛え上げられた筋肉を見よ! まさに芸術作品である。(写真 Le Monde)

 

 

vin et culture (2016.08.11)  |  未分類  | 

2016.08.04

日本の法務省関係者が 『smailles』 (ジャルダン・ド・コカーニュ)を視察

 

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パリからTGV(新幹線) に乗って約2時間40分、アヴィニョン駅に降り立つと、そこはもう別世界だ。気温は30度を優に超えているが、からっと乾燥した地中海性の風が肌に心地よい。じりじりと照りつける太陽、ミーンミーンと耳をつんざく懐かしいセミの声! (フランスでは南仏にしかセミは生息しない) 緑鬱蒼とした、そんな場所に社会的弱者を自立支援するNPO「ジャルダン・ド・コカーニュ」が運営する『Semailles (スマイユ) 』がある。ここでは、ありとあらゆる境遇の人たちを受け入れてビオ農業を実践させながら野菜を栽培し、それを近隣の住民に販売している。働く人たちのなかにはDV(ドメスティックバイオレンス)の被害者もいれば長期失業者、軽犯罪もいる。しかし、みんな美味しいビオ野菜を作ろうという共通の目的に向かって汗水流している。そんなジャルダンの取り組みを視察しようと、去る7月25・26日の二日間、日本から法務省関係者が訪れた。

犯罪者の再犯防止は世界中の司法関係者の共通の願いだ。彼らが更生し自立した”社会力”を身につけることが再犯を防ぐための唯一の手段であることは間違いない。日本を含めフランスでも大方の施設では受刑者たちは一カ所にまとめられて労働したり、刑務所内で様々なスキルを身に着ける機会を与えられるなどして”隔離”しながら出所後に向けた準備が進められている。しかし、スマイユではこうした人たちも”失業者のひとり”として捉えており、他の弱者たちと一緒に労働させることにより働くことの意味を理解してもらおうということに重点を置いている。

この政策の背景には「失業問題はみんなで考えねばならない問題」(Le chomage est une affaire pour tous!)という考え方がある。人口6600万人のうち650万人が求職中(2014年度)という恐ろしい数字が示しているように、失業対策はフランスが国として取り組まねばならない最も深刻な喫緊な課題ともいえよう。そのためには国や県、地方自治体、民間企業、国民一人ひとりがひとつになり、それぞれができることで連携しながら同じ目的に向かって解決策を模索していこうという連帯感が求められている。司法省もその一環という位置づけだ。

そんな国のメッセージを受けてスマイユではマニフェストのひとつでもある「老若男女・宗教を超えたあらゆる弱者をひとつに束ねることで彼らの社会復帰を実現させよう」という考え方に基づいて運営されている。違う立場におかれた人たちを混合し共生させることにより今までとは違った視点で社会を捉えることが可能になる。そんな考え方に基づいて誕生した社会をフランスでは「ミキシテソシアル=多様性のある社会」と呼んでいるが、今フランスではこうした考え方が社会形成の根底にあり主流になりつつある。それは今まで自由・平等・博愛精神のもとに世界中の多くの社会的亡命者たちを受け入れてきた歴史があるからだ。

しかし現在のヨーロッパを見るとどうだろう。難民・移民が膨れ上がるにつれ、またテロ事件の多発などから人々の寛容性が徐々に失われ、民族の多様性に対する警戒感が強まっている。自分と違う者を排除する社会、これからますます内向きになり、孤立し閉鎖的になっていく未来に危機感を抱くのは私だけではないだろう。

 

写真 日本からは法務省大臣官房秘書課政策評価企画室長補佐官をはじめ訟務支援対策官が訪れた。スマイユの所長ジョージアンヌさん(左端の赤いシャツの女性)のお声掛けで、アヴィニョン市のあるヴォークリューズ県の刑務所所長、PACA州(Provence-Alpes-Côte d’Azurの略)のSPIP局長(再犯防止・更生局)、アヴィニョン市長補佐、地方自治体関係者などなど、たくさんの方たちとの懇談会が実現した。

 

vin et culture (2016.08.04)  |  未分類  | 

2016.07.29

待ちに待った” Paradise Beer Factory “ いよいよグランドオープン!

 

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このブログにも何度か登場いただいた『鹿嶋パラダイス』の唐澤秀さんとその仲間たち、いよいよ7月16日に待ちに待った” Paradise Beer Factory ” 略してPBFがグランドオープンした。赤レンガを積み上げたカウンター越しにはビンテージのレコードプレーヤーがきらりと光る。茨城県の「鹿島神宮」といえば全国にある鹿嶋神社の総本社、千葉県の香取神社や同じく茨城県の息栖神社と並ぶ東国三社と言われている。『常陸国風土記』によれば東国随一の古社とも記されており、武道では篤く信仰されている・・・といってもピンとこない方も少なくないに違いない。しかし「奈良の鹿」もここ鹿島神宮が発祥といえばウンとうなずく方も多いことだろう。そんな由緒正しい神宮の参道を彩るように『鹿嶋パラダイス』はお洒落なブラッスリーとして人目を引く。ブラッスリーとは地ビールを生産する場所のことを言うフランス語だが、まさに店の奥ではステンレス製の巨大なタンク内で発酵中の小麦麦芽の酸っぱい香りが辺り一面に漂っている。

「本当に美味しくて、真に安全で、健康にも良くて、 環境にも負荷をかけない、 全てそんなものに囲まれた生活って幸せ! それをやってしまおうってのが鹿嶋パラダイスです。」と唐澤さんは言う。鹿嶋に土地を借りて9年目。少しずつ地元の農家の信頼を獲得し、耕す畑の面積も飛躍的に増えていった。今ではこの一帯の農家のリーダー的存在として茨城県の自然農業のイメージを刷新する。天日干しによる自然栽培米、大豆、パン用小麦、ビール麦、野菜・・・と数多くの農作物は唐澤さんたちみんなの汗と涙の賜物。彼らのエネルギーを受けてすくすくと育っている。
そんな自然の恵みをたっぷりと受けて出来上がったオレンジ色がかった乳白色のパラダイスビール、ヴァイツェンと呼ばれるドイツのバイエルン地方特有の上面発酵させたビールをモデルにしたもので、清涼感があり口当たりがまろやかなのが特徴だ。細かい泡がまるで生クリームのように唇にまとわりつく感触がたまらない。病みつきになること間違いなしだ!!
写真  黒色のTシャツ姿が唐澤さん。自然農業に対するぶれない彼の姿勢は多くのスタッフをひきつけてやまない。彼らの笑顔こそがPBFのトレードマークだ。http://kashima-paradise.com/
 

vin et culture (2016.07.29)  |  未分類  | 

2016.06.16

『アマデオ・デ・ソウザ・カルドーソ』展――ポルトガルの知られざる画家

 

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パリのグランパレ国立美術館で現在、ポルトガル人の画家『アマデオ・デ・ソウザ・カルドーソ』の展覧会が開かれている。この人の名を聞いてピンとくる人はよほどの美術おたくといってもいいだろう。事実、展覧会のパンフレットにも「20世紀という時代に、これほどまでの才能にあふれたアーチストが忘れ去られていた事実は他には例をみない」と書かれている。たった31歳という若さでこの世を去ったこの画家、その軌跡をたどってみよう。

1887年、ポルト酒で有名なポルトという町にほど近いマンホーフというところで生まれた彼は、当時としては写真というものは貴重な手段の一つに違いなかったであろうが、ファミリーの肖像・住んでいた家・乗馬姿といったようにたくさんの写真が残されている。そんな所からも彼自身ブルジョア階級の出身であることが容易に窺い知ることができる。そんな彼の生涯はふたつのエポックに代表される。ひとつは1906~1914年、パリで活動していた時代。そしてもうひとつは1914~1918年、故郷に戻りその短い一生を終えるまで。前者は都会的なモダンな生活、芸術家たちとの交流、後者は田舎の田園風景・自然をこよなく愛した彼の面影が漂う。どちらもアマデオにとっては必要不可欠な生活だったのだろう。

パリで最も親交を深めたモジリアニ、ブランクージ、ロベール&ソニア・ドローネなど、彼らと一緒に「サロン・ド・パリ」「アーモリー・ショウ」(米国)「サロン・ドートンヌ」(ベルリン)にも参加している。しかし、第一次世界大戦中の勃発とともに故郷に疎開した彼は、そこでスペイン病にかかり帰らぬ人となった。

力強い筆のタッチ、構図、色使いなど当時の美術シーンを席捲していたキュービズム・未来派(20世紀イタリアを中心にロシアなどで進められた前衛派)・オルフィスム(ドローネ夫妻に代表される色彩の活用・キュービズムの構成に未来派の発想を加えたもの)・表現主義などの影響を多分に受けた作品が、これでもか、これでもかと執拗に、しかも忠実に描かれている。そんなところに若く血気盛んなアマデオがパリという芸術の街で必死に学び習得して行く過程が見てとれる。それは我々訪れた者をストレートに虜にする。しかし敢えて言うならば、30歳はまだ人生の半ば。これからもっともっと年を経て人間としての成熟度を増し、それが作品にどう影響を及ぼし、そして開花していったであろうかが見れなかったのは本当に残念である。晩年の彼の進化した作品が見てみたかった。パリを訪れる機会があれば是非とも必見の展覧会である。

 

写真 数多くの芸術家から影響を受けたことが容易に察せられるアマデオの作品。若いが故に時代の波・ムーブメントを必死に吸収し自分の世界を作り上げようとしていたことが分かる。2016年7月18日まで。http://www.grandpalais.fr

 

 

vin et culture (2016.06.16)  |  未分類  | 

2016.06.04

仏美食ガイド 『ゴー・エ・ミヨ・ジャポン』、いよいよ日本版出版が決定!

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ヌーヴェルヴァーグ、ヌーヴォーレアリズム、ヌーヴォーフィロゾフ・・・まさに戦後の復興期、高度成長時代を表す「Trente Glorieuse 」(栄光の30年という意味) と呼ばれていた1945~1975年の30年間、ヌーヴォーとか ヌーヴェルという”新しい”という形容詞がやたらともてはやされていたこの時代、人々は新しい価値観やライフスタイルの到来を待ち望んでいたのかもしれない。それはフランスが最も輝いていた時代でもあった。

そんな中に誕生したのが「ヌーヴェル・キュイジーヌ」と呼ばれる新しい食のムーブメント。その名付け親がアンリ・ゴー&クリスティアン・ミヨというふたりの食ジャーナリストコンビであった。今までのバターやソースをたっぷりと使った重たい古典料理におさらばし、もっと食材そのものの美味しさを引き出すために火入れや調理方法に新しい技術を取り入れようという食の一大革命であった。

そんなふたりの名前を冠したフランスの美食ガイド『ゴー・エ・ミヨ・ジャポン』の日本版出版決定の記者発表が、去る5月31日、在日仏大使公邸において行われた。フランスといえば美食大国、数多あるレストランを独自の評価でランク付けすることにかけては世界でも類を見ないガイドブック王国。すでに赤い表紙でおなじみの” ミシュラン ” やフランス外務省が後押しする” ラ・リスト” などが有名だ。

「今までとは一味違うガイドブックを作ろう! 」と、私たち編集委員会では3つのマニフェストを掲げた。「料理人・サービス人といった飲食のプロフェッショナルを対象にしていること」「地方の料理人・生産者・産業にも光を当てること」「若い次世代の料理人を発掘すること」。まさに地域の小さなテロワール(風土性)や地方の豊かさをひとりでも多くの人たちに知ってもらいたい、ひいてはそれが日本の経済全体をけん引する原動力になるべく道しるべのような存在であり続けたい。それが『ゴー・エ・ミヨ・ジャポン』の存在意義でもある。

すでにフランスでは1972年の創刊以来、”ヌーヴェルキュイジーヌ・フランセーズ” は 世界中の料理に計り知れない影響を与え、また料理の進化への起爆剤としても認知されていった。ポール・ボキューズやアラン・シャペル、トロワグロ兄弟・・・など、それまで地球の裏側にいた人たちには知る術もなかった真摯にモノづくりをしている料理人たちがゴー・エ・ミヨによってその存在を世界中の人たちに知ってもらえることに成功した。

食の世界でもグローバル化が進んでいる今日、小さな地方性に隠れた宝物が眠っていることを改めて世界中の人たちに問いかけようと、いよいよ日本も15ヶ国目として世界に向けて登場する。『ゴー・エ・ミヨ ジャポン』は12月3日発刊、約300~400店舗が掲載される予定である。

写真 『ゴー・エ・ミヨ ジャポン』出版に向けて立ち上げられた編集にかかわる人たち。2016年、仏版ゴー・エ・ミヨでその年の「最優秀シェフ」に選ばれたアレクサンドル・ゴチエもわざわさ応援のためにフランスから駆け付けてくれた。 (写真  アート5)

 

 

vin et culture (2016.06.04)  |  未分類  | 

2016.03.30

早稲田大学社会安全政策研究所のミッションが『ジャルダン・ド・コカーニュ』を視察

 

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昨年6月、滋賀県大津で行われた「ソーシャルファームジャパン琵琶湖サミット」のご縁で交流が始まった早稲田大学社会安全政策研究所(WIPSS)、そのミッションがパリ郊外にある『ジャルダン・ド・コカーニュ』を訪問した。WIPSSでは2015年4月から3年間にわたり「非行少年・犯罪者に対する就労支援システムの展開可能性に関する考察」と題する調査研究を行っている。農作業が社会的弱者の社会復帰や自立に役立つことは既に知られているが、このジャルダンの取り組みは政府の補助金支援策と並行して、一般市民が彼らの作る野菜を定期的に購入することで地域住民としてサポートしていることが成功の要因でもある。

「農畜産業従事者の高齢化、さらにはTPPの煽りを受け、わが国の農畜産業の行く末は大いに危ぶまれています。しかし他方で身体的・精神的な障害を抱えている人や矯正施設出所者など労働市場から締め出される傾向にある人びとの就労支援に携わっている機関や民間団体は農畜産業のこの劣勢を奇貨として、そこへの新規参入を図りつつあります。現にWIPSSの関係者のなかにも農畜産業におけるソーシャルファーム事業の開拓に乗り出そうとしている団体が二・三あります。」とWIPSSの団長であり、同大学法学学術院教授の石川 正興氏は結んでくれた。

ジャルダンの創始者でもあり、また経営者としても敏腕な熱血漢、ジャンギィ・ヘンケル氏はすでに3度の来日で日本でも様々な取り組みを行っているNPOや矯正施設を訪問している。国が違っても刑務所出所者に対する社会の風当たりはとても強い。しかし彼らを孤立させることよりも様々な問題を抱えている人同士を一緒に「ひとつに束ねること」で、社会の一員としての自立を促す方法に未来の可能性を模索している。

「差別のない多様性のある社会」――言うのは容易なことだが、昨今の一連のテロ事件以来フランスではますます人々の警戒心とか猜疑心といったものが増強しているように見受けられる。そんなネガティブな社会感情が広がらないことをただただ祈るばかりだが、その一方では政治・経済・司法と社会全体が一つの連帯感をもって社会的弱者を受け入れようとする、そんなポジティブで寛容性のある考え方が、今フランス全体では主流になりつつあるのを感じる。

 

写真 はるか後方に見えるのは19世紀に遡るベネディクト派、サンルイ・ドュ・タンプル修道院。その18haの農地を譲り受けてジャルダンは社会復帰を目指す人たちを労働力として野菜作りに励んでいる。WIPSSのミッションと記念撮影。中央がヘンケルさん、その隣にいるのはここのジャルダンの所長フレデリック・バタイヤールさん。

 

 

vin et culture (2016.03.30)  |  未分類  | 

2016.01.22

1月21日、フランス最後の国王ルイ16世が処刑された日。

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1793年1月21日10h22、フランス最後の国王ルイ16世がコンコルド広場で断頭台の露と消えた。1789年のフランス革命により、それまでの絶対王政から立憲王政、そして共和制へと変貌を遂げたフランス、まさに市民が市民のために勝ちとった市民革命だともいえる。以来、今日までフランスは共和国として君臨している。

毎年、この日がやってくるとフランス全国の都市ではロワイヤリスト(王党派)とレパブリカン(共和党派)に分かれて、それぞれがそれぞれのの想いを抱いてその日を迎える。王室の象徴でもあるヴェルサイユ宮殿、そのチャペルでは盛大なミサが行われる。「王侯貴族こそが世界に誇れるフランスの宮廷文化を築き上げたというのに、なぜ国民によって裁きを受け、裁判にかけられ処刑されなくてはならないのか?」ジャケットの襟に王室のシンボルマークの白百合型のピンズをつけた青年が淋しそうな表情をしている。一方「自由・平等・博愛の精神こそが健全な市民の証し。こうして今、自由を謳歌できるのはフランス革命が起こったからこそ。ヴィヴ・ラ・フランス!」そんな気勢を上げるのはジャーナリストや作家・哲学者などが一堂に会したテーブルだ。”テット・ド・ヴォー” と呼ばれる”牛の頭”を丸ごと煮込んだ古典フランス料理を口角泡を飛ばしながら食すのである。牛の頭こそ王党派の人たちを意味する”隠語”なのだ。

かつてフランス革命の嵐の真っ只中、ダントン・マラー・ロベスピエールといった革命の主役たちが次々にコンコルド広場に送り込まれ、ギロチンで処刑されたのを見届けた後に付近のレストラン「ルドワイヤン」でご馳走を頬張ったといわれる革命児たち。そんなたくましい胃袋を持つ彼らだからこそ成し遂げられた市民革命だったのかもしれない。それにしても処刑から235年を経た今日でも大勢の人たちがこの永遠の議論に花咲かせる一日。何ともフランス的なる光景ではないか!

 

写真 パリ郊外にあるサンドニ大聖堂にはルイ16世とその王妃マリーアントワネットの肖像が飾られている。彼女も10か月後、後ろ手に縛られ肥料運搬車で市中を引き回された末に処刑された。

vin et culture (2016.01.22)  |  未分類  | 

2016.01.16

パリ市長から星付きシェフたちに感謝状

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去る1月14日、パリで活躍する84人の星付きシェフたちが一堂のもとにパリ市庁舎の大広間に勢揃いした。「料理人である皆さんたちの不断の努力によってパリという街が世界的にも最もアトラクティブでグルメ都市であることをアピールしてくれている。そんなイメージアップに貢献してくれた皆さんに、パリ市長より心から感謝の念を表します」というアンヌ・イダルゴ市長のスピーチと共に全員が記念撮影をした。

前回、このブログでも紹介した新しいネットメディアによる世界のレストランガイド「LALISTE.COM」でも、フランスの外務大臣ローラン・ファビウス氏自らが音頭をとってフランス料理の普及に努めている。世界的なグルメブームを背景に、フランスでは美食国家の名に恥じないためにも、こうして国が率先しながら自国の料理文化をアピールして食外交を続けている。今回のパリ市長が贈る「Grand vermail」賞もその延長線上にあるといえるのだろう。

 

写真  アンヌ・イダルゴ市長を囲んで3つ星・2つ星・1つ星の錚々たるシェフが全員揃って記念撮影。日本でもこうした光景は、一体いつになったら実現するのだろうか?

 

vin et culture (2016.01.16)  |  未分類  | 

2016.01.16

フィレンツェの胃袋 “CENTRALE”

パリ12

メディチ家のおひざ元、フィレンツェはイタリアルネッサンスの栄華を今に残す古都として世界中の観光客が訪れる街だ。ドゥオモや宮殿、最新ファッションブティック、美味しそうなレストランが所狭しと並んでいる。そんな街の中央に位置する”CENTRALE” (Mercato Centrale Firenze)では一階はデイリーの惣菜を扱っている店が立ち並び、2階にはフードコートが観光客を集客している。

「ヘルシー・グッド・テイスティー」を合言葉に、フードコートの各ブースでは肉や魚・チーズにワイン、そしてエスプレッソのカフェなど、それぞれのこだわりで食を提供する職人さんたちの情熱やモノづくり、ノウハウなどが中途半端じゃない活気で伝わってくる。食を愛する人たちが集まった場所だから、食べに行く人たちの気合もすごい。そんなブースの脇で”LA SCUOLA DI CUCINA Lorenzo de Medici” という料理教室が目を引いた。そこではイタリアン・マンマのような風情の先生がホームパスタを生徒たち(女性だけのクラス?)に教えている。黒いトックとタブリエという、またまたお洒落な出で立ちで、1時間30分で様々なパスタの作り方を教えてくれる。

パスタ好きの日本人もフィレンツェ観光のついでに立ち寄ってみたらどうだろ。旅の思い出として是非とも本場のパスタ造りをお土産にしたらステキだと思うのだが!!

 

写真 ”LA SCUOLA DI CUCINA Lorenzo de Medici”と書かれた窓越しからみた料理学校の風景。着用しているコックコートや黒のトック・タブリエはさすがイタリアファッション。そのセンスの良さが伝わってくる。

 

vin et culture (2016.01.16)  |  未分類  | 

2016.01.01

恒例の大統領の「新年祈願」の演説

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恒例の大統領の新年に向けての「祈願」のスピーチが大晦日の夜20:00に行われた。毎年900万人の国民がこの大統領の演説を聞かないと「新年を迎えられない」と言われるほどの高視聴率だ。「今年の演説はいつもとは違う。・・・国民の皆さんを心から誇りに思っている。・・・そして真実を語らなければならない時が来ている。テロリストとの闘いはまだ終わっていない。これは真の脅威である。・・・二重国籍を持つテロリストには国籍を剥奪することも視野に入れている。しかし、国民一人ひとりが引きこもっていたり、過去のノスタルジーに浸っている場合ではない。みんなが一致団結してテロリストに立ち向かっていかねばならない時が来ている。・・・」

” 神はその人間が乗り越えられる試練しか与えない” といった格言は日本だけでなくフランス語にも存在する。もうオランド大統領の限界をとっくに超えたような試練が今、また何度も繰り返されていることに、ちょっと気の毒にさえ思ってしまう。思えば大統領に就任して4年、これまではどことなくぎこちない演説が多くて内心大丈夫なのかとひやひやしていたのだが(事実、大丈夫じゃないから歴代の大統領のなかでは最悪の支持率を更新していた!) しかし、今年の演説ほど決然たる断乎とした態度で現れたのには正直びっくりした。そう感じたのはきっと私だけではないだろう。まるでミッテラン大統領を髣髴とさせる語り口に大統領の威厳すら感じさせてくれる。

今までの「超低支持率」を行き来していたオランド大統領、ひょっとしたらテロリストたちの蛮行によって支持率を上げ、2017年の大統領選にもまた当選するかもしれない・・・。歴史の皮肉というものは本当に分からないものである。

 

写真 恒例の大統領演説をTVが一斉に伝えている。” Vive la Republique ! Vive la France ! ” でしめくられる。

 

vin et culture (2016.01.01)  |  未分類  | 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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