2012.05.18

あぁ、ソシアリスト!

フランスの新内閣の顔ぶれが発表された。男・女各17名、オリジーヌ(人種) もいろいろ。オランド大統領もエロー首相も一度も大臣の経験がない(!)というという前代未聞のスタートだけに「正直、大丈夫なのかしら?」と思ってしまう。いわゆる政治家になるための登竜門「ENA」出身者は大統領を含めて3名のみ。大臣経験者は6名、それ以外はかなり左寄りの活動家出身、世代交代が顕著な新内閣という印象だ。しかも、一番危惧するのは産業界・経済界出身者がひとりもいないということだ。これだけ世界規模の経済危機が叫ばれているのに、本当に本当に大丈夫なのだろうか?

それにしても一昨日、エリゼ休で行われた大統領交代のセレモニーでも笑顔一つ見せなかったオランド大統領。レッドカーペットを一歩一歩進む大統領の足取りは、まるでヒットラーを彷彿とさせる。サルコジ元大統領がカーラ夫人と”手をつないで退場”していった姿とは対照的だ。しかもエリゼ級の外では国民が「ニコラ! ニコラ!」の大声援。5月6日の感動的な敗北宣言以降、ヒューマンな素顔を見せる同氏に対して、大統領からは完全に笑顔が消えてしまった。

それに輪をかけているのが”事実婚”でファーストレディーの座を獲得したヴァレリー・トリュルパイレールさん(この名前を呼ぶだけでも舌をかみそう!) の姿だ。大統領選のときからずっと”夫”の傍らに付き添っていた彼女は元々政治記者。だから政治の世界を知り尽くしている。きっと大統領を陰で操っているのは彼女に違いない。あるインタビューでこんなことを言っていた。「…カーラ夫人は政治とはまったく別畑の出身だから政治のコード(しきたり)を知らなかった。・・・しかし私は知り尽くしている。・・・必要とあれば笑顔もふりまくし、美しいファッションにも身を包む。でも私は操り人形にはなりたくない!」

オランド大統領から完全に笑顔が失われてしまったのは、ひょっとしたら彼女のプレッシャーからなのではないだろうか? あまりにも野心家で完璧主義者を装うが故に大統領に膨大なストレスを与えているんじゃないだろうか。結構、大統領は庶民的で軽口をたたくのが趣味らしい。熊さんみたいにぽっちゃりしていたのが、彼女と一緒になってからダイエットに励みエッジの効いたシャープな印象に変わってしまった。従来の彼の良さがまったく消えてしまった感じで本当に残念だ。それだったら事実婚で果たして大統領夫人の役目が果たせるのかをじっくりと胸に手を当てて考えてみて欲しい。婚外の男女関係に厳しいカトリックの総本山バチカンやイスラム教の聖地メッカへの公式訪問は一体どうするんだろう?  ”新しい自由な価値観”とか言って相手国にそれを認めさせようとでも思っているのだろうか?  なんか大統領が身内とのトラブルを吐露するのも時間の問題のような予感がする。でも、そう思うのは何も私だけではないような気がするのだが・・・。

写真  大統領のパートナー、ヴァレリー・トリュルバイレールさん。この写真を掲載されたことが不満で雑誌社に抗議した!

 

PARIS MATCH

 

 

 

 

vin et culture (2012.05.18)  |  未分類  | 

2012.05.07

フランスの新しい顔

フランソワ・オランド51,67% 対 ニコラ・サルコジ48,33%。新しいフランスの大統領が国民投票によって決まった。オランド大統領が市長も兼任するコレーズ県のチュール町から勝利の宣言をしたあと、夜半過ぎにはパリのバスチーユ広場に集まった民衆に向かって大手を振った。「フランス人はチェンジを選択した!」、高らかに言い放つ新大統領の姿は今朝の新聞の見出しを飾っている。

緊縮財政政策路線にノーを突きつけたフランス人。国家公務員を6万人増やして雇用促進をはかり 富裕層や大企業に増税して景気回復を狙う。しかしドイツのメルケル路線で足並みをそろえているEUは右寄り保守系。ユーロ圏の景気回復が最大の焦点とするヨーロッパにおいて、これから”社会主義国家フランス”がどんな立場を貫いていくのか?  オランド大統領はEUに対してどんな説明をしていくのか?  まだまだ道のりは険しい。

 

写真  5月6日、勝利宣言するオランド新大統領  ( Le Figaro )

vin et culture (2012.05.07)  |  未分類  | 

2012.05.06

仏大統領選、結果は如何に?

あと数時間で仏大統領選の結果がわかる。投票率は83%(opinionway 統計)という予想で、メディアは現在進行形でその推移を逐次、伝えている。それによると、すでに午前中の投票率は第一回目に比べて6~7%も多いという。いかに国民が政治を変えようとしているのかが伝わってくる。失業・移民・国家債務と膨大な問題を抱えるフランス。この5年間、サルコジ政権に期待していた国民は”裏切られた”という感情を抱いている。それは4日前に行われた恒例のTV討論会でもオランド社会党候補がリードしていることからも窺える。

しかし、サルコジ大統領の5年間の任期のうち、米国のリーマンショックにはじまり、ギリシャの債務問題から端を発したユーロ安、EUの弱体など、その4年間は世界情勢が原因による景気の悪化だ。直接、サルコジ政権が原因とは言えない問題ばかりだ。しかし失業率を5%以内に抑えるという公約が現在では10%近い数字に跳ね上がっているのは必ずしも大統領と無関係とは言い切れないかもしれない。

しかし「強いフランス」をスローガンにしているサルコジ現大統領は経済の活性化・労働によって国力を維持して世界に誇れるフランスを目指そうとしている。また年金改革に大胆なメスをいれたことも忘れてはならない。しかしオランド社会党候補が政権をとれば富裕層への課税、福祉重視という、スペインやギリシャの二の舞になりかねない。どちらを選択するのか? フランス国民にとっても慎重な決断を迫られている。

フランスの知性、フランスアカデミー会員のジャン・ドルメッソン氏はサルコジ大統領を最もよく知ってるひとりだが「これほど国民にたたかれ、誤解されている大統領も珍しい。しかし彼の最大の長所は”トレランス=寛容性”だ。・・・・ 大統領任期中に野党から人気政治家をスカウトして大臣に抜擢したこともある。それは彼の寛容性からきてるものだが、しかし結果的には間違っていたこともすぐに学ぶ能力を持っている・・・・」と手放しで評価する。

そんなヒューマンな素顔のサルコジ氏はあまり日本のメディアでは伝えられていないかもしれない。あと、数時間、はたして結果がどうなるか? 最後の最後まで予断を許さない。

 

4日前にTVで放映された3時間にわたる恒例の仏大統領候補のガチンコ討論会。 ( 写真 France 2 )

 

vin et culture (2012.05.06)  |  未分類  | 

2012.05.04

メーデーの日はスズランの花を

5月1日はメーデーの日。フランスではスズランの花を贈る習慣がある。町のお花屋さんだけでなく、この日だけは誰でもが街頭で販売することができる。今年は2ユーロという値段がついた。実はこのスズランの値段、その年の物価を示すバロメーター。今年は低温多雨だったことから、ちょっと高め。昨年と比べて5%もアップした。一枝に13個の白い花がついているのが「幸せを呼ぶ」のだそう。

スズランを贈る習慣は1561年にさかのぼる。フランスの王様、シャルル9世が側近に”しあわせを願うため”に贈りはじめたのが始まりだとされる。その後、19世紀になってからはパリの郊外、フォンテーヌブローの森やムドンの森を散策していた人たちが自然のスズランを摘んで家族や友人に贈るというシンプルなものだった。それがいつの間にか「5月1日はスズランを贈ろうデー」みたいな国家的イベントになってしまった。バレンタインデーにチョコレートを贈るみたいに。

だからメーデーでバスチーユ広場までデモ行進する血気盛んな労働者たちの胸にはスズランの花が輝いている。赤旗を振って強硬に権利を主張する彼らフランスの労働組合員たちと可憐なスズランの花。これほど不釣り合いなものはない。

 

毎年、恒例のスズランを贈る日

vin et culture (2012.05.04)  |  未分類  | 

2012.04.02

BANDITTI DELL’ ARTE — マージナルたちのアート

© Halle Saint Pierre

© Halle Saint Pierre

 

言葉なんて必要ない。この見事なアートを見よ!  彼らがどれだけ才気に溢れ情熱に向かって一途であったか、これらの作品を通して伝わってくる。なかでも『新世界―骨の彫刻』( Le Nouveau Monde — Sculpture en os ) と題されたこのオブジェはフランチェスコ・トリス ( Francesco TORIS : 1863-1918 ) という精神病患者が時間をかけてひとつひとつ丹念に作り上げた作品で、その執拗なまでの執念ともいえる創作意欲にはただただ圧倒される。

” Banditti dell’Arte ” とは精神病患者や受刑者たちのアートという意味で、イタリアでは1904年にはじめて国内50カ所に精神病院が建設されて以来、そこに収容されている患者たちの隠されたクリエーターとしての才能に注目して作品を収集し続けてきた。これらの作品はロンブローゾ美術館やトリノ人類学博物館、エミリア州サンラザロ精神病院などが所有しているが、いわゆる国家として彼らの作品を体系的に所蔵した美術館はなく、イタリア全国に散らばっていたものを今回、パリのモンマルトルの丘のふもとにあるパリ市の「ホール・サンピエール」( Halle Saint Pierre )というアートギャラリーがイタリア国外では初めて大々的に展覧会を開催した。

隔離された空間の中で彼らが何を想い何を感じ、ただひたすら想像の世界で創作していくことに喜びを見出していた人間の本質といったものが伝わってくる展覧会である。

www.hallesaintpierre.org

 

 

 

 

vin et culture (2012.04.02)  |  未分類  | 

2012.03.19

社会学者、ミュリエル・ジョリヴェさんの日本人若者論

 

『子供不足に悩む国、ニッポン』や『ニッポンの男たち』『Japon, la crise des modeles』など長く日本に住む外国人の目で、時にはシビアにまた時には愛情たっぷりと日本人を書いた多くの著書や日本のメディアでもおなじみのミュリエル・ジョリヴェさんが今年のパリの新書見本市「Salon du Livre 2012」に招待作家として招かれ、「東京の20歳とは」(Avoir 20 ans a Tokyo) と題したテーマで熱弁をふるった。他には『東京散歩』というイラスト本の作家、フローラン・シャヴエさんや地理学者で『アトラス・ドュ・ジャポン、フクシマ以後』の著者フィリップ・ベルチエさんも参加して対談形式で行われた。

「土井健朗による日本語の”甘え”という言葉は日本人の心理や日本社会を理解するうえではキーワードといわれ、西洋の言葉に置き換えるのはとても難しいと言われてきました。ならば私はそれをテーマに、ずっと日本の社会の中で甘えの構造を探し求めてみようとしてきました。特に80年代以降、日本人の意識の中に ”あなたたちは長いこと目いっぱい与えられ続けてきたのだから、今度は社会に還元する番ですよ”という考え方がどこかベースとしてある。たとえば色とりどりのロリータ風に身を包んでいた学生たちも学校を卒業し就職するときちんと髪を整え紺色のスーツに身を包む。まるで何事もなかったかのように社会の一員としてきっちり役目をこなしている・・・。」と、日本人の特殊性を西洋人の聴衆を前にして興味深く語ってくれる。「最近、居酒屋保育という言葉があって、出来ちゃった婚の総称としてのギャルママたちは群れて居酒屋で保育をする。この”群れる”という行動形態もとても日本的・・・。」と、もう次から次へと飛び出してくるあの”懐かしい日本語”に、ついつい周りのフランス人たちの様子をうかがいながらも、こちらも身を乗り出してしまう!

ジョリヴェ先生とはもう何年も前から懇意にしているのだが、帰国するたびに時々彼女の上智大学のゼミに出席させてもらっている。理由は今どきの日本の若者の実態をこの目で確かめたいからだ。みんなとても丁寧で明るくてお行儀がよくて、なによりも優しい! フランス人の言葉の暴力やアローガンな態度にちょっと辟易している私にとって日本人大学生がまぶしく感じられる。

そんな先生も最近とても心を痛めておられるのは日本でも不況による格差やワーキングプア、若者のホームレス化が広がってきている現実だ。かれこれ35年以上の年月を日本で暮らしている先生にとっても、こんな厳しい現実は初めてだという。きっと、また新たに彼女の日本人若者論に大きく影響を与えることだろう。早く次の新書が読んでみたい。

写真 「Salon du Livre 2012」の会場にて熱弁をふるうミュリエル・ジョリヴェさん。

vin et culture (2012.03.19)  |  未分類  | 

2012.03.15

日本料理とフレンチのコラボレーション

来週、ストラスブルグで行われるプロのための料理見本市「EGAST」でデモンストレーションをするために来仏された神戸の料理人、『京料理 たか木』のオーナーシェフの高木一雄さんがパリのフレデリック・シモナンさんの厨房をたずねた。昨年、初めて来日したシモナンさんは以来、大の親日家になってしまったが、滞在中から特に豆腐に興味を抱いていた様子。その話を高木さんにお伝えすると「では豆腐は豆腐、似て非なる”ゴマ豆腐” を指南しましょう」と相成ったのである。

当日は初対面とは思えないようなフレンドリーな雰囲気。「君の厨房だと思って自由に使ってもらって構わないよ!」というシモナンさんの言葉に高木さんもリラックス。昆布とカツブシの出汁をとるところからスタートした。高木さんは普段、神戸でも子供たちに出汁の味を知ってもらおうと小学校に出向いて食育のボランティアをやっている。一方、シモナンさんもパリの小学校で子供たちに様々な食材の味を知ってもらおうと積極的に活動している。そんな二人は3児の父親というところも同じ(しかも、二姫・一太郎も同じ! )  相似点の多い二人だけに息もぴったり。約一時間かけてのデモンストレーションは熱いうちに終了。

翌日、早速シモナン流一皿が出来上がり。「クロベット・グリーズと呼ばれる小エビにブラックラディッシュとシブレット、シソの葉っぱに黒ゴマという演出。もちろん出汁をブイヨンに見立てて温めてサービス」。こんな夢のようなコラボレーションがすぐに完成してしまう。やっぱり料理人の世界は言葉なんかいらないんだとつくづくと感じた。

写真  シモナンさんと高木さん、初対面とは思えない息の合ったコンビ。シモナン流「ゴマ豆腐」の一皿。

 

 

vin et culture (2012.03.15)  |  未分類  | 

2012.03.09

パリ・ジュネス炸裂 !!

パリ17区の我が家の自宅前には「リセ・カルノ」という公立の中・高校がある。元大統領のシラク氏の母校だけあって卒業生名簿にもそこそこの有名人の名を連ねる同区では進学率抜群のちょっとした名門校でもある。そんなリセのコスプレ・カーニバル「カルノ・パル」(これ、フランス流ダジャレ)に出くわした。

こんな力士ならちょっと格闘(!)してみたいカワイイ女子学生や、ゴス系ロリータ風、ドラキュラ系、ヴェニスのカーニバル風、顔を真っ黒く塗りつぶした穴居人やバンドデシネ(漫画)の主人公シュトロンフ・・・と、ちょっと意味不明な集団などなど、オリジナルなコスプレにみんなとても満足そう。「何でこんな恰好してるの?」って尋ねたら、学校恒例のコスプレカーニバルなんだとか。

それにしてもフランスのジュネス(若者)のパワーには圧倒させられる。世界一人件費の高いフランスではなかなか若者を正社員として雇うことは厳しいお国柄。”若者にも雇用のチャンスを!”と企業に呼びかけながらも、いつでも解雇できるちゃっかりシステムを提案した首相自らの制度に真っ向からノンを唱えた高校生たち。校門の前にバリケードを張り授業をボイコットするという強硬な手段に訴えて、とうとうこの制度を廃止させるところまで行動で示してしまった彼らたち。

最近26歳の社会学者、古市憲寿著の『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)を読んで目からうろこ状態の私だったが、日本の若者たちの「優しさ」に不気味さを覚えながらも、しかし一方では平和的に自分たちの主張を繰り返そうとする今どきの日本人特有の表現方法 (「諦めてる」という見方をする人もいるけれど) と、このフランスジュネスのように権利を手に入れるためなら徹底交戦も辞さない姿が対局的にオーバーラップする。

団塊の世代の高齢化社会を迎えている日本だから毎回、飛行機のタラップを降りるたびに「加齢臭」を感じるのも仕方ないことだが、それにしてもメディアも社会風潮も高齢者の声ばかりを取り上げていないで、もっともっと日本のジュネスに声を上げれる機会を作ってほしいと心から願っている。古市さん、頑張ってください!

写真  パリ17区「リセ・カルノ」のコスプレの若者たち。

vin et culture (2012.03.09)  |  未分類  | 

2012.03.07

次期、フランス大統領の顔 ?

次期、フランス大統領になるか? 社会党、フランソワ・オランド候補。( 写真 AFP )

 

5月の仏大統領選に向けて保守派で現職のサルコジ氏と対抗馬の社会党オランド氏との対決が半ば泥沼化している。国民も、ちょっとうんざりというのが本音だ。昨夜もサルコジ氏が国営放送のFRANCE2に生出演して「2007年の当選当時にはプライベートの問題もあって(セシリア夫人との離婚)シャンゼリゼの某有名レストランに友人を集めて派手なパーティーをやったり、その後も経済界の有力者のヨットでセレブな夏休みを過ごしたり・・・と自暴自棄的な行動に反省するところは多々ある。しかし今は幸せな家族に囲まれて心身ともに落ち着きを取戻し万全のコンディションで大統領選に臨んでいる。」と赤裸々に語った。(サルコジ氏は敏腕政治家として知られるが、時々こうして素顔を見せることがある!)

そんな大統領の姿勢を好むか好まざるかは意見が真っ二つに分かれるところだが、これぞとばかりにオランド氏が徹底的に叩きのめそうとするのもよくわかる。「プライベートのことに3時間もかけてしゃべる時間があるなら、もっとフランス国民のことを親身になって考えるべきだ! CAC40(上場している優良企業)の法人税を今頃になって見直しするなんて言い出すのはけしからん。2007年の時点ですでに実行すべきだった!」と攻撃姿勢を崩さない。

このオランド氏のかつてのパートナーがセゴレーヌ・ロワイヤル党首で(ふたりは事実婚で4人の子供がいる)、彼女は前回2007年の大統領選時にはサルコジ氏の対抗馬だった。しかし選挙に敗れてすぐにふたりは離婚。サルコジ氏も大統領就任直後に離婚という共和国始まって以来の椿事に日本人である私は大いに頭を悩ませたものだった。この国では政治家もプライベートを優先にするんだ(!!)と。だから今回のふたりの対決もなんか因縁のような気がする。

しかし最近の世論調査の結果(IPSOS)では大統領支持率はサルコジ氏が42%なのに対してオランド氏は58%とリードしている。サルコジ氏は国民にもっと働こうと鼓舞しているだけではなく、フランス経済を圧迫しているのは移民の増加による社会保障費の負担。それを減らすには移民自体を減らさなければならないと全くまっとうな事を言っている。ちなみに先日、あるパリのレストランのオーナーシェフに聞いた話なのだが、彼のところでは皿洗いを担当するセネガル人をひとり雇っている。しかしこの不況で人件費を削らないとやっていけないので日頃懇意にしている別の店のオーナーに頼んで「もっと条件のいい職場があるからそちらに転職するように」とアドバイスした。するとセネガル人はこう言ったという。「いいえ、ほかの店にはいきたくない。私を解雇してください。そうすれば失業保険がもらえるから。そうしたら家族を連れて自国に帰ります。」

まるで嘘のような本当の話だがフランスは高福祉大国・人権大国になりすぎてしまった。そのツケを払わせられているのは税金を払っている国民自身だ。ちなみにオランド氏は「私が大統領になったら100万ユーロ以上の高所得者には75%の所得税を課す」と豪語している。フランスがユートピアの道を突き進むのは構わないけど、でも、あまりにも現在の世界同時不況からみても現実離れし過ぎている気がするのだが。

 

vin et culture (2012.03.07)  |  未分類  | 

2012.03.04

『農と更生保護ネットワーク』スタートに寄せて

2012年2月25日に発足した『農と更生保護ネットワーク』の初会合にて。 ( 写真 全国就労支援事業者機構 )

自然のもつ力って何て果てしないんだろう。土を耕し種を蒔き水をやる。その繰り返し。でも農作物をつくること以上に、そこでは様々なストーリーが生まれている。「こう天候不順じゃ作物の出来もおぼつかないな」「明日は晴れるかしら? ちょっと天気予報見てくるわ」「待って、私も一緒に行くから」・・・・。そんな会話が畑の中から聞こえてくる。普段は自分のことなんか絶対に誰かに話そうとなんかしない人たち。自分のことを自分の言葉で表現することを知らない人たち。でも話が農作物のことになるとみんな身を乗り出してくる。

社会的弱者が社会に復帰するのは並大抵のことじゃない。もうとっくに自分をあきらめてしまった人がもう一度再スタート地点に立つことは私やあなたが再出発するのとは訳が違う。しかし彼らの存在を知り、彼らの決断を少しでも理解してあげることは成熟社会を生きる私たちにとっての義務ではないだろうか?

そんな目的で『農と更生保護ネットワーク』が去る2月25日に発足された。

全国に点在している就業支援センターを「線」で結ぶことによって、それぞれが抱えている問題を共有し、解決策を一緒に探し当てていく。それは対話の社会、コミュニケーション力の向上でもある。それは何も社会的弱者だけの問題じゃない。私たちが住む社会全体の問題の解決策でもあると私は思う。

考えてみればフランスという移民社会に35年以上も住み続けてきた私は東京から来た「移民」の一人である。アフリカやアラブ諸国から来た移民と何ら変わりはない。マイノリティーという意味では彼らよりももっと少数派かもしれない。しかし、どんなつらい時にでも手を差し伸べてくれた人たちがいた。言葉がおぼつかなくて自分の意思が思うように相手に伝えられなかった時、それでも一生懸命に耳を傾けてくれた人たちがいた。そんな人たちに支えられながら、こうして長く海外の地で生きてこれたのは対話のもつ重みだった。自分とは価値観も風習も宗教観もまったく違う人たちと共生し、相手を理解することは社会の基本である。そんな基本を教えてくれたフランスという国から学んできたことを今、社会復帰を遂げようとしている人たちに少しでも役立てたら・・・・。それが私ができる唯一の社会への恩返しのような気がする。

 

 

 

 

 

vin et culture (2012.03.04)  |  未分類  | 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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