2016.10.13
今年で3回目を迎えた『ソーシャルファーム・ジャパンinつくば』が10月8~9日の二日間、つくば国際会議所で開催された。今年のテーマは「就労困難者の仕事づくりを経済の視点から考える」と題して「我が国のソーシャルファームの在り方」「農業と福祉でどう経済を回していくのか~日本とフランスの事例をもとに」「デザインの力で製品を商品に変える」「ソーシャルファームが経済的に自立するためには何が必要か」という多角的な見方でソーシャルファーム関係者の取り組みが披露された。
何らかの理由によって働くことが困難な社会的弱者たちに働く場を提供するためのビジネスを行う企業を”ソーシャルファーム”と呼んでいるが、私は自然農業で就労支援を行っているフランスのNPO『ジャルダン・ド・コカーニュ』を2009年より取材し日本に紹介し続けている。今年もまた、その代表をつとめるジャンギィ・ヘンケルさんと共に来日した。
「日本人は高福祉国家を名乗るフランスでは潤沢な補助金が国から支給されていると思っているかもしれないが、それは間違いです!」。そんなストレートな一言ではじまったヘンケルさんの講演、景気が悪化している今のフランスではNPOであっても普通の民間企業と同じように資金繰りに奔走しなければならない。それには社会的意義があり、多くの人たちを巻き込み、革新的なアイデアで社会をイノベーションしていくことに投資すべきだという。そんなヘンケルさんの経営者としての視点は日本の現場で働いている人たちにも勇気と希望を与えてくれたのではないか? 「お金の話をすることは決してタブーではない」という意識になってくれれば今回の私たちのミッションは遂行できたのではないかと思う。
写真 『第三回ソーシャルファームジャパンサミットinつくば』委員長の上野容子氏と、昨年パリ郊外のジャルダンで研修した『鹿嶋パラダイス』の蓜島一匡さん、ヘンケルさんと私。NPO法人「自然生クラブ」では知的身障者たちと共に暮らしながら産業としての農業ではなく持続可能な農業地域循環農業を実施し、約120軒の野菜会員に宅配している。労働の合間には演劇やアート活動に精を出している。『自然生クラブ』の施設長の柳瀬敬さんとヘンケルさん。フランスの哲学者シャルル・フーリエの”空想的社会主義”から学んで自然生クラブを立ち上げたという柳沢さんは、フーリエの故郷でもあるブザンソンで育ったヘンケルさんと意気投合。ヘンケルさんもまたフーリエの教えからジャルダンを立ち上げた。「まさか筑波山のふもとで仏の哲学者フーリエの話が出るとは想像もしていなかった!」と興奮気味。9月に出版されたソーシャルファームジャパンのメンバーによる『ソーシャルファーム~ちょっと変わった福祉の現場から』(NPO法人コミュニティシンクタンク あうるず編) を掲げる理事の上田拓弥さんと畑山昌平さん。