2014.07.29

ノルウェーという国のしあわせの形

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ノルウェーではフィヨルドを見ようと、オスロからベルゲンまで鉄道の旅にでた。丁度、夏休みということもあり実に子供がたくさん乗っている。結構イクメンしているパパの姿も目立つ。子供専用車両というものもあり、何と託児所まで備わっておりシッターとおぼしき女性までいる。この車両には当然子供連れ家族がたくさん乗っているわけで、そこいら中に子供が右往左往している様子は、まるで動物園さながら。しかし、みんな優しそうに子供たちを見守っている。一方トレッキングに来た中高年グループは楽しそうに笑いながらはしゃいでいる。その姿は実にパワフルそのものだ。バックパック姿の若者たちも自転車で移動するのだろう。ヘルメットを片手にサイクリングの服装をしている。列車が駅に到着するたびに駐輪場がみえる。きっとレンタル自転車のシステムもしっかりしているのだろう。

各自各様、こうしたインタージェネレーション間のつながりがごく自然な形で行われていることに、何かこの国の幸せな感じが漂ってくる。超福祉国家の成功例かもしれない。消費税24%、高いな・・・と思わずにはいられないが、でもそれでもこうしてみんながゆったりと生きられる社会を作っていく上では当然の支出ともいえる。政治家も40代を中心とするジェネレーションがしっかりと国をけん引しているし、女性の意見も十分に反映されている。そして” どんな国家を作っていったらいいのか? ” といった未来への見取り図もしっかり出来上がっている。改めて「成熟した大人の国」というイメージを抱いた。

勿論、一年のほとんどが雪と氷で覆われ極寒の冬をじっと耐えるように生きている彼らは忍耐強く、勤勉な国民性であることは想像に難くない。夏のほんのわずかなシーズンに開放的になっている彼らを見て” しあわせそう! ” なんて勝手に言う私自身も軽すぎるかもしれない。でも、明らかに外国人として傍観する私がそう思えることは、きっとほかの外国人観光客も同じ思いを抱いているに違いない。森と湖に囲まれた自然の美しい国。国土のほとんどが山林地帯だから人が住めるスペースは限られている。しかし、そんな中で人が幸せそうに生きられる余裕みたいなもの。日本もこうした北欧三国のような生き方を選択してもいいのでは・・・。そんなことを考えさせられた旅だった。

 

写真 鉄道列車の車中で見かけた子供たち。何て可愛らしいの!! 登山電車での旅は途中風光明媚なスポットは停車してくれる。雪解け水が大きな滝となってる姿は圧巻だ。

 

 

vin et culture (2014.07.29)  |  未分類  | 

2014.07.28

「フィンランド」食いしん坊の旅 3.―SPIS

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最後の晩は「SPIS」という18席あまりの小さな店に行った。これぞ、まさしく” 今のノルディック・キュイジーヌ! ” と思わせてくれる店である。正直いって何を食べているのかよく分からない! すべての食材を一度デフォルメして食物の持つ従来の姿とは似て非なるものへと変化させているのはとても興味深い。そして味も日本人好みのとてもデリケートで繊細なもの、量に関してもしかりである。以前、パリの某有名シェフが日本のやはり一流料理人とコラボした時のプレスランチに行ったときのこと、臨席していたパリの一流ジャーナリストが「何を食べているのか全く分からないので美味しいのか美味しくないのかコメントできない・・・」と言っていたのを思い出した。まさに今の私もまったく同じ境地、コメントのしようがない。しかし厨房ではシェフのジャコさんをはじめ、ふたりの若い料理人が集中して料理に取り組み、そしてメートルドテル&ソムリエを兼任するオーナーのジャニさんは心から誠意のこもったサービスをしてくれる。改めてこの国の人たちがとても勤勉であり、また努力家であることに脱帽する。そしてデザインの国フィンランドを象徴するかのような器の色・柄・形と感性が統一されていることも評価してあげたい。パンも自家製パンをひとつひとつ丁寧に頃合いをみながら真心こめてにサービスしてくれる。アペリティフにはフランス産ガイヤックの亜硫酸無添加の発泡酒を変形グラスでグイッといただく豪快さ! /フェンネルの入ったライ麦のチュイルはちょっと硬いお煎餅のよう/じゃが芋・人参・ポロねぎ・根セロリ―を木製皿に盛った前菜/ヤギのミルクとおぼしき(?)スープ、フィンランド産シリアルを混ぜ合わせた一口ポタージュ/塩バターに更に粗塩をのせて/自家製のそば粉のパン/季節野菜のクーリソースを使ったサラダ/胡瓜のピクルスと玉ねぎのピクルス、ピーナッツ、保存食を使ったベーシックスタイル/別バージョンの自家製パン/ほぼ生に近い帆立貝と甲殻類で出汁をとっエマージョンソース/口直しのインゲン豆のソルベ/一皿目のデザートはホームメイドケーキに羊のフレッシュミルクのクリーム/リュバーブのケーキにベリー系のアイスクリームを添えて/コーヒーにはミニヤルディーズが付いてくるが”レゴ”のブロックを皿に見立てて、その上に盛っているプレゼンが面白い

こうした街場の小さなレストラン、きらりと光る個性を持った料理人たちが切磋琢磨しながら、そして住人達に愛されながら存続していく町、それがヘルシンキの底力のような気がする。

 

SPIS     Kasarmikatu26    00130 HELSINKI  FINLAND / tel: +358 45 305 1211      www.spis.fi

 

vin et culture (2014.07.28)  |  未分類  | 

2014.07.28

「フィンランド」食いしん坊の旅 2.―NOKKA

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2日目の晩はヨットハーバーに面するかつての倉庫とおぼしき赤レンガ造りの建物を改造した店「NOKKA」を訪れた。店の入れ口には「ヘルシンキメニュー」と書かれたステッカーが貼ってある。これは、マリアーナ・ネリマルッカさんという食ジャーナリストの話によれば、ヘルシンキ市内で約20軒ほどセレクトされた店にだけ許された表記で、フィンランドの旬の食材を使い、フィンランド料理の伝統を尊びつつ現代風にアレンジしたお料理を提供する店という定義だそう。メニューにも「V.I.P=Very Important Producers」や「Very Confidential Producers(非常に信頼できる生産者)」といった表現を使うなど、料理人と生産者の相性というものを最大限アピールしている。特に凍てつく冬の間は燻製・塩漬けといった保存食が中心のフィンランドだが、今回は夏の真っ最中、市場には様々なベリー系フルーツや茸、フレッシュなサラダ・ハーブと想像以上の豊富な野菜にはびっくり。「旬の食材が短いフィンランドでは、メニューもシーズンごとに変化に富んでいますよ! 」とNOKKAのサービスをしてくれた女性が教えてくれる。

6皿のメニューはこんな感じ。突出しはガスパッチョ風トマトの冷製スープ/前菜は淡水魚・鯉科の魚を燻製にして作ったちょっとこってり系のムース、ライ麦をベースにした固めのチュイルとホースラディッシュのスライスと共にいただく/魚の白子の入ったサヤエンドウのグリーンポタージュ/メインは子羊、弱火で蒸し煮にしたものとサーロインの部分を低温調理でほんのりと火入れしたもの、その柔らかさには目を見張る。カリフラワーと大麦をミックスさせた付け合せに肉汁をソースに/フィンランドのヤギのチーズ/お口直しのシャーベットは洋ナシの味、真っ白く冷凍にした御影石の小皿は時間と共に色が緑色に変化していく/真っ赤な苺とヨーグルト、フィンランド産の牛乳を使ったアイスクリームとメレンゲ。

ヘルシンキの町は短時間の間に「食の街」へと進化を遂げている。首都圏という地の利を生かしてフィンランド中の良質な生産者の食物が手軽に入手できるようになったことも一因だろう。だからこそ、作り手たちの意識も変わりつつある。みんな意欲に燃えている。生産者・料理人と” みんなでレベルを高めていこう ” 、そんな意識が芽生えていることを痛感した。ちょっと、ここ当分は目が離せない!

 

NOKKA  Kanavaranta  7F  00160  HELSINKI  FINLAND / tel: +358 9 6128 5600    www.ravintolanokka.fi

 

vin et culture (2014.07.28)  |  未分類  | 

2014.07.26

「フィンランド」食いしん坊の旅 1.―OLO

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いま、北欧の料理人たちが熱い。デンマークの「NOMA」が世界のベストレストランに選ばれて以来、近隣諸国の若手シェフたちも触発されているのだろう。次から次へと自由に伸び伸びと料理にチャレンジしている。それに加えて国が国策として観光業に力を入れているから、おのずと料理にも力が入る。そんなサポートを受けているせいか、どこも活気に満ち溢れている。という訳で今回は「食いしん坊」の旅に出かけてみることにした。ところが7月中旬からサマーホリデーに入っているところがほとんど。ちょっと残念だったが、それでも今回ディナーに訪れた「OLO」はなかなか興味深い店だ。フィンランドの首都、ヘルシンキの中心、港を前にした最高の立地。ガストロノミーのほかにもビストロも隣接している。店に入るや否やオープンキッチンでは大勢の若いスタッフたちが入れ替わり立ち代わり厨房とテーブルの間を行き来している。料理的には分子化学料理を実践しているが、その様子はまるでラボにこもっているかのよう、みんな料理に集中している。出来上がった皿は料理人自らが抱えて客の前に現れ、ひとつひとつ説明しながらサービスしてくれる。自分で作ったものだから思い入れも強いのだろう。サービス人と料理人がそれぞれ役割分担・・・という形態も、この国ではなくなりつつあるのかもしれない。

料理は全部で16皿。小さな鉄鍋に発酵させたパン生地を寝かせ、焼きあがるのに15分ぐらい。出来上がった熱々のパンも料理の一皿として登場するのにはちょっと参ったが、それだけパンにもこだわりたいのだろう。トマトと苺+ヤギのチーズにサラダ菜/マッシュルーム、ライムギのオートミール/コールラビ、人参、シイタケにチーズと野菜の盛り合わせがサービスし終わった後に、かのパンが焼きあがる。塩バターと一緒に熱々を食するのだが、一度に全部食べないと下げられてしまう。(ちょっと満腹になってしまう!!) メインは柔らかい子羊、タルタル風とあるが周りはほんのわずか火であぶってある。ポロねぎ、ホースラディッシュ、魚のハラワタ、オニオン、イラクサにホームメードのヤギのチーズを添えてとあるが、なかなか力のこもった一皿だ。次に魚はヒラメのグリル、キュウリと発酵させたインゲンでコーティング。仔牛とビーフの2種類の肉はとても柔らかくスライスしたビーツがほんのり甘い。デザートはリュバーブのアイスクリームとチョコレート/ヨーグルトのムースとサワーミルクのシャーベット、ウイキョウを乾燥させて飾りに。最後のミニ菓子はリカーがほんのりと香ばしい溶けてしまいそうなマシュマロ感覚のチョコレート、クランベリーを塩キャラメルで味付けしたものはちょっと日本の梅干しを連想してしまう。これでコースメニューが終わりを迎える。我ながら胃袋に「ご苦労さん!」と言ってあげた。

OLO   Pohjoisesplanadi 5   oo170  HELSINKI  FINLAND / tel: +358 10 320 6250   www.olo-ravintola.fl

 

vin et culture (2014.07.26)  |  未分類  | 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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