2012.04.02
言葉なんて必要ない。この見事なアートを見よ! 彼らがどれだけ才気に溢れ情熱に向かって一途であったか、これらの作品を通して伝わってくる。なかでも『新世界―骨の彫刻』( Le Nouveau Monde — Sculpture en os ) と題されたこのオブジェはフランチェスコ・トリス ( Francesco TORIS : 1863-1918 ) という精神病患者が時間をかけてひとつひとつ丹念に作り上げた作品で、その執拗なまでの執念ともいえる創作意欲にはただただ圧倒される。
” Banditti dell’Arte ” とは精神病患者や受刑者たちのアートという意味で、イタリアでは1904年にはじめて国内50カ所に精神病院が建設されて以来、そこに収容されている患者たちの隠されたクリエーターとしての才能に注目して作品を収集し続けてきた。これらの作品はロンブローゾ美術館やトリノ人類学博物館、エミリア州サンラザロ精神病院などが所有しているが、いわゆる国家として彼らの作品を体系的に所蔵した美術館はなく、イタリア全国に散らばっていたものを今回、パリのモンマルトルの丘のふもとにあるパリ市の「ホール・サンピエール」( Halle Saint Pierre )というアートギャラリーがイタリア国外では初めて大々的に展覧会を開催した。
隔離された空間の中で彼らが何を想い何を感じ、ただひたすら想像の世界で創作していくことに喜びを見出していた人間の本質といったものが伝わってくる展覧会である。