2011.11.08
「イタリアとフランスの茸対決」をしようとイタリアの旅を終えた私たちは、一旦パリに戻り今度はTGVに乗って中央フランス・オーベルニュ地方にある3つ星シェフ、レジス&ジャック・マルコンの店にやって来た。丁度、紅葉の真っ最中で大自然に囲まれた雄大な景色は息をのむほどに美しい。キノコシーズンということもあり、昼夜ともレストランは満席だ。地元の人たちは勿論の事、世界中からマルコンさんのキノコ料理を食べようとやってくる。私たちもそんな客のひとりだ。飽くなき好奇心と胃袋を持つ友人がいることに感謝しながら・・・。
「今年はキノコが不作で、レストランのためにキノコ狩りをしてくれる地元の専門家45人も頭を痛めているんです!」と笑顔がステキなマルコンさんの顔がいつもより曇っている。パリの料理人たちの間でも「今年は白トリュフは高すぎ、セップ茸も全滅。形も味も悪くて使えない・・・」という声を耳にしていた。それでも私たち一行はその日、朝早くキノコ狩りに近くの森を2ヶ所訪ねることにした。マルコンさんがいつも愛用しているブラシ付きナイフをお借りした。
「この紫色のものは”シャントレル茸”で食用としてもとてもポピュラー。普通の家庭でも手ごろに食べられます。黄色いのは”ジロル茸”。レストランでもたくさん使ってます。これは”ユダの耳”といって唯一生で食べられるキノコです。」 そう言ってナイフで一口大に切ってくれたものを口に含んでみるとゼリー状の塊のような食感だ。テット・ド・ヴォー(子牛の頭)を使ってゼラチン質をとりだすが、このユダの耳を代用する事もあるらしい。
マルコンさんはキノコ名人として厨房で働く料理人や地元の小学生たちを連れて時々、森にキノコ狩りにやってくる。その姿はまさに食育を実践している料理人のリーダー的存在だ。その日も私たちと森に行けなかったのをとても残念がっている様子だった。しかし私たちが採ってきたキノコをひとつひとつ手にとって説明してくださる姿は、その気さくな人柄が伝わってくる。この店がこれだけ流行っている理由がなんとなく理解できた。
写真 マルコンさんの見事な手さばきで採れたてのキノコはどんどん美味しそうに変身していく。バスケットいっぱいに採れたキノコとマルコンさん愛用のブラシ付きナイフ。これはシャントレルだよ、と丁寧に説明してくれるマルコンさん。