2016.09.19
テロの厳戒態勢が敷かれているここフランスで、毎年恒例の『Journees Europeennes du patrimoine』(ヨーロッパ文化遺産ディ) が9月17&18日の二日間、予定通りフランス全国で一斉に行われた。これは普段は非公開の文化的価値のあるモニュメントや建物を二日間限定で一般の人たちにも公開しようという催しで、1984年の初回以来、大変な人気を博している。今年は全国17000ヶ所の文化遺産が一般公開されて、約1200万人近い人たちが訪れている。昨今のテロの影響で入場には警官も多数出動して重々しい雰囲気、入口では身分証明書の提出から、ひとりひとりの持ち物検査が入念に行われるなど、例年以上にチェックが厳しい。
日本の国会議事堂にあたる” Assemblee Nationale ” (国民議会) を訪れた私は、朝、9h30からのスタートに7h30には現場に到着。というのも一昨年、訪ねたエリゼ宮(大統領官邸)では8時間かけて並んだ苦い経験があるからだ。しかし、今年はテロの脅威からか観光客が激減していることもあり、訪れる人の数も少ないように感じる。2時間待ってすんなりと中に入れたのは本当にラッキーだ。今年のテーマは「文化遺産と市民権」。イスラム過激派による内戦からシリアやイラク、アフリカなどの難民が押し寄せている現在のヨーロッパに於いて、改めて自国の歴史・文化をもう一度見直し、仏国民としての誇りを取り戻そうというメッセージが伝わってくる。
議事堂の心臓部でもある本会議場はTVなどで中継されて目にするものよりも実際にはとてもコンパクト。しかしその議長席と演壇をまじかに見ると、まさにこの場所でフランスの政治が行われている〈現場〉であることにちょっと胸が高鳴る。歴代の国会議員たちの口角泡を飛ばしながら左右がお互いに主張する光景がまぶたにチラつく。そんなリアルな体験に、まさにフランスの二院制政治の大舞台に今こうして自分が立っていられることに不思議な感覚を覚える。こうして文化遺産を潔く公開し、一人でも多くの人たちにフランスの底力を見せることがテロリストの脅威に屈しないフランス人のプライドでもあり、懐のでっかさでもあることを感じた一日だった。
写真 赤いビロードのベンチシートの最前席には「大臣席」と書かれた一角がある。歴代の政治家たちは一度はここに座ることを夢見ているのだろうか。セーヌ河岸より見た国民議会の正面、ブルボン宮の建物を使っている。初代の議長を務めたジャック・シャバンデルマスの名を記した金のプレート。隣接するお洒落な” 仏共和国グッズ “を売るショップのショーウィンドウには赤白青のフランスの国旗に見立てた実用的なマグカップなど、フランスっぽいお洒落なデザインが多い。