2014.02.15
これだけの錚々たる日本料理人が集結するイベントというのも海外広しといえどもそう滅多にはないだろう。去る2月6日、パリの仏外務省公館において、ローラン・ファビウス外務大臣が主催する日仏財界関係者60名を招待した大晩餐会が開かれた。その料理を託されたのは京都の老舗名店の名だたる料理人18名。昨年の秋、日本料理がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを祝いファビウス大臣自らが音頭を取って今回のディナーは実現した。団長を務めたのは村田吉弘氏、大正元年に京都に創業して現在は3代目の『菊乃井』のご主人だ。氏は日本の食文化を世界中の人たちに幅広く知ってもらおうと積極的な活動を通じて、今回の世界文化遺産登録にも尽力された。晩餐会で披露された懐石料理の最後を締めくくる「豆腐ケーキ」は、村田さんがパリの有名パティシエと3ヶ月近くも試作に試作を重ねて出来上がった珠玉のようなデザート。それは日本料理とフランス菓子のコラボレーションの可能性を探る試みとしても大変興味深い。古くからの歴史や暖簾にあぐらをかくことなく、常に新しい可能性に向かってどんどんチャレンジしているその姿こそ老舗だからできるもの。まさに歴史に支えられてきた人たちは、モダンさと改革に挑んで常に進化していくことを追求してきたのだろう。そういった意味では京都人とパリ人とでは共通点も多々あるのかもしれない。これからも日仏の料理人が交わい両国の料理がどんどん進化していくことを切に願っている。
写真 仏外務省のサロンで全員で記念撮影(前列中央が村田吉弘氏) / 今回サービスされた懐石料理は18名の料理人さんが一団となって作り上げたもの / 地下の外務省の厨房内ではフランス人の料理人と京都の料理人が和気あいあいと和やかなムードで言葉を交わすシーンも/ フランスでは” 成功”の証しと言われる赤い銅鍋が並ぶ厨房で「重くて重くて、とても一人では持ち上げられない!」と悲鳴を上げる京都の料理人さん/ 「トリュフの好い香り! さすがにフランス産は違う」と村田さんは絶賛/ 一方、テーブルセッティングも着々と進む。ミリメートル単位でランチョンを並べる外務省のメートルドテル/ 出来上がりをチェックする京都の料理人さん…….それぞれがそれぞれの様々な思いを胸に、またさらなる新しい料理に向かって進化していってほしい