2013.09.20
遅めの夏休みをとってエトルタに出かけた。パリから車でおよそ2時間半。フランス北岸とイギリス南岸との間にまたがる英仏海峡に面した海原は丁度暗い雲に覆われて辺り一面ミステリアスな雰囲気を醸し出している。モーリス・ルブランが書いた怪盗紳士アルセーヌ・ルパンの「奇巌城」の舞台にもなったこの有名な海岸はもう否応なくクライマックスで盛り上がっている! そこから数分のところにルパンの隠れ家がある。現在はルパン記念館として一般公開されているので誰でもが訪れることができる。
フローベールやモーパッサンとも交流があり、彼らから多大な影響を受けて純文学者になったというルブラン。「一日3ページの原稿を書く毎日、アルセーヌ・ルパンという人物像を少しずつ頭の中で描き想像を練りながら誕生させていった」と音声ガイドが教えてくれる。こじんまりとした迷路風の館内には当時のままを再現した書斎やラファエル前派に登場するような妖艶で若い女性たちの絵画を飾り、映画の上映室やダンディーだったルパンの着替えの間、モロッコのマラケシュを訪ねたときから芽生えたオリエンタル趣味への憧れを髣髴とさせてくれる間などなど、ルパンという人物の生身の人間臭さを感じさせてくれる演出がとてもにくい。
こんな隠れ家にこもり朝から晩まで小説を書き続け、その合間に敷地内のしゃれた庭をどうしたらいいか・・・などと庭師と語らい、地元の人たちと世間話に花が咲き、時々エトルタの海岸を散策する毎日・・・・。まさに私の理想とする生活をそのまま地でいったルブランの生き方に大いに刺激された旅だった!!!
写真 「 エイギュイユ・クルーズ」(空洞の針)はルパンの「奇巌城」の舞台にもなった。モネなど印象派の画家たちもたくさん訪れている。その不思議な形は圧倒的な美しさでオーラを放っている。まさにここでルパンという人物が誕生したのも現地を訪れてみるとよく分かる。