2011.01.18
「1月14日は勝利の日だ!」「我々はアラブ諸国で民主主義を勝ち取った最初の国だ」。ラジオから流れてくるチュニジア市民たちの肉声、喜びと喧騒が入り混じったその声には自分たちの国を命がけで守ろうとする熱気が伝わって来る。昨年の12月より国内の混乱はすでにはじまっていた。そのきっかけとなったのは、町中で野菜を売ろうとしたひとりの若者が警察に阻止されたことに抗議して焼身自殺を図った。それが引き金となって全国規模で暴動が広まっていった。
学校を卒業しても就職できない若者たち。そんな失業者たちの行き場のない怒りが沸騰点に達した。そんな混乱を先導し、報道しつづけたのは彼ら自身だった。ツイッターやフェースブックで次々に流される映像やライブ情報。そんなひとりひとりの若者たちのパワーが、強権的政権を崩壊させるだけのパワーに増殖され、24年間続いたベンアリ大統領を追放にまでおいやった。こんなにまでも政権崩壊・革命というものが、あっという間に行われてしまったことに驚きを隠せない。それはまぎれもなく新しいネット時代の到来ともいえる。
モロッコ・アルジェリア・チュニジア、北アフリカのマグレブ諸国の中ではもっともヨーロピアンナイズされた観光国というイメージのチュニジア。もうかれこれ20年ぐらい前に訪れたカルタゴの遺跡やジェルバ島のリゾート地にはたくさんのヨーロッパ人がバカンスに訪れていたのを思い出す。真っ青な地中海を見下ろしながら白亜のしゃれた建物が夏の太陽にキラキラと輝いている。フレンドリーなチュニジアの人たち。そんなイメージを持っていただけにショックを隠すことはできない。しかし、そんな笑顔の下に隠されていた彼らの苦悩、政府に対する不満といったものが爆発して次々と事実が明らかにされていく。このチュニジア革命が中東諸国のこれからを左右していくのは、もう時間の問題だ。まさに歴史の1ページが今また塗り替えられようとしている。
写真 身内優遇政策だったかつてのベンアリ大統領一家の姿 Le Parisien