2010.10.17
パリの味覚週間もたけなわの、とある午後、パリ郊外のポンディ―市にある『アルベール・カミュ小学校』の味覚授業に参加させてもらった。CM2と呼ばれるクラスは日本でいえば小5にあたる。この地域は移民が多く、ご覧の通りクラスも99%が移民の子供たちだ。味覚授業を担当するのはパスカル・ルロー先生で、彼女は「Siplarc」と呼ばれる給食センターの管理栄養士だ。
フランスでも日本と同様に市町村合併の動きはあちこちで行われており、このボンディー市も隣接するノワジー・ル・セック市と合併してひとつになった。Siplarcでは2001年より、そのふたつの市の学校や病院、老人ホーム、高齢者向け宅配などを手掛ける給食センターで、パスカルさんは学校の味覚教育に特に力を入れている。前回のブログでもお伝えしたように、”おばあちゃんのレシピ”を再現してマルシェで一般の人たちに味見をしてもらったり、『味覚週間』の最中には学校給食にもそのレシピを取り入れるなど、ひとりでも多くの移民の子供たちにもフランスの味を知ってもらおうと試みている。
味覚授業では子供たちが目隠しをして口に食べ物を運んでいる。パンに塗ったロックフォールチーズやレモン水、チョコレート、ポテトチップスなど塩辛い・苦い・酸っぱい・甘いを食べ比べている。そのたびに子供たちは眉に八の字を寄せたり、驚いてみたり、面白がったり・・・もう教室の中はワーワー、キャーキャーと大騒ぎ。それでもパスカルさんは持ち前の明るさと優しさで、生徒たちひとりひとりに語りかけるように味覚の違いを教えてあげる。そのたびに子供たちは思いっきりの笑顔で答えている。そのやり取りが何ともほほえましい。
最後には全員に味覚授業を終了した証しにディプロムを手渡している。このぐらいの年齢の子供たちは本当に素直だ。先生の言うことにひとつひとつ大きくうなずきながら、まるで吸い取り紙が水を吸い込むようにすべてを吸収している。まさに味覚教育が子供たちひとりひとりに食べることの楽しさや食べ物の大切さを教えてくれるまたとない機会だということが納得できた一日だった。
写真 ボンディ―市にある小学校の授業風景。クラスの子供たちの笑顔、ひとりひとりが真剣に食べ物の味を口の中で確かめている。