2017.08.11

あぁ、8月のパリ!

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8月の第二週目のパリは天国だ! バカンスに出かけたパリジャンで閑散とした街は、ちょっとお盆休みの東京と似ている。ほとんどの店やレストランは「夏休み休暇」の看板を軒先にぶら下げているけれど、でもこれも「恒例の行事」と割り切ってしまえばご愛嬌。パリジャンに代わり街中を勢いよくかっ歩しているのは外国人観光客だ。お目当てのブティックやレストランがみんな閉まっていてがっかりしている光景もあちこちで目にする。これも商売よりも自分を優先するパリジャンのわがままだと割り切るしかない。そんな身勝手なパリ。でも人がほとんどいないパリを体験できるのは今この時期しかない。あと一週間もすれば、またバカンスから戻ってくる人たちで少しずつ街はまた元の活気に満ち溢れてくる。そんな今しかできない体験を、今年の夏は大いに堪能したのだった。

 

写真  パレロワイヤルの近くの裏通りで見かけた光景。ブルーの扉、銀髪の紳士がひとり歩いている姿が印象的。まるで映画のワンシーンのような光景に思わずシャッターをきった。

 

vin et culture (2017.08.11)  |  未分類  | 

2017.07.01

「貴女は勇気ある人です。フランスは勇気が好きです。」--シモーヌ・ヴェイルの死

 

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「もっと女性たちの声に耳を傾けてください。法律をくぐりぬけて彼女たちは妊娠中絶をしているのです。・・・若い未婚の女性たちのことを言っているのではありません。4-5人と子供たちを育てなければならない母親たちにとっては更なる負担を強いているのです。・・・」

1974年9月、国会は騒然とした。同じ保守党の男性議員からもヤジが飛ぶ。「堕胎をさせるならナチと同じ方法でやれ! 」その議員はシモーヌ・ヴェイルがかつてアウシュビッツの強制収容所に送られていたことを知らなかった。その後、すぐに彼は謝罪をした。そして同年11月、皮肉にも野党の賛成で妊娠中絶法、いわゆる『ヴェイル法』は成立した。女性たちの権利が認められた瞬間だった。

男性議員がほとんどだった当時のフランスにおいて女性の権利を主張し、それを守ることに敢然と戦い続けたシモーヌ・ヴェイル。フランスの国民からもっとも愛され尊敬された女性だった。そんな彼女が昨日、89歳で逝った。ひとつの時代が終わった。アカデミー会員でもある作家ジャン・ドルメッソンがシモーヌ・ヴェイルがアカデミー会員として迎えられ時に贈った言葉がタイトルの言葉である。『勇気ある女性』、それがもっとも彼女を表す形容詞であることは間違いない。心からご冥福を祈りたい。

 

写真 1974年、ジスカルデスタン大統領政権下、厚生大臣を務めていたシモーヌ・ヴェイルはヤジ・誹謗・中傷・罵倒が飛び交う中、女性の権利を守るために命を懸けて戦い続けた。そんな彼女の有名な国会での演説のシーン。昨日、仏の全テレビ局はシモーヌ・ヴェイルにオマージュを捧げた。

vin et culture (2017.07.01)  |  未分類  | 

2017.06.27

あぁ~~~ファルニエンテ ! 南仏プロバンス流ライフスタイル

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「何もしないでのんびり・ゆっくり・・・ファルニエンテ ! こんな最高な贅沢が他にあるだろうか?」――真夏の観光シーズンを迎えるちょっと前の週末、南仏プロバンスにある”ムスチエ・サントマリー” という村にやって来た。ここは16世紀に遡る陶磁器の村としても有名なところで、市街地には博物館や陶器屋さんが軒を連ねて、ちょっとした観光地としても知られている。町を一歩離れると辺り一面ラベンダの畑が永遠に続いている。しかし季節的にはちょっと早すぎた感じ。フランス国内では唯一セミの声が聞こえてくるプロバンスではセミを模ったオブジェが至る所に飾られている。ちょっと日本の夏を思い出してしまった。

ちょっとお腹がすいたらアラン・デュカスが経営する「ラ・バスチッド・ド・ムスティエ」という名のホテルレストランに立ち寄るのもステキ! かつてデュカス氏がひと目ぼれして購入してしまったという一軒家(この辺りではバスチッドと呼ぶらしい)、それをラグジュアリーなホテルに改造したところが彼らしい。初めてここを訪れた人たちを心行くまで楽しませてくれるフランス流ホスピタリティー精紳。まさに世界一美しいこの場所でファルニエンテを満喫したのだった・・・・。

 

写真  『La Bastide de Moustier』          www.bastide-moustiers.com

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vin et culture (2017.06.27)  |  未分類  | 

2017.06.26

見よ! “BUFFALO BIKERS” たちの熱い視線を・・・・・

20170617_203819ブル~~~ン、ブル~~~ン、おもいっきりアクセルをふかす音だけで、通はそれが『ハーレー・ダビッドソン』だと分かるらしい。お揃いの黒の革ジャンやジャケットの背中には炎からダッシュしてくるバッファローが刺繍してある。その名も『BUFFALO BIKERS』の仲間たち。年恰好は五十路をとうに超えている人たちばかり(!?)。中には還暦のひともいる。一見、ちょっと怖そうな中年の暴走族みたいだけれど、でもみんなムチャクチャ若くてかっこいい! 勇気を奮って彼らと言葉を交わしてみると、 外観からは想像もつかないぐらいに人懐っこい人たちばかりだ。人は見かけが90%・・・というけれど、イヤイヤ、やっぱり見かけじゃない。

リーダーのパトさんはこの道30年のベテラン。2014年にバイカーたちの交流を目的に、このNPOを立ち上げた。「バイクを通じて様々な集まりをオーガナイズしているんだ。」という。それは海・山・お城見学・ワイナリーを訪ねたり・・・といった観光目的から、コンサートに参加したり、あるいは身障者たちにもバイクを体験させてあげたりと社会活動にも余念がない。その収益は身障者を支えるNPOにすべて寄付している。

日本でも中高年のバイカーたちの集まりは存在するのだろうけれど、でもこうしてハーレーを愛する人たちだけで創ったNPOなんて何てステキなんだろう! 仲間内の「遊び」だけに留まらず、こうした社会活動にも貢献している。そんなところにパトさんの思い入れが感じられる。それはまた、今のフランスの中高年の人たちのボランティア精神に通ずる。実にフランス的である。

 

写真 真ん中のサングラスをしている人がパトさん。一見、怖そうだけれど話をするととても優しくてヒューマン。中高年が第二の人生を謳歌する姿が何ともうらやましい。

 

vin et culture (2017.06.26)  |  未分類  | 

2017.06.19

アーチストがパティシエとコラボしたら?

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6月17 & 18日、二日間だけの「Les Ephemeres」というイベントに行ってきた。パティスリー界の巨匠、フィリップ・コンティチーニとアーバン・アーチストのコンゴが創作した目にも鮮やかな菓子はフィリップが制作した40X60cmサイズの巨大なビスキュイをキャンバスに見立てて、コンゴが吹付と絵筆で自由に描いていく。次々と即興で生まれる菓子にナイフが入れられる。一つとして同じモチーフはない。見た目も鮮やかながら、口に含むと生クリームとビスキュイが程よくミックスされて、そこにフロール・オランジェ(オレンジの真っ白い花のアロマは日本人にはちょっと意外感があるかもしれないが、でもこれはれっきとした食品用アロマ) が口中で広がってゆく。

フランソワ一世通りといえばパリの高級ショッピング街。パラスホテルやブランドショップの立ち並ぶシックな界隈だが、そこに突然グラフィティー(落書き)で塗りたくられたギャラリーが目に飛び込んでくる。4月からここで展覧会を開いているアーバン・アーチストというジャンルのコンゴは、かつてエルメスのスカーフのデザインを手がけたり、ドウムのクリスタルを創作するなど精力的に活動している新進気鋭作家。ギャラリー内は壁から天井、階段の手すりに至るまで自由自在に描きなぐったグラフィティーはお洒落でカッコイイ。そんな彼が「フィリップと是非、お菓子でコラボしたい」という念願が叶い、ふたりは意気投合した。初日には何と1000個近いパティスリーが飛ぶように売れていった・・・・!

 

写真 食べてしまうのがちょっと惜しいようなアーティスティックな菓子、食品用の吹付やチューブに入った食用ペインティングを大きな5絵筆に付けてビュンビュンと飛ばしていく様がモニターに映し出されていく。フィリップのラボがまさにアトリエに早変わりした瞬間だ。インタビューに答えるフィリップ。5人いるお嬢さんのうち二人とツーショット、とても優しそうなパパの表情だ!

 

vin et culture (2017.06.19)  |  未分類  | 

2017.05.29

『オメガ3脂肪酸』――食の未来を真剣に見据える熊本県合志市で出会った生産者たち

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omega36「オオヤブ ディリーファーム」の大藪裕介さんは酪農家のせがれとして生まれた。熊本県合志市(こうしし)という日本でも有数の酪農の盛んな地域で、地元熊本の飼料稲を中心とした飼料を与えた乳牛100頭ほどを飼育している。酪農業界というのは一般の人には計り知れないほどのハードルがある。それは農政や為替の影響などで生産量を10年ごとに調整しなければならないのだ。生産量が多すぎれば廃棄を余儀なくされる。しかも廃棄する場合は「産業廃棄物」扱いになり下水にも流せない。堆肥から畑土を作り飼料作物を栽培し、お母さん牛のお腹に命が宿ってから一滴の牛乳が生産されるまでに3年かかる。そんな生産調整を体験した大藪さんは『選ばれる生産者になることこそ、当牧場の酪農牧場としての存在意義に繋がる』と一大決心をした。

“ミルクの違いを表現するためにヨーグルトを作ってみよう! “。そう思い立った大藪さんは一年間かけて乳製品製造許可を取得した。しかしヨーグルト作りは考えているほど簡単な作業ではない。「初めの頃は朝は搾乳、昼は畑、夕方の搾乳が終わった後で製造を開始。日付が変わった頃に片付け終わり、明け方4時に発酵状態をチェックして、朝の搾乳が始まる…という具合でした。」しかし「ヨーグルトだからこそ、わが家のミルクの乳成分の高さをクリーム層に表現することで、目で見るだけでもミルクの品質の違いを表現することができます。」

ミルク缶の形をした可愛らしい容器に入った『MILK’ORO Aging Yogurt』は大藪さん自慢のヨーグルトだ。OROとは金色のこと。すなわち「 MILK + ORO = 金色のミルク」。まるでブルゴーニュ地方のコート・ドール(黄金の丘)で黄金の一滴を作ろうとする生産者たちのようだ。グランクリュ・ワインにも匹敵するクォリティーの高さを競う。その背景には若返り成分であるオメガ3脂肪酸が豊富なジャージーミルクを使った”熟成するヨーグルト”を誕生させた。出来立てはちょっと甘くミルキーだが、徐々に乳酸菌が増えながら熟成していくと酸味と香りが増してゆく。まさに大藪さんの話を聞いていると、ミルクの生産はフランス人にとってのワイン生産と全く同じだということに気が付かされた。生産量が多すぎれば価格が下がる。そのためにはブドウの木を伐採せざるを得ない。だから手間暇かけてでも高付加価値のある物を作っていこうとする。食の未来を真剣に考えている生産者たちは世界中広しといえどもほんの一握り。大藪さんは、そんなまっとうな生産者の一人であるのは間違いない。

 

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コケコッコー! 甲高い声があちこちから聞こえてくる。真っ赤なトサカにふさふさと生えた毛並の好い羽根、放し飼いにされているニワトリたちを見ていると、みんな健康なのがひと目でわかる。緒方夫妻が経営するエッグファームは今から40年程前、祖父の代にさかのぼる。” おいしい卵、自分たちらしい卵をつくりたい! ” そんな願いは今日にまで続いている。

はるばる隣町から車を飛ばして買いに来てくれる老紳士、ふたりがかりで大量に購入してゆく女性たち・・・みんな緒方夫妻の顔を見にわざわざここまでやってくる。店の近くには『卵の自販機』も置いてある。冷房をきかせた店内に入ると、無人の自販機の脇にはノートとペンが置いてある。購入していく人たちが自由にコメントを書き残してゆける。お客様一人一人の声を大切にしている夫妻の熱意が伝わってくる。

それでは、” おいしい卵 “の定義とはいったい何だろう?――卵を産む飼育環境はとても大切だ。そのためには「えさ」は何よりも重要な要素だ。” 鶏の健康が人の健康につながる “。 日本ではまだなじみのない「オメガ3」と呼ばれる必須脂肪酸は亜麻種子に多く含まれている。それを豊富に含む原料とした飼料を家畜に与えることにより鶏の健康を維持し、その鶏が産む卵にもオメガ3を含むという考え方だ。緒方エッグファームのパンフレットの言葉を借りるならば、「オメガ3脂肪酸とは、αリノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサへキサエン酸(DHA)などの総称で、人間が体内で作り出すことのできない必須脂肪酸のこと」。EPAやDHAは主に青魚や魚介類に多く含まれていることは既に知られており、日本人の食生活は魚中心なので比較的健康を維持してきた。しかし最近の食の欧米化により魚を食べる機会が減少していることから、このオメガ3はこれからいっそう注目に値する。

九州経済産業局・九州バイオクラスター協議会(KBCC)が提案する『フランス オメガ3プロジェクト』は、まさにこの「オメガ3脂肪酸」を提唱するフランスの有機農産物組合『BLEU- BLANC -COEUR――ブルーブランクール』(BBC)と連携し、世界中にアピールしていこうというもの。” 人の健康、家畜の健康、地球の健康”をコンセプトに人々の健康のために生産者から消費者までの過程を管理し、農業を発展させる「ヘルシーファーミング」をめざしている。

 

写真 上: 『OYABU DAIRY FARM』の大藪さん父子とフランスから来日した『Bleu-Blanc-Coeur』の国際部長のジェレミー・ルノーさん。大藪さん自慢のヨーグルト『MILK’ORO Aging Yogurt』とジェラート。下: 『緒方エッグファーム』ではニワトリに与える餌を重要視する。なかでもオメガ3を含む亜麻種子は不可欠だ。緒方夫妻を取り囲んで公益財団くまもと産業支援財団・九州地域バイオクラスター推進室プロジェクトマネージャーの森下惟一さん、同企業支援部室長の村山智彦さん、ルノーさん、通訳のラファエル=ケンジさん、そして私。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

vin et culture (2017.05.29)  |  未分類  | 

2017.04.26

パティシエ界の巨匠、フィリップ・コンティチーニが満を持しての銀座進出 !

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2017年4月20日10:30のグランドオープンを前倒しして10:20にオープンした『GINZA SIX』。新しい銀座をイメージしたコンセプトは関係者以外は一切オフレコ !という前代未聞の鳴り物入り。”いったい、ここに何がオープンするんだろう? “ そんなワクワク感が銀座六丁目という超プレスティージュなエリアで、いよいよその幕を切った。

地下2階のフードエリアには世界中からのブランドが立ち並ぶ。その一角にどんと構えるようにフィリップ・コンティチーニのショップはある。彼のトレードカラーでもあるモーヴ(薄紫色) をベースにしたシックな装い。今回のオープンに最初から最後まで立ち会った私は、フィリップが長年温めてきた構想をできる限り日本の消費者に理解してもらえるよう腐心した。「寿司のカウンターをイメージしたい !」。もう10年以上も通い続けている日本で、彼がもっとも感動しているのは寿司職人の手仕事。お客様の目の前で新鮮なたねだけをささっと握り瞬時に食べてもらう。そんな仕草をパティスリーでも表現できないだろうか?

こうして出来上がったショップ、長いカウンターには必要な食材だけが並んでいる。そしてお客様の目の前でパフェやアシェットデセールが次々にクリエイトされていく。その手さばきには一切無駄がない。そう寿司職人のように。その時の気分によって、あるいはシーズンによって様々な食材が登場する。”味の伝道師”の異名をとるだけに、その複雑な味覚は口の中で思いっきりはじける。

パリのパティスリー業界の重鎮、たくさんのスターパティシエたちが誕生する今日の菓子業界において、フィリップの存在は別格だ。そんな彼のデザートが銀座でもいただける。お客様と直接、触れ合いながら少しでも共有した時間を過ごしたい。普段見ることのできない菓子職人の厨房に一歩足を踏み入れたようなワクワク感、そこで繰り広げられるモノづくりのライブ感に貴方も浸ってみませんか!

写真  20年来、一緒に闘い続けてきた(!) ”闘士”でもあるフィリップとツーショット。世界でも初めて彼の名を冠した第一号店のオープンに心から拍手をおくりたい。『GINZA SIX』を飾る草間彌生のインスタレーション”南瓜”のバルーン。

 

 

vin et culture (2017.04.26)  |  未分類  | 

2017.04.14

さくら、あぁ、さくら!

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四季折々の花が咲き乱れる日本列島、中でも私が一番好きな季節は何と言っても春だ。春といえばピンク色。それはきっと桜の花からイメージしたものだからだろう。ソメイヨシノの淡いものから、シダレザクラのちょっと個性豊かなしっかりとしたピンク色まで、実にその微妙なバリエーションは目にも鮮やかだ。いまが見ごろの日本の桜、こうした日常生活の一コマ一コマに誰もが楽しめる桜の存在感、そのポピュラーさこそが日本人に愛される理由かもしれない。

写真 神奈川県湯河原町でみつけた桜の光景、みんながそれぞれの方法で桜を楽しんでいる姿が微笑ましい。

 

vin et culture (2017.04.14)  |  未分類  | 

2017.02.28

「BLEU-BLANC-COEUR」―ウィ、誰もが安全な食事をする権利がある!

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フランスの国旗を表す「青・白・赤のトリコロール」はよく知られているが、「BLEU-BLANC-COEUR」(ブルー・ブラン・クールと発音するが青・白・ハート の意味) という名のNPOがフランスにあるのをご存じだろうか? 今、”食の安全” というものがこれほどまでに世界中で声高に叫ばれている時代はかつてなかった。思い起こせば50~60年代ごろからすでに工場から排出される化学薬品による土壌汚染に始まり、高度経済成長期の70年代には公害という言葉が一般化した。80年代にはダイオキシン汚染による鶏肉への被害、90年代には狂牛病やスクレイピー(羊やヤギ類の神経系を冒す病気)、そして21世紀を迎えた今日では農薬による人体への悪影響が騒がれている。そんな時代を生きる我々にとって毎日口にするものがどれだけ大切なものか、フランスでは一部の農民たちが声を上げて立ち上がった。” 動物に良質の餌をやれば、それを食する我々人間も健康になれる ” 。理にかなった考え方だ。

2001年、今から16年前に立ち上げられたこのNPOは、” 食物連鎖 ” の重要性から食というものを業界全体のつながりで考えていこうとスタートした。現在では658社の関連企業、6000軒の農家、1000人以上の管理栄養士をはじめとする医療関係者で構成されており経済効果は10,5億ユーロに達している。(2016年度)  オメガ3・DHA・ポリフェノールといった成分を多く含むルピナス・イワオウギ(いずれもマメ 科の植物)・ソラマメ・エンドウ豆・麻….etc. などを家畜用の飼料に混合させ、よりバランスのとれた多品種の飼料を与えている。単作や過度な動物性肥料を排除したこんなやり方は、かつてのフランスでは当たり前に農家が実践していたことだ。しかし、現在の農業の工業化・効率主義への反省により、再びこうした生産を実践する農家が増え始めている。それによって牛乳はよりクリーミーに、牛肉はより霜降り状態の良質なものへと変化している。

「BLEU-BLANC-COEUR」のラベルは品質保証のマークでもある。その考え方に100%賛同しているシェフがひとりいる。パリの一つ星「レストラン・フレデリック・シモナン」のオーナーシェフのフレデリック・シモナンさんだ。「僕たち料理人にとって最高の料理を提供するためには長年の経験・深い探究心・そして何よりも高品質の食材が必要です。」と前置きをしたうえで、「農業は今、深刻な人手不足のうえ経済的にも困窮している。” 手遅れになる前に” 何かアクションを起こさなければならない。そのために僕たち料理人ができることとは真面目に良質の食材を作っている農家を経済的に支えること。そのためにBLEU-BLANC-COEURのラベルの食材を店で提供し、毎回、ひとりのお客様の売り上げから5ユーロを支援に充ててゆきたい。」とシェフは語る。

2017年より、シモナンさんは同NPOの親善大使を務めている。そしてこの活動を広く仲間の料理人たちとも共有していこうと考えている。

 

写真 「BLEU-BLANC-COEUR」のロゴ。「OUI 、誰もが安全な食事をする権利がある! 」と書かれている。2月23日にフレデリック・シモナンのレストランで行われた記者発表で熱く思いを語るシモナンシェフ、左から「BLEU-BLANC-COEUR」のプレジデントのジャンピエール・パスケさん、シェーウ゛ルチーズの生産者のヤニス・マンダンさん。「BLEU-BLANC-COEUR」の食材を使ったシモナンシェフの料理、「半熟卵とトピナンブールのムスリンとフォアグラのキャラメルソース、トリュッフ添え」「炭火焼のボワトゥー産小鳩、ビーツを添えたルアン風ソース」「シェーウ゛ルチーズのデザート、洋ナシのコンフィとムスリンソース」

www.fredericsimonin.com

www.bleu-blanc-coeur.org

 

 

vin et culture (2017.02.28)  |  未分類  | 

2017.02.02

テット・ド・ウ゛ォ― (仔牛の頭) を食べる至福のひと時

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パリの名店「APICIUS」のシェフ、ジャンピエール・ヴィカ゛トさんがエネルギッシュに” テット・ド・ウ゛ォー” にナイフを入れる。その傍らのテーブルにずらっと並んだ紳士たちは「クラブ・デ・サン」(100人会) と呼ばれる大変クローズされた会のお歴々の方たち。そんな彼らの垂涎の一皿が、この仔牛の頭のがぶりつきなのである。

1793年1月21日10h22、フランス最後の国王ルイ16世がコンコルド広場で断頭台の露と消えた。1789年のフランス革命によって、それまでの絶対王政から立憲王政、そして共和制へと変貌を遂げたフランス、まさに市民が市民のために勝ちとった市民革命だともいえる。以来、今日までフランスは共和国として君臨している。

毎年、この日がやってくるとフランス全国の都市ではロワイヤリスト(王党派)とレパブリカン(共和党派)に分かれて、それぞれがそれぞれのの想いを抱いてその日を迎える。王室の象徴でもあるヴェルサイユ宮殿では盛大なミサが行われる。「王侯貴族こそが世界に誇れるフランスの宮廷文化を築き上げたというのに、なぜ国民によって裁きを受け、裁判にかけられ処刑されなくてはならないのか?」ジャケットの襟に王室のシンボルマークの白百合型のピンズをつけた青年が淋しそうな表情をしている。一方「自由・平等・博愛の精神こそが健全な市民の証し。こうして今、自由を謳歌できるのはフランス革命が起こったからこそ。ヴィヴ・ラ・フランス!」と、気勢を上げるのはジャーナリストや作家・哲学者などが一堂に会したテーブルだ。

そんな”仔牛の頭”を丸ごと煮込んだ古典フランス料理を口角泡を飛ばしながら食すのである。仔牛の頭こそ王党派の人たちを意味する”隠語”なのだ。

写真 シャンゼリゼ大通りの裏に堂々と建つ邸宅レストラン「APICIUS」、そのオーナーシェフのジャンピエール・ヴィカ゛トさんは、こうした古典料理をこつこつと作りあげては次世代の料理人たちに継承する。25人のサービス人と25人の料理人に支えられたこの名店は、まさに高級フランス料理の神髄を教えてくれる。「APICIUS」restaurant-apicius.com

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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