2011.01.21
国じゅうが美術館のようなフランスでは、いわゆる国家遺産的建造物を維持していくことは並大抵のことではない。地震大国の名のもとに古い建造物をどんどん破壊して近代的なビルに建て替える我が国ニッポン、結局はそのほうが安上がりだし景気刺激策にもなるのかもしれない。でも、だからと言って歌舞伎座を壊したり、築地を移転させたり、国会の真後ろに高層ビルを建てたり・・・と、文化も歴史もなんのその。効率化のためなら右も左もおかまいなしにブルドーザーがガンガン音を立てて破壊していく風潮に私はだまっていられない。
しかし、このところフランスでも財政難を理由に国家建造物を「売り」に出している。フランス革命(1789年!) で国王や貴族階級が手放した多くのシャト―や土地・家財道具といったものはいわゆる文化財として今でも国が管理しているという背景がある。それに加えて1905年以降、数多ある教会までもが国の管理下に入った。こうした国家的建造物の経済的価値は金額にして12兆ユーロ、国民一人当たりの国内総生産の7,4年分に相当するという。しかし08年よりその価値は減少気味。しかも建物は維持していくにはお金がかかる。その費用はいったいだれが負担するのか? 当然 国であり、我々国民の税金である。モンサンミッシェルやルーヴル美術館・ヴェルサイユ宮殿など観光客が途切れることなく訪れる採算のとれたモニュメントは全国でも6ヶ所しかないというから、やはり懐事情はどこもお寒いのだろう。
という訳でその負担を少しでも軽減する為に、とりあえず文化省が管轄する建物を売りにだそうと国も躍起になっている。ただ「売る」と言ってもフランスでは土地は国の所有物だから、その上に建っている建造物の権利を30年とか99年といった単位で買うことにしかすぎない。さすがにフランスの法律はがっちりと国民のために守られている。国家モニュメントを一部「賃貸」して民間に管理してもらおう、というのが本当のところだ。 やっと菅政権でも外国人の土地取得規制が検討されはじめたというから、日本人も自国の資産価値の大切さに気づき始めたのだろう。
それにしても田中角栄時代に「日本列島改造論」と称して国民に土地を持つことの大切さ・価値観を教えてくれたのに、どうして、こうも外国人には日本の大切な国土を切り売りしちゃうのだろうか? フランス人と話していると「これは先祖から貰った箪笥」とか言っても、すぐに18世紀~19世紀のものだったりするは当たり前のこと!! そのあたりの時間軸の長さにはホントびっくりさせられるが 、日本でももう少し先祖代々の土地とか歴史観のあるモノを文化的価値のあるものとして大切にする心をはぐくんで欲しいと思う。心の整理とかいって捨てることだけが尊い文化だと私はぜったいに思わない・・・・
写真 毎年800万人の人が訪れるヴェルサイユ宮殿、夕陽に反射して絢爛豪華に輝く「鏡の間」。