2012.03.07
5月の仏大統領選に向けて保守派で現職のサルコジ氏と対抗馬の社会党オランド氏との対決が半ば泥沼化している。国民も、ちょっとうんざりというのが本音だ。昨夜もサルコジ氏が国営放送のFRANCE2に生出演して「2007年の当選当時にはプライベートの問題もあって(セシリア夫人との離婚)シャンゼリゼの某有名レストランに友人を集めて派手なパーティーをやったり、その後も経済界の有力者のヨットでセレブな夏休みを過ごしたり・・・と自暴自棄的な行動に反省するところは多々ある。しかし今は幸せな家族に囲まれて心身ともに落ち着きを取戻し万全のコンディションで大統領選に臨んでいる。」と赤裸々に語った。(サルコジ氏は敏腕政治家として知られるが、時々こうして素顔を見せることがある!)
そんな大統領の姿勢を好むか好まざるかは意見が真っ二つに分かれるところだが、これぞとばかりにオランド氏が徹底的に叩きのめそうとするのもよくわかる。「プライベートのことに3時間もかけてしゃべる時間があるなら、もっとフランス国民のことを親身になって考えるべきだ! CAC40(上場している優良企業)の法人税を今頃になって見直しするなんて言い出すのはけしからん。2007年の時点ですでに実行すべきだった!」と攻撃姿勢を崩さない。
このオランド氏のかつてのパートナーがセゴレーヌ・ロワイヤル党首で(ふたりは事実婚で4人の子供がいる)、彼女は前回2007年の大統領選時にはサルコジ氏の対抗馬だった。しかし選挙に敗れてすぐにふたりは離婚。サルコジ氏も大統領就任直後に離婚という共和国始まって以来の椿事に日本人である私は大いに頭を悩ませたものだった。この国では政治家もプライベートを優先にするんだ(!!)と。だから今回のふたりの対決もなんか因縁のような気がする。
しかし最近の世論調査の結果(IPSOS)では大統領支持率はサルコジ氏が42%なのに対してオランド氏は58%とリードしている。サルコジ氏は国民にもっと働こうと鼓舞しているだけではなく、フランス経済を圧迫しているのは移民の増加による社会保障費の負担。それを減らすには移民自体を減らさなければならないと全くまっとうな事を言っている。ちなみに先日、あるパリのレストランのオーナーシェフに聞いた話なのだが、彼のところでは皿洗いを担当するセネガル人をひとり雇っている。しかしこの不況で人件費を削らないとやっていけないので日頃懇意にしている別の店のオーナーに頼んで「もっと条件のいい職場があるからそちらに転職するように」とアドバイスした。するとセネガル人はこう言ったという。「いいえ、ほかの店にはいきたくない。私を解雇してください。そうすれば失業保険がもらえるから。そうしたら家族を連れて自国に帰ります。」
まるで嘘のような本当の話だがフランスは高福祉大国・人権大国になりすぎてしまった。そのツケを払わせられているのは税金を払っている国民自身だ。ちなみにオランド氏は「私が大統領になったら100万ユーロ以上の高所得者には75%の所得税を課す」と豪語している。フランスがユートピアの道を突き進むのは構わないけど、でも、あまりにも現在の世界同時不況からみても現実離れし過ぎている気がするのだが。