2013.08.22
東洋美術の宝庫でもあるパリの「ギメ美術館」で今『北大路魯山人の芸術』展が開かれている。サブタイトルは”1883~1959年、日本料理の天才”となっている。魯山人という人を知ったのはかれこれ10年ぐらい前のことだが、当時、私は東京の永田町にある東急キャピトルホテルがとても好きで、帰国するたびに友人を誘っては食事に出かけていた。そのホテルの跡地に魯山人の「星ヶ岡茶寮」という会員制高級料亭があったと聞いて ” 何でもっと早く生まれてこなかったんだろう! “ と興奮しまくっていたのを覚えている。
不幸な幼少時代は彼の人間形成に大きなしこりを残し、その気難しさ・毒舌ぶりは尋常じゃなかったと言われる。しかし稀に見る天才ならこうした悪評がつきまとっていたとしても仕方ない。思うに彼の生き方はしごく不器用なほど自分に正直だったのかもしれない。料理人として、また陶芸家・書道家・古美術愛好家・・・ありとあらゆるものに精通し、超一流であることだけが他人を見返せる唯一の方法なのだと頑なに信じていたのだろう。それは人には図り知れぬほど自分に対して厳しく立ち向かう一方で、ちょっとしたことにとても涙もろかったことでも彼の繊細な別の一面も伝わってくる。それもまた魯山人の生い立ちからくる ” ひねくれた性格 ” の表れかもしれない。
今回展示されている器の数々に共通するのは、どれも一見シンプルだが色や形・厚みなど強靭なパワーがみなぎっていることだ。”食器は料理の着物である”という彼の言葉通り、器に対する審美眼は” 魯山人スタイル ” を生み出すほど卓越した美しさを放っている。こうした器に盛られた魯山人の料理を是非とも味わってみたかったと心底思う。そう、時代を超えて頑固なまでに自分の美意識を貫くことが結局は人を感動させる源であることをこの展覧会は教えてくれたような気がする。
写真: ギメ美術館の「魯山人展」、入口の模様