2013.03.02
今から丁度一年前に日本で発足した『農と更生保護ネットワーク』の招聘でフランスのNPO法人『ジャルダン・ド・コカーニュ』の主宰者、ジャンギィ・ヘンケルさんと一緒に来日した。このジャルダンは社会的弱者をビオ農業によって社会復帰させることが目的で、1991年にヘンケルさんがフランスで立ち上げたNPOだ。
70年代の石油ショックによって”農民は絶対に失業しない”と言われ続けてきた農業大国フランスでも大勢の農民が路頭に迷い、あちこちにはまるで虫に食われたかのような耕作放棄地が広がっていった。それを見たヘンケルさんは農民の持つノウハウを駆使し休耕田を再利用して失業者就業のために何かできないものだろうかと思案した。こうして誕生したのがジャルダンだった。畑で採れたビオ野菜は毎週一回、定期購入する近隣の住民たちに届けられる。住民たちも野菜を購入することでジャルダンをサポートし弱者支援を行っている。
こうした行政ではできないことを民間のジャルダンが支え、そして自立した人たちを企業がリクルートする。まさに「行政・市民・企業」が三位一体となった新しい社会が動き出している。その先駆者的存在がヘンケルさんだ。現在フランス国内には120カ所のジャルダンがあるが、そこでは4000人近い人たちが自立のための訓練を受け、20000人もの住民たちが彼らの作る野菜を購入する。こうしたソーシャルエコノミーが未来を作り出していく。
日本でも農業を目指す若者が増えているが、これからはTPPによって更に日本も世界を見据えたマーケットの広がりとともに、やる気のある農家を支える受け皿が必要となっていくことは喫緊の課題でもある。そして農業の側面として社会的弱者の就労支援にも結び付けていくことはとても理にかなっていることだと思う。