2012.11.13
朝9時、「おはようございます!」の挨拶で一日が始まる。みんなのフレッシュな笑顔、でもすでに仕込み作業はスタートしている。『フレデリック・シモナン料理フェア』の開催でホテルオークラ東京の厨房内で2週間過ごした。白いコックコートを身に着けることがやっと許された3日目。 やった~~~~!! 一日15時間、朝9時から夜中の0時まで立ちっぱなし。私の作業はもっぱら人参やかぼちゃ、セロリーラーヴやキュウリの型抜き。ビーズのようにまん丸く抜くにはコツがいる。フレデリックから「Mais c’est quoi ?」(ナンだそれ?) と何度もカツを入れられる。そのたびに「Je suis pas douee pour ce genre de boulot !」(私はこういうことには向いていない!) と言うと「Ca viendra, Ca viendra !」(そのうちうまくなるから心配しないで) と叱咤激励してくれる。
それにしても料理人の仕事とはなんてノーブルなんだろう。一皿が構築されるまでの手順、何人もの人たちの手にかかって次第に出来上がってくる様はアートそのものである。シェフがオーダーを読み上げて皿が完成するまで実に3分。些細なつまらない仕事だと思っても、ひとつひとつの流れ作業にはしっかりとそれなりの役目がある。私の切り抜いたビーズのようなかぼちゃがヴルーテのなかに浮いていたりすると心躍る。思わず「これって私がやったのよ!」と自慢したくなってしまう。料理人と料理人がリレー式に次々と持ち前の仕事をバトンタッチして皿は完成されていく。その様子は圧巻である。まさに料理人同士のつながりを感じたこの2週間だった。
写真 ホテルオークラ東京の厨房内、ひとつの料理を完成させるチームワークの良さが料理の勝敗を決める。ピンセットと箸を使ったデリケートな皿はまるで菜の花畑のよう、「カワハギのカルパッチョ、みかんソースを添えて」