2013.07.18
ケータリングビジネスの名門「モンブラン」社のレストラン内で行われた本番をシミュレーションしたディナー。グレーのクロスに水引きで飾った紫色の蘭や白・ピンクの牡丹、紫陽花など「生け花」が華を添えている。コマンドリー・ドュ・ボンタンのお歴々が真剣に料理とワインの相性についてディスカッション。最後は「美味しい・斬新・オリジナリティー」という高い評価で満場一致。厨房内では夏トリュフの香りがプンプン。料理がひとつひとつ形になっていく。
5月23日、いよいよ最後の試食会がボルドーのケータリング会社「モンブラン」で行われた。今回の花祭りのディナーを実際に現場で任されている企業だ。ボルドーではシャトーでパーティーを催すことが多いため、こうしたケータリングビジネスがとても盛んだ。そのなかでも名実ともにナンバーワンを誇るのが同社。そのレストラン内に当日とまったく同じ状態でテーブルセッティングされた晩餐会のシミュレーションが行われた。アペリティフ用のアミューズから始まりディナーの献立4皿がサービスされた。
一方『コマンドリー・ドュ・ボンタン』(通称ボンタン騎士団) と呼ばれるメドックワインの発展・プロモーションを目的に活動を行っている事務局からも7名ほど試食会に参加して「最後の審判」を受けることになる。その中で一番議論されたのがチーズだった。”ラフィット・ロートシルト1990年”のマグナムがサービスされることがすでに決定されているので、今回の” 創作チーズ ” ではこの素晴らしいワインの味がかき消されてしまうのではないか? もっとシンプルな、いわゆるチーズの盛り合わせにしたほうが良いのでは? デザートと見間違うような創作チーズなんてコマンドリーでは前代未聞! 実際に私の隣に着席していた騎士団のひとりは「あれ!もうデザート!?」と主菜がサービスされた後、驚嘆していたぐらいだ。
しかしシャトー・ラグランジュのエイナール社長はきっぱりとひと言。「フレデリックの料理はしっかりとした古典料理をベースに若々しさ・モダンさ・美しさが三拍子揃っている。前菜のエディブルフラワーで飾られたプレゼンテーションは驚きと同時に美しさを演出してくれる、まさに”花祭り”にふさわしい。主菜の牛肉もそのオリジナリティーあふれるカッティング方法、デザートもソーテルヌのデザートワインの黄金色を髣髴とさせてくれるマンゴの色合い・味とすべてがトータルに考えられデクリネゾンしている。それなのに創作チーズの代わりにひとつだけ切り取ったかのようにチーズの盛り合わせにしてしまったら全体のメニューのバランスが崩れてしまう。彼の良さがまったく失われてしまう。」「今回、1ツ星のフレデリックをシェフに迎えた理由は彼の若さや晩餐会に賭ける情熱、やる気だ。こうした隠れた才能を発掘して、なかなか世の中にアピールすることができない若者にチャンスを与えること、それが我々メドックのワイナリーの役目ではないだろうか。」その力強い言葉に私は内心、小躍りするぐらい拍手を送った。