2011.01.13
何とも形容しがたいケルト文化の根源ともいえる教会に出会った!! その異様なまでの美しさには、まさにこの地方が辿ってきた民族の闘いの歴史が伝わってくる。フランスの北西部、ブルターニュ地方はその三方を大西洋に囲まれた風光明媚な海岸線で知られている。「最果ての地」を意味するフィニステール県は、半島の西側の突端に位置する荒涼とした辺境の地で、そこにはケルト文化が今でも色濃く残っている。
ケルト文化とは紀元前6世紀にブルターニュ半島にケルト人が定住したのがはじまりで、その後、ローマ人の支配でガロ・ローマと呼ばれる期間が500年あまり続いた。フランスというよりも、むしろアイルランドやウェ―ルズ・スコットランドの影響を受けた独特の文化圏で、今でも町の至る所にはブルトン語で書かれた標識が目を引く。
中でもサンテゴネック・ギミリオ・ランポールギミリオという内陸の3つの隣り合わせの町には16-17世紀に建てられた教会が、その複雑怪奇な石の彫刻で圧倒する。『聖堂囲い地』と呼ばれるように教会や納骨堂・チャペルのまわりにはグレーの花崗岩に彫刻されたキリスト受難の群像やキリスト磔刑像が空に向かって高々と聳えている。それを取り囲むようにしてア―チ型の塀が残っているのが特徴だ。
フィニステール県といえばもうひとつ、ケルト民族古来のポップ・フォークアーチストのセシル・コルベルの故郷としても知られている。彼女はスタジオ・ジブリが制作した最新作、『仮暮らしのアリエッティ』の主題歌をハープの音色とともに歌っている。そんな彼女の透き通った歌声を聴きながらケルト文化に浸ってみる。何とも言えない贅沢である。
写真 ギミリオの教会とサンテゴネックの十字架に張りつけられたキリストの受難群像