2010.10.24
日本でいえばさしずめ妻夫木聡か福山雅治といったところだろうか。今、もっとも旬なフランスの若手人気俳優のギィヨ―ム・カネが3本目の映画を製作した。タイトルは『小さなハンカチ』( Les Petits Mouch0irs ) 。いわゆる男女8人の青春群像劇だ。タイトルの由来にもなった「ハンカチ」とは、「誰もがいつでも、どこでも自由に持ち歩くことが出来て、しかも涙を拭ったり鼻をかんだりと(失礼! フランス人はティッシュの代わりにハンカチを使う) 簡単に取り出せる必需品。そこから、この映画は誰もが必ず通り過ぎる日常の何げないひとコマ、ひとコマを描きたかった」とカネはいってる。
ストーリーはひとりの男がバイクにまたがって夜明けの街をはしっていると突然、交差点から飛び出してきたダンプと衝突。瀕死の重傷で病院に運ばれる。それを知った彼の友人たちが駆けつけてみると、その変わり果てた姿に一同ショックをうけ言葉を失う。毎年、恒例の夏のバカンス、気分転換にと今年もみんなで海辺の別荘に出発する。しかし、みんなの心の中では何かが変わってしまった。結婚生活に倦怠感を感じる夫は長年親しくしていた年配の男友だちに「恋心」を打ち明ける。突然の告白に友人はショックを受けたのは言うまでもない。ある女性は「不感症」を理由にひとを愛せない。そしてべつの男性は長年付き合っていた恋人から「別れ」を告げられる・・・。みんな、それぞれがそれぞれの問題を抱え、悩み傷つき、必死で乗り越えようとしている。しかし最後に訪れた仲間の死―それによって、みんなが新たな一歩を踏み出していくことを決心する・・・。
かつて日本でも『若者たち』とか『ふぞろいの林檎たち』といった青春の機微を描いた群像劇が大ヒットした時代があった。もう取り戻すことが出来ない青春の一ページ。そんな日々を様々な登場人物によって演じている姿は、誰もが自分の姿に重ねて観たものだ。カネ自身も数年前にブランクに陥り、その出口を見つけようともがいていた時期があった。その時に一番大切なものは友情であることに気がついた、と告白している。秋が深まろうとしている今日このごろ、こんな映画を観賞しながら、ふと自分のまわりを見つめ直すのもいい機会かもしれない。
写真 『小さなハンカチ』の看板をかかげるパリの映画館