2010.05.16
ヨーロッパ中の美術館がタダで散策できるなんて!そんな夢のような「ラ・ニュイ・ヨーロぺアン・デ・ミューゼ」という催しが15日の夜から16日にかけていっせいに行なわれた。今年で6回目。フランス全国1300ヶ所の美術館――ルーヴルからオルセー、グランパレ、名もない小さな村の”オラが美術館”まで、とにかくすべての美術館という美術館が無料で一般公開されるからアートマニアだけじゃなくて普段、美術館なんて・・・という人たちにも大人気だ。昨年は何と180万人の人たちが足を運んだというから凄い!たった一晩のためだけに派手なライティングしたり巨大スクリーンに映像を写しだしたりと、みんな自分たちの美術館をアピールできる最大のチャンスだと考えているのだろう。
美術館といえば、そうそう、今週オープンしたばかりのメッツ市の”ポンピドー分館”も勿論、今晩はタダで見学できる。こちらはフランス東部、ロレーヌ地方というかつて炭鉱で栄えた街がいまでは貧困の象徴となったメッツ市を経済活性化させようと、当時の文化大臣(現在のヴェルサイユ宮殿館長)とメッツ市長が手を組んでできた大変’政治性’の強い美術館だ。建築には日本の坂茂氏が起用され、そのユニークなデザインも話題になったことはすでに我々日本人も承知のとうりだ。
オープニング時にはサルコジ大統領はじめ、ミッテラン時代の文化大臣ジャック・ラングなど錚々たる政治家のオンパレード。そのあたりにフランスの文化がどれだけ政治と絡んでいるか、文化はイコール経済活性化の起爆剤にすぎないと考えているフランス人の割り切りが見てとれて興味ぶかい。歴代の大統領たちが自分色を出すために様々な美術館を建ててきたが、サルコジ大統領はグランパレを自分のものにしたいらしい。
それにしても先日訪れた世界文化遺産モンサンミシェルに日本人観光客が大勢来ていたことは前にもお伝えしたとおりだが、我々日本人というのは本当に文化・芸術が好きな国民性だとつくずく感じる。世界中のモニュメントに寄与しているんじゃないか!今度のポンピドー分館にも日本人建築家を起用したのも、ひょっとしたら日本人にお願いすれば日本人観光客がたくさん来てくれるのでは・・・というフランス人の皮算用がコンペの時になかったとは否定できないように思うのは私の考えすぎだろうか?
(写真 ロダン美術館で ラ・ニュイ・デ・ミューゼのポスター)