2013.10.25
湯河原から真鶴半島に行く途中にそれはそれは小さな漁港、福浦港がある。丁度、朝一番の漁を終えた若い漁師たちが網をしまい、みんなで一服しながら談笑している風情は実に平和的で牧歌的。こんな風景はずっと前に料理人、ジャック・マキシマンを取材したときに訪れた地中海のキャリー・ル・ルエという小さな漁港にも似ている。太平洋と地中海、そんな違いはあるにせよ漁師の魂はどこも同じ。みんなに美味しい魚を食べてもらおうと決死の漁に向かう。そんなことを思い出しながらグーグーいうお腹を抱えてやってきた。ちょっと台風を目前にして入り江の海岸から見る海原はミステリアスなほど静かで銀色に輝いている。
お昼の時間、地元の人たちでにぎわうこの食堂、海を真正面に手すりをテーブルに見立てた最高の席に陣取ると「カサゴの塩焼き」を注文した。しばらくすると給仕のおばさんが「 はい、カワハギの唐揚げで~す! 」「 いやいやカワハギは注文していませんよ。他のお客さんの間違いでは? 」。ちょっと怪訝そうに私のことを見ながら「 カサゴは焼きあがったら持ってきます。まずは唐揚げからです!! 」。な、なんと、4種類の魚が手を変え品を変えドド~ンと次から次へと出てくるではないか! これで一人前? どんぶりには白いご飯がてんこ盛り。いやはや、これで「普通」の定食なのだ。勿論、一人前である。
それにしても「 日本人はみんなスリムなのはヘルシーな和食を食べているからでしょう! 」とフランス人の多くは思っている。勿論、生魚や粗塩だけをささっとまぶした焼き魚を食べていれば肥満とは縁遠いかもしれない。でもこの量では?? しかしおいしそうに頬張っている人たちのひとりひとりのうれしそうな表情を見ていると誰ひとりとして太っている人なんかいない。楽しそうに食べることに情熱を燃やしている、そう生きることに燃焼していることこそ肥満とは無縁なことなのかもしれない、と感じ入った次第である。
写真 カサゴの塩焼き・カワハギとメバルの唐揚げ・マダイのお刺身、これが “当たり前” として食べられる地元の人たちの食生活の豊かさ。ホント、うらやましい!!!