2011.03.21
戦後、最大の被害をもたらした東日本大震災、毎日、新聞・TVの悲惨な様子を見ていると胸が痛む。しかし、そんな報道の合い間にわずかな光とも思える出来事の数々に涙する。地震当日に誕生した元気な赤ちゃん、人間の生命力というのは私たちの想像をはるかに超えて強い。7日ぶりにがれきの下から奇跡的に救助された尊い命、冷蔵庫が近くにあったおかげで9日間、生き延びることができたというおばあちゃんと孫。家族との再会が果たせた人、一方ではすべてを失った人たちがいる。そんな今だからこそ、「生きてること」の意味をそっと考えてみよう。自分の命が未来につながる尊い一歩だということを実感している人たちも少なくないに違いない。
かれこれ数年前になるが、フランスのシャンソン歌手のシャルル・アズナブールさんをインタビューしたことがある。彼はフランスに住むアルメニア人だが、アルメニアという国もまた地震大国で知られる。人口324万人の小さな国で、1988年に襲った大地震では3万人近い人たちの命が失われた。また1915年には隣国トルコによる民族浄化・大虐殺で150万人の人たちが犠牲になった。そんな重い過去を持つ国だけに「人間の命の尊さ」を国民ひとりひとりが胸に刻んでいるに違いない。そんなアズナブールさんは私にこう言った。「大地震で孤児になった子供たちが国外に連れ去られないようにと国民一人一人が里親になって守りました。子供は国の宝です。」
今度の地震で日本でも震災孤児がこれからたくさん増えていくだろう。そんな子供たちを、私たち日本人は同じ日本人として、そして国の宝として、みんなで守っていこう。私たち一人一人ができること、それはほんの小さなことかもしれない。でもその小さな輪が、やがて大きな絆として日本全国を覆い尽くしてくれることを信じている。
写真 Charles Aznavour 提供