2010.12.28
12月の、とある暖かい一日、大阪から車で小一時間ほど走ったところに成安造形大学というアート系大学が主催する「棚田・里山・湖辺の郷 淡海の夢2010 風景展」という展覧会を観に行った。広大なキャンパスからは琵琶湖が一望のもとに見渡せる、まさに絶景だ!! この大学に行くには琵琶湖の西岸に連なる比叡山から比良山地を抜けるハイウェーを北上するのだが、そのあたりの景色が以前、訪れたことのあるスイスのローザンヌからモントルーに続くラヴォーと呼ばれるユネスコの世界遺産にも登録されたワイナリーにちょっと似ている。レマン湖に面した小高い丘に連なるぶどう畑、その斜面が比良山地の傾斜感と一致して琵琶湖とレマン湖というふたつの巨大な湖に流れる景色が一致する。自然の成せる技とはすごいものだ。
実は琵琶湖を訪れたのは、これが2回目。今年の8月、猛暑の真っただ中に湖北にある菅浦という町を訪ねたことがある。その”小津安二郎的”世界観の美しさに、しばし言葉を失ったのを思い出すが、しかし今回もまたその自然の豊かさには圧倒された。この辺りは”近江学”に代表される近江の文化・歴史・自然を保存しておこうというムーブメントが盛んだそうだ。この成安造形大学のなかにも「近江学研究所」というものがあり”芸術による社会への貢献” という趣旨に基づいて、ひろくこの地を愛する人たちをたばねて近江の未来を活性化していこうという活発な研究をしている。今回、私がたずねた展覧会でも、そんな近江の昔ながらの景観や人々の日常を描いた絵や写真が、そこに生活する人たちのストレートな視線で活き活きと描かれている。こんな地域を愛する人たちがひとつになって、その土地のことを語る。そんなパワーや誇りといったものが、また新しい人と人のつながりを生んでくれる、まさにパワースポットのような気がした。
( 写真 成安造形大学のキャンパス内に置かれた御影石で創られた無数の椅子、そこから琵琶湖が眺められる )