2015.07.28
今から一年前の丁度7月、フィンランド・スウェーデン・ノルウェーと北欧3ヶ国の食の旅を敢行した。あの時は「デンマーク」だけはまた別の機会にしようと思っていた。そのぐらい、今デンマークの食が面白い。長い冬を前に、ほんのわずかな夏の期間中に野菜やハーブ・エディブルフラワーを自分たちで育てて食料にする。残ったものは保存して冬に備える。まさに食べ物を大切にしようとする人たちの生活の知恵みたいなものを肌で感じた旅だった。
まず最初に訪れたのが「AMASS」。オーナーシェフのマシュウ・オーランドは15歳で料理人になろうとサンディアゴでキャリアをスタート。その後もNYKやロンドンなど世界中の錚々たる店で修業したあと、イギリスのミシュラン3つ星店、ファットダックでノマのレネ・レゼピと出会ったことが彼の運命を変えることになった。レネに乞われて2年間、彼のもとでセカンドを務めた後、独立を決めた。
ちょっと知的なすらっとした外見、料理人としてどう食材と付き合わねばならないのか? レストランの周りには自家製ハーブを育て、キッチンから出る食物廃棄物をコンポストにして保存しながら持続可能な農業を実践している。こういう姿勢に新しいジェネレーションの料理人としての立ち位置を感じる。
まず、前菜の前に注文したのが自家製の「Aged meat plate」、4か月間寝かせて作った豚のシャキュトリーの盛り合わせだ。ビールでマリネしたベーコン、ブーダンノワール、プロシュート、セロリ―を発酵させて作ったピクルスを添えるなどした様々なアイデアにびっくり。レストランに入ってすぐ隣に肉を保存するためのガラス張りケースが置かれているが、その中でじっくりと肉を保存しているのが見れるので、ついつい食欲がそそられてしまう!
アミューズはオニオンヌーボー(新玉ねぎ)チキンのレバーに、野ばらの実、マッシュルームを発酵させたものを細かく砕いてふりかけのようにまぶしたもの。すごく新玉が柔らかくて食べやすい。プレゼンテーションも斬新だ。料理の一皿目はサバ類の魚の一種で、かなり塩味をきかせたペーストのようなものにレモンを焦がしてキャラメル状にしたものを合えている。これをふっくらとしたピタパンのようなものに付けて食べる。次はニシアンコウとローストしたチキンの皮、自家栽培しているハーブやエディブルフラワーをたっぷりと添えているのでサラダ感覚だ。次はビーツの根の部分、酸味の効いたチーズの凝乳、セイヨウノコギリ草の苦みが美味しい。魚の一皿はヒラメをバージンバターでローストして庭で栽培したレタス・サラダ菜にオリジナルビネガーのドレッシングで味付け。最後はオーガニックの豚肉、ムラサキベンケイソウと呼ばれる肉質感のある食感が面白い野菜で覆われているので、こちらもサラダ感覚で食べられる。食後のデザートは乾燥させた苺ジャムを薄くスライスしてスパイスの効いたオレガノとブラックペッパーで味付けしたミルククリーム。ミニヤルディーズに代わるものとして自家製ルバーブのペーストとハーブの効いたパウンドケーキ。チョコレート味の薄いチュイル。
野菜やハーブ、エディブルフラワーをふんだんに使った料理はとても健康志向が強い。しかし味付けが多分「デンマークの家庭料理」をベースにしているのではないかと思わせるような、とても各皿とも個性を主張している。日本人の舌にはとても合っている。またお皿やテーブルセッティングなど北欧デザインを所々感じられるので日本の民芸のような温かさがある。これも日本人には馴染みやすいだろう。
「Amass Restaurant」 Refshalevej 153 1432 Copenhagen Denmark
tel: +45 43584330 info@amassrestaurant.com