2017.02.28
フランスの国旗を表す「青・白・赤のトリコロール」はよく知られているが、「BLEU-BLANC-COEUR」(ブルー・ブラン・クールと発音するが青・白・ハート の意味) という名のNPOがフランスにあるのをご存じだろうか? 今、”食の安全” というものがこれほどまでに世界中で声高に叫ばれている時代はかつてなかった。思い起こせば50~60年代ごろからすでに工場から排出される化学薬品による土壌汚染に始まり、高度経済成長期の70年代には公害という言葉が一般化した。80年代にはダイオキシン汚染による鶏肉への被害、90年代には狂牛病やスクレイピー(羊やヤギ類の神経系を冒す病気)、そして21世紀を迎えた今日では農薬による人体への悪影響が騒がれている。そんな時代を生きる我々にとって毎日口にするものがどれだけ大切なものか、フランスでは一部の農民たちが声を上げて立ち上がった。” 動物に良質の餌をやれば、それを食する我々人間も健康になれる ” 。理にかなった考え方だ。
2001年、今から16年前に立ち上げられたこのNPOは、” 食物連鎖 ” の重要性から食というものを業界全体のつながりで考えていこうとスタートした。現在では658社の関連企業、6000軒の農家、1000人以上の管理栄養士をはじめとする医療関係者で構成されており経済効果は10,5億ユーロに達している。(2016年度) オメガ3・DHA・ポリフェノールといった成分を多く含むルピナス・イワオウギ(いずれもマメ 科の植物)・ソラマメ・エンドウ豆・麻….etc. などを家畜用の飼料に混合させ、よりバランスのとれた多品種の飼料を与えている。単作や過度な動物性肥料を排除したこんなやり方は、かつてのフランスでは当たり前に農家が実践していたことだ。しかし、現在の農業の工業化・効率主義への反省により、再びこうした生産を実践する農家が増え始めている。それによって牛乳はよりクリーミーに、牛肉はより霜降り状態の良質なものへと変化している。
「BLEU-BLANC-COEUR」のラベルは品質保証のマークでもある。その考え方に100%賛同しているシェフがひとりいる。パリの一つ星「レストラン・フレデリック・シモナン」のオーナーシェフのフレデリック・シモナンさんだ。「僕たち料理人にとって最高の料理を提供するためには長年の経験・深い探究心・そして何よりも高品質の食材が必要です。」と前置きをしたうえで、「農業は今、深刻な人手不足のうえ経済的にも困窮している。” 手遅れになる前に” 何かアクションを起こさなければならない。そのために僕たち料理人ができることとは真面目に良質の食材を作っている農家を経済的に支えること。そのためにBLEU-BLANC-COEURのラベルの食材を店で提供し、毎回、ひとりのお客様の売り上げから5ユーロを支援に充ててゆきたい。」とシェフは語る。
2017年より、シモナンさんは同NPOの親善大使を務めている。そしてこの活動を広く仲間の料理人たちとも共有していこうと考えている。
写真 「BLEU-BLANC-COEUR」のロゴ。「OUI 、誰もが安全な食事をする権利がある! 」と書かれている。2月23日にフレデリック・シモナンのレストランで行われた記者発表で熱く思いを語るシモナンシェフ、左から「BLEU-BLANC-COEUR」のプレジデントのジャンピエール・パスケさん、シェーウ゛ルチーズの生産者のヤニス・マンダンさん。「BLEU-BLANC-COEUR」の食材を使ったシモナンシェフの料理、「半熟卵とトピナンブールのムスリンとフォアグラのキャラメルソース、トリュッフ添え」「炭火焼のボワトゥー産小鳩、ビーツを添えたルアン風ソース」「シェーウ゛ルチーズのデザート、洋ナシのコンフィとムスリンソース」
www.fredericsimonin.com
www.bleu-blanc-coeur.org