2014.06.30
ロンドンから飛行機で小一時間、ジャージー島に晩年のルネ・ラリックが内装を手がけた教会があると知って、友人と訪ねてみた。ラリックといえば19~20世紀のフランスを代表するガラス工芸家で数多くの宝飾品も残している。日本では箱根にあるラリック美術館がよく知られている。この教会の正式な名称は『セント・マシュー教会』と呼ばれているが、通称” ガラスの教会 ” として島中の人たちに親しまれている。もともとミルブロックという町の住民が「手軽に誰でもが来れる教会」として1984年に建てたものだが、その当時はまだラリックのガラスの祭壇は置かれていなかったという。その後、イギリスのドラッグストアチェーンBOOTSの創始者でもあるジェス・ブーツの死後、彼の奥さんがラリックに頼んで教会の内装を修復してもらったのが1934年のことだから、アールデコ様式の影響を多分に受けている。まっすぐに直線を描いた十字架、白とブルーを基調とした透明感のある乳白色のガラスがラリックらしく、とても美しい。時折、島の人たちとおぼしき人たちがやってきては祈りをささげている。そんな風光明媚な小さなこの島に、きっと並々ならぬ愛情を抱いていたラリックの晩年の姿が重なってみえる。
写真 美しく修復された教会の内部、ガラスをふんだんに使った祭壇は外の光や照明をうまく取り入れて、モダンでシャープな印象を与えてくれる。