2014.06.14
シンポジウムの翌日8日は、北海道の新得町にある『共働学舎』というチーズ工房を訪ねた。工房といっても酪農から搾乳、チーズ製造などすべての生産過程を一カ所で行っており、働いている人たちは知的障害者や引きこもり、自閉症といった何らかの問題を抱えている人たちがほとんどだ。今から35年前、一軒のプレハブ小屋からスタートした荒地も、今では96,4haの広大な土地は酪農のほかにも有機野菜栽培や手工芸なども行なう牧場に成長した。年間約2億3千万円の売り上げは生活に必要な経費はほぼ自分たちの手で賄っている。またここで生産されるチーズは” 山のチーズのオリンピック”とよばれる国際コンクール ( 急傾斜の過酷な土地など生産に不利な条件で良質のチーズをつくる生産者を対象としたコンクール ) で見事金メダルに輝いた。「生産量よりも品質を大切にしてきた生産体系を作ってきたことが良かったのかもしれない」と共働学舎の創立者でもあり経営者の宮嶋望さんは言う。
共に働き・ともに生きる「自労自活」をモットーに掲げたチーズ作り、生きづらい・行き場のない人たちが必要とするものとはいったい何なのか? そう捉えてみると、ここにいる彼らがメッセンジャーに見えてくると宮嶋さん。「いらない人間なんていない! 」そんな心の叫び。北海道の雄大な大自然のなか、厳しい環境にもめげず汗水流して働く仲間たちの姿。こうした仲間が一緒にいれば怖いことなんかない。生きること・労働することを通して彼らは人生を学び成長してゆく。そんなパイオニア精神にみちあふれた宮嶋さんの笑顔がひと際まぶしく輝いている。
写真 『共働学舎』35周年報告会であいさつするヘンケルさんと私。予定されていたトレッキングも悪天候で中止、急きょ、参加者全員でフリートーキング。北海道らしいゆったりした大自然の中、牧草を食む牛たちもゆったりしている感じがする。まるでスイスのシャレーのような建物で生活する彼らは共働学舎の誇り。牛が人家に逃げ込まないように綱を張り巡らしている。牛の記憶の中には” 綱に触ると感電する” とインプットされているが勿論、電流は流れていない。チーズ工房で説明してくれる宮嶋さん、ラクレットと呼ばれる溶けるチーズの熟成庫。鬱蒼とした森と整然と整えられた牧草地帯、その周りに人家が並ぶ。最後は全員で記念撮影。