2011.04.16
1968年の冬季オリンピックで一躍、世界的に有名になったフランスのグルノーブル市。クロード・ルルーシュ監督の『白い恋人たち』は日本でも大ヒットした。あの甘いメロディーにのって、白銀の世界で記録に向かって挑戦する選手たちの13日間を追ったドキュメンタリー映画は、まさに青春の記念碑的な作品だった。なかでも男子アルペンスキーでは地元フランスのジャン=クロード・キリー選手が滑降、大回転、回転の三冠を達成して大会のヒーローとなったことは記憶にも残る。そんなグルノーブル市で4月14日、マグニチュード5-6を想定した避難訓練が行われた。
グルノーブル市とその近辺の50万人の住民を対象にして行われたこの日の避難訓練では、実際に町なかにある工場跡からひとりの女性が「私の子供・子供!」と叫びながら、がれきの中から這い出し、20人が行方不明になったことをシミュレーションして行われた。そのすぐ直後には警視庁のサイレンが町中に響きわたり緊急事態を告げる。地元の小学校では先生に引率されながら全員が机の下にもぐり、頭にはかばんを載せ、またジャケットを巻き付けながら校舎の外に避難。すべてが等身大で行われた。
グルノーブルのレスキュー隊は先日の東日本東北大震災のときにも出動したことから、実際に日本での体験を踏まえた上で、その地震と津波の怖さを地元の住民にも知ってもらおうと訓練が行われたものとみられる。フランスが地震大国だということはあまり知られていないが、このグルノーブル市のあるアルプス地方やスペイン国境のピレネー山脈一帯は地震地帯として知られている。過去を遡れば15世紀以降、アルプス一帯は20回近くも大地震に見舞われ、そのなかでもマグニチュード7-8級は5回ぐらい起きている。「マグニチュード6規模の地震はフランス南東部にも300年規模で起こりうる可能性がある。すでに東北地方では1000年に一度と言われる地震が実際に起こった。地球上が地震活動期にはいったことも考えられる。」と地元の地震専門家は言う。
警察が発表したこの日の「犠牲者」数は、死者65名、重傷者56名、軽傷者23名だった・・・。
写真 マグニチュード5-6を想定したシミュレーションに従ってけが人を搬送するレスキュー隊 (Le Parisien紙)