2016.06.04
ヌーヴェルヴァーグ、ヌーヴォーレアリズム、ヌーヴォーフィロゾフ・・・まさに戦後の復興期、高度成長時代を表す「Trente Glorieuse 」(栄光の30年という意味) と呼ばれていた1945~1975年の30年間、ヌーヴォーとか ヌーヴェルという”新しい”という形容詞がやたらともてはやされていたこの時代、人々は新しい価値観やライフスタイルの到来を待ち望んでいたのかもしれない。それはフランスが最も輝いていた時代でもあった。
そんな中に誕生したのが「ヌーヴェル・キュイジーヌ」と呼ばれる新しい食のムーブメント。その名付け親がアンリ・ゴー&クリスティアン・ミヨというふたりの食ジャーナリストコンビであった。今までのバターやソースをたっぷりと使った重たい古典料理におさらばし、もっと食材そのものの美味しさを引き出すために火入れや調理方法に新しい技術を取り入れようという食の一大革命であった。
そんなふたりの名前を冠したフランスの美食ガイド『ゴー・エ・ミヨ・ジャポン』の日本版出版決定の記者発表が、去る5月31日、在日仏大使公邸において行われた。フランスといえば美食大国、数多あるレストランを独自の評価でランク付けすることにかけては世界でも類を見ないガイドブック王国。すでに赤い表紙でおなじみの” ミシュラン ” やフランス外務省が後押しする” ラ・リスト” などが有名だ。
「今までとは一味違うガイドブックを作ろう! 」と、私たち編集委員会では3つのマニフェストを掲げた。「料理人・サービス人といった飲食のプロフェッショナルを対象にしていること」「地方の料理人・生産者・産業にも光を当てること」「若い次世代の料理人を発掘すること」。まさに地域の小さなテロワール(風土性)や地方の豊かさをひとりでも多くの人たちに知ってもらいたい、ひいてはそれが日本の経済全体をけん引する原動力になるべく道しるべのような存在であり続けたい。それが『ゴー・エ・ミヨ・ジャポン』の存在意義でもある。
すでにフランスでは1972年の創刊以来、”ヌーヴェルキュイジーヌ・フランセーズ” は 世界中の料理に計り知れない影響を与え、また料理の進化への起爆剤としても認知されていった。ポール・ボキューズやアラン・シャペル、トロワグロ兄弟・・・など、それまで地球の裏側にいた人たちには知る術もなかった真摯にモノづくりをしている料理人たちがゴー・エ・ミヨによってその存在を世界中の人たちに知ってもらえることに成功した。
食の世界でもグローバル化が進んでいる今日、小さな地方性に隠れた宝物が眠っていることを改めて世界中の人たちに問いかけようと、いよいよ日本も15ヶ国目として世界に向けて登場する。『ゴー・エ・ミヨ ジャポン』は12月3日発刊、約300~400店舗が掲載される予定である。
写真 『ゴー・エ・ミヨ ジャポン』出版に向けて立ち上げられた編集にかかわる人たち。2016年、仏版ゴー・エ・ミヨでその年の「最優秀シェフ」に選ばれたアレクサンドル・ゴチエもわざわさ応援のためにフランスから駆け付けてくれた。 (写真 アート5)