2011.04.11
東日本東北大震災は今日で一か月を迎えた。まだ家族の安否が確認できない方や避難所生活を余儀なくされている方たちの不便を思うと心が痛む。茨城県の鹿嶋というところに父方の古い家がある我が家でも、そこに通じる霞ヶ浦の橋も倒壊し、その開通を待って先日、家族が見に行ったところ、家の土壁は崩壊して土台もぐらついているという。昭和初期に建てられた家、子供のころを過ごした思い出の詰まった家だけに、できれば何としてでも自分たちの手で修復してみようということになった。そのために私は急遽、帰国することを決めた。
しかし、私の周りにいるフランスの友人たちは「放射能の危険性を貴女は分かっていない! 」と忠告してくれる。せめても放射能から身を守るためにも防御服を持って行った方がいいと薦められた。しかし、そんなものがどこに売ってるのかもわからない。ネットで検索してみると” デュポン・ド・ネムール” という特殊繊維を開発するメーカーが非常時用の衣料品やグッズを生産していることが分かった。早速、その会社にメールをして家族の人数分を注文しようとしたらメーカーからは直接パーソナルユ―ズは受け付けていない。パリ近郊のディストリビューターを紹介すると言って4軒のアドレスを連絡してくれた。その一軒、一軒にコンタクトをするも、結局はどこもプロ仕様でなければ販売できないと剣もほろろの対応。あの真っ黒な津波がどんどん押し寄せて家も車も人も呑み込み、福島原発の不気味なまでの姿をTVで観た筈じゃない! と内心怒り心頭していた私は、「フランス人というのは本当に融通のきかない国民性だ。困った時にはお互い様。業者であろうと個人であろうと必要としている時に必要な人が手に入れられなかったらいったい何の意味があるんだろう! 」。そう思いデュポン・ド・ネムールの担当者にメールで現状を訴えた。
すると彼からすぐに電話がかかってきて、「貴女の家は原発から何キロぐらい離れているところにあるのですか? それならTyvek® Classic Plusというタイプがいいでしょう。在庫を見てサンプルがあればすぐにお送りします。」 それから数分後にまた電話がかかってきた。「ありました! 3着ですね。すぐに宅急便で送ります。いつ日本には出発するのですか? 間に合うといいんですが・・・」。こうして翌日、サンプルは無事に我が家に到着した。すぐにお礼の電話をかけると、「良かった、良かった! でもマスクと手袋も絶対に忘れないように。普通の繊維のものではダメです。ついでに雨靴のようにズボンのすそがすっぽりと隠れるものを着用してください。 ポン・クラージュ(頑張って) ! 」 さすがに緊急時用の衣類やグッズを販売する担当者だけに反応も早い。 そんな彼の善意を私は一生、忘れることはないだろう。
写真 送られてきた放射能防御用ツナギはこんな感じ