2012.12.18
「シラノ・ド・ベルジュラック」や「モンテ・クリスト伯」など国民的映画の主役を演じたら彼の右に出る者はいないといわれるフランスの大スター、ジェラール・デバルデューが仏国籍を捨ててお隣の国ベルギー国籍を取得しようとしている。現在の社会党オランド政権が可決した富裕層を対象にした75%課税に”NON”を突きつけた形だ。
事の起こりはデバルデューのベルギー国籍取得をスクープしたメディア報道に「ろくでなし!」と発言した首相の言葉がデパルデューを怒らせた。「1948年に自分はフランスで生まれ14歳で印刷工として働き始めた。・・・転々と職を変えながら俳優業にたどり着き、この45年間、自分はフランスに1億4500万ユーロの税金を納めてきた。80人もの従業員も雇用してきた。そのたびに税金も滞りなく払い続けてきた。・・・そんな自分を育ててくれたフランスを愛しているし価値観も共有している。・・・・しかし ”ろくでなし” 呼ばわりされることに憤慨する。一体そんなことを言うあなたは誰なのか? そんなことを言う資格があなたにあるのか? ・・・・自分は不摂生かもしれない。しかし人生を愛している者として自由の身でありたい、そして礼儀正しくありたい。」そんな書簡を首相宛に送りつけている。
しかし、この国ではすでに富裕層の国外流出は今に始まったものではない。高級品産業のトップLVMHグループのベルナール・アルノー会長もおなじくベルギー国籍を申請していることに各メディアがヒステリックに報道して波紋を投げかけたことは記憶に新しい。しかし今回のデバルデュー騒ぎはアルノー会長以上にフランス国民にとっては”人間国宝的存在”なだけに国民の心中は複雑だ。「今回の騒ぎが引き金となり更に富裕層の国外移住に火がつくのではないか」と経済学者はそれを心配している。
国民的俳優ジェラール・デバルデューの発言が政府との間で火花を取らしている。(写真 Le Monde )