2012.12.07

日本料理、いよいよ ”ユネスコ世界文化遺産” へ一歩前進

パリのパラスホテル「プラザ・アテネ」で『菊乃井』村田吉弘氏のプレスランチが行われた。アラン・デュカスがマイクを握り村田さんとの親交をアピールした後、今度は村田さんがそれに答えるかのようにフランスとのエピソードを披露。日仏の友好関係がうまくいってることがこれでも大いに伝わってくる。シャンデリアがまるで空から降ってくるようなゴージャスな内装に目を奪われながら、ひとつひとつ丁寧に仕上げられた日本料理に舌鼓を打つ心地よさは、やっぱりここがパリというマジックな街だからなのだろう。

「柚子釜豆腐 柚子味噌 あられ柚子」—- 柚子を器に見立てた柚子づくしの付きだし、その独特な風味を閉じ込めたほのかな香り、”カイエ・ド・ブルビ” ( 雌羊の脱脂粉乳状にしたフレッシュチーズ) の味をちょっと思い起こさせてくれる豆腐のピュアな淡泊な味に柚子味噌のちょっと甘いこってり感が見事に調和している。「百合根饅頭  鶉丸フォアグラ トリュフあん 結び大根人参 トリュフ」—村田さん曰く「唯一この百合根だけは日本から持参しましたがそれ以外の食材は魚も含めてすべて現地で調達しました。」という言葉にもあるように百合根という独特のテキスチャ―はフランス人料理人の憧れでもある食材の一つだ。それをフォアグラやトリュフというこれまたフランス人にとっての高級食材と掛け合わせたところなどは、まさにフランス人を喜ばせるコツを考えつくした玄人の技とも言えるだろう。そして何よりも最後の止めは「牛肉大和焼き じゃが芋あん 三度豆 針柚子」—-さしの入った神戸牛のとろけるような柔らかさ、フランスの国民食でもあるじゃが芋を一番出汁でピューレにして葛と掛け合わせてとろり感を出したところなど、まさに日本の料理人さんの芸術作品ともいえる。

帰り際、私の友人でもあり食仲間のフランス人ジャーナリストに「どうだった?」と聞いてみた。「正直、何を食べているのかよく分からなかった! トリュフとかフォアグラとかフランス人にとって特別なゴージャスな食材を使うことはいいけれど、ちょっと意識しすぎるのでは? 香りが強いだけに日本食独特の繊細さが全部失われてしまったような気がする・・・・。dommage ! (残念!) 」。

料理というものははかないものである。特に日本料理は「その一瞬の消えてしまいそうな食感や生きたものを舌の上で楽しむ料理」である。goût =味・味覚・風味といった知覚できるものに研ぎ澄まされた感性を発揮するフランス人の食欲に、いったいどこまで日本料理が呼応していくのだろうか? そんなことを考えさせられた食事会だった。

写真  アラン・デュカス氏と村田吉弘氏のツーショットで始まったお食事会、パリにいながらにして「京都を体験できた」貴重なひと時だった。

 

 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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