2013.07.15
サントリーの本社からも、そしてボルドー側からも試食のために大勢の関係者が駆け付けてくれた。今回のディナーを手掛けるケータリング会社「モンブラン」のシェフのミシェルとはとことん話し合いが続けられた。パリのシモナンさんの厨房で。
各3皿ずつトータル9皿の料理を試食した。どれも甲乙付け難い出来栄えだったが議論の中心になったのは1500名に果たして同じクォリティーでサービスできるのか? 作り方が複雑すぎないか? ワインとの相性は? 甲殻類がダメというアレルギー体質のひとがいる場合には何で代用するのか? 宗教によっては食べられない禁止食材もあるのではないか?・・・ そういった細かいことまでもテーブルでは延々とディスカッションが続けられた。こうしてチョイスされたメニューはご覧のとおり。
シモナンさんの厨房で。ひとつひとつ丁寧な作業が続けられる。彼は1ツ星シェフだからスタッフが100人近くもいる3ツ星シェフの厨房とは大違い。自分の頭でメニューを考え、構築し、それを形にしていく作業はすべてひとりでこなしていかなければならない。あっぱれである!!
「花祭り」の晩餐会のメニューを決定するために試食会は合計4回行われた。第一回目はパリのシモナンさんのレストランで。前菜・主菜・デザートを各3皿ずつ提案してくれた。日本テーストを意識したもの、モダンなもの、クラシックなものと、まずは彼の料理のスタイルをみんなに知ってもらうことが先決だ。前菜は「トマトとオマールエビのクラブサンドイッチ」「ブロッコリーのヴルーテと蟹の海水ジュレ、アキテーヌ産キャビアを添えて」。主菜は牛肉を使うことはすでに決まっていたので「分厚いサーロインステーキにピーツのゼリーとベリー系ラズベリー、エシャロットのフォンダン」「ステーキをフライパンでポワレした後、グラッサージュして皿に盛り付け、そこにレモンの葉で香りづけしたコンソメを目の前でサービス」。チーズはトム・ド・ピレネーとパンデピスの創作チーズ。デザートは「マンゴのババロア、ココナッツ風味のフレッシュ・シャンティークリーム」「マンゴのコンフィとシャーベット、ライトなフレッシュクリームを詰め物にしたデリケートな砂糖のドーム」。
どれもこれも繊細でひとつひとつ職人技が発揮された素晴らしい料理だった。しかし35名のガストロノミーレストランで食すには最高のメニューだが、これを1500人分作るとなると果たしてこれだけのクォリティーが保てるのだろうか? しかもワインが主役というスペシャルディナーだから料理はあくまでもワインをおいしく引き立たせるための「脇役」でしかない。しかし、そのあたりはシモナンさんも十分心得ている。「自分・自分と言い張らずにあくまでもワインをおいしくいただくための料理を提供していきたい」と、とても控えめだ。しかし、彼の使う食材の品質の良さに加えて、しっかりしたメリハリの利いた味付け、古典的料理テクニックの習得など「引き出し」がたくさんある料理人だから心配などいらない。結局、全員一致でクラシックなものをチョイスすることになった。
「ボルドーの人たちはパリの一部の超グルメな人たちと違って舌は保守的。奇をてらったものは受け入れない。しかし一方ではワインと料理の相性を十二分に心得ている人たちだから、ただ単にクラシックならばよいかといえばそうでもない。招待客も世界中からやって来るので、むしろシモナンさんらしさのある若々しい今のパリを髣髴とさせてくれる料理に挑戦してほしい。そしてもう一つ付け加えるならば日仏の文化の融合を意識して欲しい!」と、まあ欲張ったリクエストと相成ったのである。果たして今回のメニューがこれからどんな風に進化していくのか? 今から楽しみだ。