2013.06.11
6月4~8日までパリ17区にある『レストラン フレデリック・シモナン』で「京料理 たか木」のオーナーシェフの髙木一雄さん(ミシュラン2つ星)とフレデリック・シモナンさん(1つ星)のふたりの料理コラボが開催された。ふたりが出会ったいきさつについては昨年2月の私のブログでもお伝えしたとおりだが、偶然としか言えないこの出会いを大切にしようと、ふたりの料理コラボを企画してみた。「ゴマ豆腐」を高木さんがフレデリックに伝授したのがきっかけでふたりの交流が始まった。あれから1年半、その間パリと神戸を往復しながら構想はどんどん広がっていった。「今まで先輩たちがやっていたように前菜は貴方が、メインは僕が・・・」というのだけはやりたくないということで意見が一致。しかも若いふたりだから「ビックネームをふたり連れてきて好きなことをやってもらう」というのともちょっと違う。ふたりが本当に創りたいもの、やりたいことをやってみよう。日本料理の基本となる出汁をフレンチの視点でどう変化させられるか? 肉や魚の火の通し方を日本料理とフレンチの感性でどう使い分けられるか? スティームコンベクションで蒸してみたり炭火であぶってみたりとふたりの思いはどんどん広がっていった。そんな夢のようなコラボをずっと前から私はやってみたいと思っていた。そして今回、こんなにも息のぴったり合うふたりの料理人に出会えたことは、私は一生の宝物だと思っている。この一週間、何がふたりの間に起こったのか? とても”濃い” 一週間の様子を写真満載でお届けする。
5月30日、何とドバイ経由で神戸からパリに到着した髙木さん。トータル20時間以上も飛行機に乗ってやってきてくれた! 本当に感謝の念に堪えない。持ってきた荷物もフランスの税関員に不審がられながらもその寛大な一言でうまくパス。まずは最初の難関は無事にクリア。その日の夜、レストランの営業が終了した後、3人でランジス市場へ。夜中の1時半は回っていただろうか。吐く息も真っ白で足元は深々と冷え込んでくる。パリの胃袋とも呼ばれるこの中央卸市場、魚の仕入れは他の業種より一足早い。「ARMARA」という業者のジャメルさんが私たちを出迎えてくれた。
ここはガストロノミーから街場のビストロまで扱ってる業者さんで魚の種類もとても多い。最近のすしブームでマグロやサーモンが飛ぶように売れているのだとか。巨大な段ボール箱から取り出したマグロを素早く解体する作業が始まった。ちょっと息苦しさを感じた私はひとり外に出て満天の星空を眺めていた。普段、神戸では毎朝、新鮮な魚を仕入れている髙木さんにとってランジスの魚は工業的な感じがするという。改めて日本の魚の鮮度は世界一、しかもその取扱い方は超デリケートだと痛感している様子だ。一方フレデリックも築地市場を訪ねて以来、フランスの卸売市場には興味を失ったという。ブルターニュ地方の小さい漁港、たとえばロックチュルディで陸揚げされるピンク色のラングスティーヌエビなどは料理人であれば誰もがあこがれ。「ポッポー、シュートントントン・・・」港に入港する漁船の擬音を発してみんなを笑わせる一方、想いははるかブルターニュの海へ。フレデリックの頭の中にはまた新しい料理レシピが浮かんだ。
『京料理 たか木』 〒659-0092 兵庫県芦屋市大原町12−8 電話:0797-34-8128
『Restaurant Frederic SIMONIN』 25, rue Bayen 75017 Paris 電話+33-1-45-74-74-74
夜中の1時半、魚市場は活気にあふれている。ガストロノミーに卸す魚は一本刷りのスズキや的鯛、ヒラメ。品質を保証するフランス国旗をかたどるトリコロールが目印。思わずスマフォのシャッターが途切れることがない!!