2015.10.26
パリのヴァンドーム広場といえば世界中の高級ジュエラーの老舗が立ち並ぶ界隈として有名だが、そのなかでもひときわ目立つのがショーメのショーウィンドウ。その本店の扉を開けると現在、”ミュゼ・エフェメール”、すなわち期限限定のミニ展覧会が開催されている。テーマはナチュラリズム(自然主義)。『牧歌的散策』とまるでフランスの印象派を髣髴とさせるタイトルだが、1900年代のベルエポックから現代にいたるまでの植物や昆虫をテーマにしたハイジュエリーが並んでいる。
創立1780年、235年の歴史を誇るショーメはナポレオンがジョゼフィーヌに贈ったティアラの制作で有名なメゾンだが、それ以来2000点以上の王侯貴族を対象にした王冠やエグレット、ティアラを作り続けてきた。その膨大な資料の中から選りすぐれたショーメの代表的作品を、当時のオリジナル、白黒の写真、模型、精緻なデッサン画などハイジュエリーが誕生するまでの過程がよく分かる一級の資料が展示されている。「ひとりでも多くの人にショーメの職人芸を見てほしい」。そんなメッセージが伝わってくるこの展覧会、ジュエリー好きだけではなくフランスの歴史や文化、職人芸に興味のある方にはパリを訪れる機会があったら是非とも訪れてほしい貴重なアーカイブである。
写真 豊穣を意味する麦穂が風になびいているモチーフを模ったダイアモンドのティアラは1811年、ナポレオンの皇女、ジョゼフィーヌのために造られたもの。(CHAUMET: 12 Place Vendome Paris )